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第55回:「期限付きの恋」から学ぶ「強く生きる」ということ

こんにちは、あみのです。今回の本は、森田碧さんの『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(ポプラ文庫ピュアフル)です。タイトルからもわかるように、今作は「難病もの」の青春&恋愛小説です。

ありきたりな物語に見えるかもしれませんが、複数の登場人物を通して描かれる「命のきらめき」に思わず心が震えてしまうような良作です。

作中の様々な演出も素敵なので、1本の映画を見ているような感覚で読んで頂きたい作品です!

あらすじ(カバーからの引用)

高一の冬、早坂秋人は心臓病を患い、余命宣告を受ける。絶望の中、秋人は通院先に入院している春奈と出会う。彼女もまた、重い病気で残りわずかの命だった。秋人は自分の病気を隠して春奈と話すようになり、死ぬのが怖くないと言う姿に興味を持つ。自分はまだ恋をしてもいいのだろうか?自問しながら過ぎる日々に変化が訪れ――。儚い美しさと優しさに涙が止まらない、究極の純愛ストーリー。

感想

今作は秋人目線の本編と、サブヒロインである三浦さんという女子生徒目線の後日談で構成されています。

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余命宣告を受けて以来、世の中を否定的に見るようになり、恋愛に対しても消極的だった秋人。秋人にはもともと絵里という気になる女子がいましたが、「近々死ぬ自分に恋なんて似合わない」と思ったことから、彼女への気持ちを諦めてしまいます。

しかし、趣味の絵をきっかけに秋人は、春奈という同じく難病を抱える少女と仲良くなります。彼女と仲良くなっていく中で、秋人の心には「恋」という感情が再び生まれていきます。秋人は春奈との関係を「期限付きの恋」と名付けることにしました。

ガーベラの花を抱え、頻繁に春奈がいる病院へ通うようになる秋人。春奈と出会う以前の秋人は、「ただ死ぬ日を待つ」だけのつまらない日々を送っていました。

だけど、春奈との交流を深めていくうちに秋人は、1日1日を大切に生きていきたいと願うようになり、彼の日常に輝きを取り戻していきます。

輝きを取り戻した先で待ち受ける宿命、春奈が今を生きる人たちに託した思い。この手の小説では、難病で亡くなった登場人物が主人公に向けて手紙を書くシーンがよくあります。

今作にもそういったシーンがあるのですが、春奈は「手紙」以外の手段を使って大好きな人たちへの思いを伝えていました。秋人が偶然発見したサプライズ感あふれる春奈からのメッセージ、この演出は多くの人に感動してほしいポイントです。

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私が今作で注目したのが、三浦さんというキャラクターです。秋人の変化には春奈だけでなく、彼女の親友である三浦さんの存在も大きく影響していたと私は思います。

三浦さんは、自分の親友が亡くなったときにきっと後悔するのではないのか。そう察した秋人は、手段は強引ではありながらも、なんとか2人を会わせるために奮闘します。

秋人の積極的なアプローチによって、春奈と再会することになった三浦さん。「春奈の死」が現実に近づいていることを感じるようになった三浦さんは、春奈との時間を少しずつ取り戻していきます。

もし、秋人と出会わなければ、三浦さんは親友に対する後悔をずっと背負ったまま生きていたのかもしれません。三浦さんの存在からは、何気なく友達と過ごす時間だって充分「貴重な時間」であることをよく感じます。

また、後日談にあたる三浦さん目線のエピソードも、非常に味わい深いものがありました。後日談を読むと、この物語の本当の主人公は三浦さんだったのではないかとも思えなくもなかったです。

春奈が過ごしたかった時間を秋人へ、2人が過ごしたかった時間を三浦さんへ。「強く生きる」というバトンが登場人物たちの間で受け継がれていくような物語でした。私も彼らのように強く生きなければと思いました。

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新刊だったときから気になっていた1冊。シンプルなストーリーながらも、「強く生きる」ことや身近な人間関係の大切さを学ぶことができる、「読んで良かった」物語になりました。

シンプルだからこそ、作品に込められたメッセージが深く心に刺さる。そのようなことを証明していたかのような作品でした。

最後に、今回も私の感想を読んで頂きありがとうございました!

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