第151回:この物語は本物の「大人」を教えてくれる。(野水はた:『働く私と彼女の同棲』)
こんにちは、あみのです!
今回の本は、野水はたさんのライト文芸作品『働く私と彼女の同棲』(富士見L文庫)です。
この本はカバーイラストが好きだったのと、社会人と女子高生の同居がどのように描かれるのか気になって読んでみました。
あらすじ
感想
社会人になってからも夢を追い続けることはカッコ悪いこと?そもそも本当の「大人」ってどんな人をさすのだろう?
この物語には今の私が欲しかった答えとたくさん出会えました。
好きなことを仕事にしている人なんて少ない、と私もよく言われます。
今作の主人公の茉莉は花屋で働いていますが、労働環境はまあまあ良いものの、花が特別好きでもないのに花屋で働く自分にいまいち納得していないところもありました。
茉莉がなぜ花屋での仕事に納得していないのかというと、彼女はもともと絵を描くことが好きでしたが、自分の絵に自信が持てなくなり、夢から逃げた過去があったからです。
私も絵を描くことは好きですが、最近は茉莉と似た理由で描くことが少なくなってしまったので、時間を消極的に費やす茉莉の姿はなんだか自分と似ているな、と思いました。
茉莉は気に入っていないかもだけど、母や澄玲は彼女の作品を「好き」だと言ってくれる。茉莉の才能が職場のPOP作りで役に立つ。
これらの経験によって「誰かを救う絵を描きたい」という新たな夢ができた茉莉に勇気をもらいました。私も以前のように好きな絵を好きなようにまた描いてみたいなと思いました。
大人とは『自分以外の誰かのために生きる人』のこと。
同僚の言葉と澄玲との日常から茉莉が気付いた「大人」の正体に私は感銘を受けました。中でも物語の佳境で描かれた澄玲との逃亡のシーンは、茉莉を本当の「大人」にした出来事だったと思います。
ちょっとの力でも誰かを支えられる人に私もなりたいとも今作を読んで強く思いました。
また今作は茉莉の成長の物語なだけでなく、澄玲と茉莉の恋物語でもありました。いわゆる「百合」のジャンルにもカテゴライズできる作品だと思います。2人の家族を超えた「好き」の描き方からタイトルにて「同居」ではなく、「同棲」という言葉が選ばれていたのも凄くうなずけます。
澄玲の茉莉に対する「憧れ」の気持ちが次第に恋愛感情と同等の気持ちへと変化していく。茉莉との「同棲」の中で生まれた澄玲の小さな恋も魅力的な物語でした。高校生からすれば20代前半も充分「大人の女性」に見えますよね。
ライト文芸レーベルの作品としては異色な内容ながらも、好きなこととの向き合い方や「理想の大人」になるために大切なことをたくさん教えてくれた超良作でした。これからも大変なことがあった時に読み返したい1冊になりました。
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