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第156回:本好きの心を掴む最高の成長物語(近江泉見:『深夜0時の司書見習い』)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、近江泉見さんのライト文芸作品『深夜0時の司書見習い』(メディアワークス文庫)です。

「本に夢中で眠れない!」この帯のキャッチコピーで既に心を掴まれた1冊。どこか懐かしい香りが漂う児童文学のような世界観に惹かれる人も多いのではないのでしょうか?私も今作の世界にはずっといたくなりました。
本を夢中になって読んだ経験が一度でもある人には絶対印象深い作品になると思います!

あらすじ

珠玉の”書物”たちが彩るビブリオファンタジー!
 高校生の美原アンが夏休みにホームステイすることになったのは、札幌の郊外に佇む私立図書館、通称「図書屋敷」。不愛想な館主・セージに告げられたルールを破り、アンは真夜中の図書館に迷い込んでしまう。そこは荒廃した裏の世界——”物語の幻影”が彷徨する「図書迷宮」だった!迷宮の司書を務めることになったアンは「図書館の本を多くの人に読ませ、迷宮を復興する」よう命じられて‥‥‥!?
 美しい自然に囲まれた古屋敷で、自信のない少女の”物語”が色づき始める。

カバーより

感想

作品独自の世界を想像することや主人公が困難に立ち向かう姿を見ることが好きで、小中学生の頃はファンタジー小説をよく読んでいました。
今作は「想像力」が物語のカギとなっていたり、読書の楽しさを描いていると同時に主人公・アンの成長の物語でもあったりと私の好きなファンタジーの要素が満載で、あの頃の純粋な読書体験が蘇る1冊でした。

★★★

図書屋敷で生活するには3つのルールがあります。
・ネットに繋がるものを図書館に持ち込まない
・部屋の鍵は常にかけ、夜は部屋から一歩も出てはいけない
・猫の言うことに耳を貸してはいけない

アンはそのうちの意味深な3つ目を破ってしまったことで、「図書迷宮」という不思議な世界に誘われます。
図書迷宮には古今東西の本はもちろん、人々の「想像力」から生まれた著者や物語の登場人物たち、そしてもみじくんという小説家の少年といった本好きにはたまらない空間が広がっていました。

人の言葉を話す猫・ワガハイによって司書に任命されたものの、読書の良さがいまいちわからなかったアンですが、もみじくんとおすすめの本の話をしたことをきっかけに少しずつ読書の面白さを知っていきます。

今作には昔から読み継がれる作品がたくさん登場します。もみじくんは、物語から昔の人の考えを学べるところが本のいいところだと語っていました。またさゆりさんという女性とは、『クローディアの秘密』をきっかけに読書友達になりました。

「名作」と呼ばれる作品はいつの時代も心に響く要素があるからこそ読み継がれていくのだろうし、何よりも年齢関係なくコミュニケーションツールとなってしまう本ってやっぱりすごい!名作もいっぱい読んでみたい!と興奮が止まらなかったです!

またアンは自分に自信がなく、すぐにネガティブなことを考えてしまう癖がありました。そのため嫌な予感は的中し、失敗という結果で終わってしまう…なんてこともよくありました。

ワガハイによるとアンが何をやっても失敗で終わってしまうのは、ネガティブな「想像」をすることによって「自分の失敗を期待している」からだからそう。この言葉には私もハッと気付かされたものがありました。

物語の佳境にて、ルールのひとつ「ネットに繋がるものを図書館に持ち込まない」がアンに更なる試練を与えます。

インターネットって気になることをすぐに調べられる便利さがある一方、心ない言葉も飛び交う痛々しい面もあります。図書迷宮に現れたインターネットの姿は、まさに「怪物」そのものでした。

ポジティブな想像を駆使して、今のアンが乗り越えなければならない壁を乗り越えていく。想像力でインターネットという怪物と戦うアンの姿こそが、今作における彼女の最大の成長だったと思います。

私もこれまでアンと同じく、自分の失敗を期待してしまうような考えをしてしまうことがよくありました。だけど今作のアンの成長を見て、何事でもポジティブな気持ちで行動することが大切だと改めて感じました。

読書の楽しみ方への共感・発見があるだけでなく、困難に立ち向かうために必要なヒントも得られるずっと大切にしたい物語になりました。

アンの札幌での生活はまだまだ序盤ではないのでしょうか。これからどんな本をモチーフにした物語が描かれるのかはもちろん、アンの更なる成長も私はめちゃくちゃ見てみたいです。

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