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第162回:こんな旅の形もいいよね(いぬじゅん:北上症候群)

こんにちは、あみのです。
今回の本は、いぬじゅんさんのライト文芸作品『北上症候群』(実業之日本社文庫)です。タイトル見覚えがあるなと思っていましたが、いぬじゅんさんが過去に発表した作品の新装版とのこと。(内容も今に合わせて書き換えているみたいでした)

今作は先日の熱海の移動中に読みました。深夜特急での旅を描いた物語でしたが、電車の中で読んでいたのでより作中のシーンをリアルに感じるように笑。旅行のお供にもおすすめですが、もちろん自宅で旅行気分を味わいながら楽しむのも良いかと。旅の新たな楽しさを発見できる1冊です!

あらすじ

会いたい人は北にいる―― 愛と優しさに満ちた感涙作!
「嘘、でしょう?」神戸に住む琴葉がある朝出社すると会社は倒産。札幌にいる遠距離恋愛中の恋人・海斗に電話し不安をぶつけるが、彼の反応はなぜか歯切れが悪い。見え隠れする元カノの影。悩んだ琴葉は、衝動的に深夜特急に乗り、彼に会いに行くが‥‥‥。車中、訳アリな面々との出会いが彼女の心を変えていく。心揺さぶる結末が待つハートウォーミングストーリー!

カバーより

感想

どこかへ旅することは大好きだけど、現地にいる時間を多くしたいから移動手段はできるだけ早く到着するものを利用することが多いです。
でも今作を読むと、琴葉が乗った「ドリーム号」のようにあえて時間をかけて目的地に向かう旅も面白そうだなと思いました。

作中にて琴葉は同年代の健太をはじめ、主婦の博子や中学生の心春こはる、孝雄さんというおじいさんと、ドリーム号の車内で幅広い世代の人に出会います。
出会った人と楽しく会話をしたり、悩みと向き合ったりする様子はなんだか学生時代の修学旅行を見ているようで楽しそうでした。

今作は琴葉のひとつの「恋の終わり」を描いた物語だったので、海斗と別れることを選択したシーンにはちょっと寂しい気持ちになりました。
でもこれからの琴葉には、健太をはじめとするこの旅で出会った仲間たちがいつでも味方となってくれる。思い切ってドリーム号での旅に出なければ素敵な仲間たちに出会うことはありませんでした。

自分を変えたいのであれば、なにか新しい行動を起こしてみることも大切であるとこの物語は教えてくれました。現実から逃げることや素直な気持ちを口にすることって難しいとは思いますが、琴葉たちはそれらをこの旅で実行して自分を変えることに成功しました。読むといろんなことに積極的に取り組む意欲が高まる1冊でした。

不思議な要素を含んだ成長の物語が多いいぬじゅんさんの作品ですが、今作はロードノベルとしての要素が強く、これまでの作品とは違った印象を持ちました。登場人物たちの世代も様々だったので、幅広い読者の心をつかみそうな作品だなとも思いました。

切ない別れもあり、嬉しい出会いもあり。ドリーム号で過ごした時間は、琴葉の一生分の宝物ですね。

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