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第23回:鎌倉に行きたすぎて、『茶寮かみくらの偽花嫁』を読んでみた

おはようございます!あみのです。まだまだ遠出するのが厳しい世の中ですね。今、私が行きたいところのひとつとして鎌倉が挙がっています。せめて読書で鎌倉に行った気分を味わいたい!と思い、あさばみゆきさんのライト文芸作品『茶寮かみくらの偽花嫁』(角川文庫)を読んでみました。

今作は鎌倉に行きたいと思っている人はもちろん、年の差恋愛系の作品が好きな人やいろんな形の人付き合いに関心がある人にもぜひおすすめしたい内容です。

あらすじ(カバーからの引用)

いくら食べてもおなかがすいて、直ぐに倒れてしまう18歳の大島小鳥。原因不明のまま、病欠つづきでついに高校を留年してしまった。行き倒れていたところ、美貌の料理人・坂頼兼に助けられ「僕と結婚しませんか」と提案され―――?形ばかりの奇妙な同居生活、居心地が良くなるにつれ膨らむのは「彼はなぜ私を助けたか」という疑念。もしかして私のこと、"生贄"にしようとしてる?舞台は鎌倉、怪異が彩る年の差契約結婚譚。

感想

夜ノ人——というのは、なにか理由があって現世にあらわれている、人間や動物の魂、荒ぶる鬼神、堕ちた神、さまざまの怪異の根源となる怪しきモノの総称です。そうした夜ノ人のために包丁をふるい、彼らに食を捧げることで、その魂を満たして慰める料理人。それがすなわち――<御饌人>。僕の本業です

主人公の小鳥は「夜ノ人」が原因で、これまで体調不良に悩んできました。御饌人(みけにん)である頼兼は、小鳥を夜ノ人の苦しみから救うことを目的に彼女と結婚することを選びます。

頼兼と結婚するまで夜ノ人に今まで狙われ続けていたことを知らなかった小鳥は、なぜ頼兼が自分と結婚することを選んだのかしばらく疑問を持ちながら彼との日々を過ごしていました。

頼兼との生活の中で小鳥は、人々が自分と同じく夜ノ人の猛威に苦しむ場面に何度か遭遇します。そして、頼兼は夜ノ人に苦しんでいる人々を解放するために、美味しい料理をふるまいながらそれぞれが抱えている悩みと向き合っていきます。私はその中でも菜摘さんという女性のエピソードが印象に残りました。

菜摘さんには恋人がいますが、最近は結婚の話を勝手に進めてしまう彼に違和感を持っていました。

苦手なものを無理する必要はないですよ。思ったことは口にしていいんです。一緒にいると決めた相手なら、なおさらに

上記の頼兼の言葉からは、食べ物の好き嫌いも人生の重要な選択も、周りにいる信頼できる人やこれからの人生を共にするであろう人にきちんと伝えることの大切さを感じます。実際、菜摘さん自身も頼兼の助言をもとに恋人との関係を変えることに成功しました。思ったことをはっきり伝えることは、自分自身の生きやすさにも直結していることを知った場面でした。

また、今作から強く感じたのが「年が離れていても友情は成立する」ことです。今回、小鳥が出会った人々は性別や生き方は全く違いながらも、それぞれに合わせた彼女との絆を深めていました。中でも小学生の勇魚くんと小鳥の間に生まれた友情は、その象徴的なエピソードだと私は思います。

勇魚くんは家庭の事情で日本で暮らすことになり、これからの生活を不安に思っていました。そこで小鳥&頼兼と知り合い、小鳥くらいの年齢になれば勇魚くんも自由に行動がしやすくなること、とりあえず自由がききにくい今はまず、日本の環境に馴染む必要があることを2人から学びます。特に頼兼の世界各地での神様の受け入れ方になぞらえた説明がとてもわかりやすかったです。

2人から今を生きるために必要なことを学んだ勇魚くんは、これからも年は離れていながらも小鳥とは強い絆で結ばれ、彼女から大切なことを沢山学んでいくのだと思います。年の離れた友情って、将来に必要なことを相手の経験なども踏まえた上で知れるのがメリットのひとつだと私は思います。

「鎌倉に行きたい」という気持ちで何気なく読んでみた作品。鎌倉の魅力や美味しそうな食べ物がいっぱい詰まった1冊なのはもちろん、「思っていることをはっきり伝えること」の大切さや、「年の離れた友情」の素晴らしさを発見できた良作でもありました。

また、偽りだった関係が「本物の愛」に変わっていく契約結婚ものならではの過程を見られたのも、読んでいて楽しい要素でした。

今回も記事を読んで頂き、ありがとうございます。自由に遠出が厳しい世の中でも、本を読めば行きたい場所に行った気分が味わえるってめちゃくちゃ素敵なことですね!

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