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第159回:可愛い子にも「悩み」はある(飴月:『隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない』)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、飴月さんのライトノベル作品『隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない』(ファンタジア文庫)です。

今作は「アイドル」という題材に惹かれただけでなく、以前読んで好きだった『君のせいで今日も死ねない。』の作家さんの新作でもあったので、引き続き手にしてみました。

今作はヒロインたちが抱える「悩み」や「エゴ」が印象的に描かれており、誰かと自分を比べてしまいがちな人にはより刺さる内容かもしれません。
また「アイドル」という設定も多くの人を惹きつけるんじゃないかなと思います。それではまずはあらすじを。

あらすじ

 転入してきた元アイドル・香澄ミルは普通じゃない。
「初めまして。あなたの瞳を独占中♡ みるふぃーですっ」
「いつもありがとう! サインは制服でいいかな?」
 抜群のスタイルに、宝石みたいな瞳。何より日常生活とかけ離れたこの圧倒的なアザトさが”異様”だ。——と思ってたら。
「あれ、いまのファンサで真っ赤にならない人、初めてかも」
「ねえ君、私を”普通”の女の子にしてくれないかな」
 そして始まるプロデュース。週末の娯楽探しや、文化祭。香澄に普通の高校生活を教えるにつれ「そこそこ」だった俺の日常も変わっていき‥‥‥これは俺と彼女の、青春と再出発の物語。

カバーより

感想

アイドルグループの圧倒的なセンターとして活躍していたミル。しかしある事件に巻き込まれたことによって、ミルのアイドル人生が揺らぎ始めます。アイドルとしての生き方がわからなくなったミルですが、同じグループのメンバー・冬華のアドバイスによって彼女は芸能界からの引退を選びます。

引退して「普通の女の子」になったはずなのに、今でもアイドル時代の「みるふぃー」が抜けないミルは、「普通」とは何なのか深く考えるようになります。そこで出会ったのが、冬華の幼なじみである蓮でした。

蓮と出会った頃のミルは、まだ「みるふぃー」の要素が残っていて、本当の「香澄ミル」という人間が見えていない印象を受けました。普段の学校生活も蓮とのテーマパークデート?も楽しそうなふりをしているだけじゃないの?と疑問に感じたところもありました。

しかし蓮との時間を重ねていく中で、ミルは大事なことに気付きます。それは「普通の女の子」ではなく「私」に本当はなりたかったことでした。
彼と出会って恋をして、ミルはアイドル時代の自分に頼らない生き方がしたいと思うようになりました。

物語の終盤では、少しずつですが本物の「香澄ミル」がどんな人間なのかがわかったような気がします。例えば自宅でゲームをするシーンでは、これまでの彼女のイメージがガラッと変わるプレイぶりに蓮も驚いていました。ミルにはまだまだ本人が気付いていない「彼女らしさ」が隠れていそうですね。

***

どんなに可愛い子でも「悩み」はあるし、人によっては誰かに知られたらドン引きされるような「闇」だってある。
このような人々の「黒い感情」に注目していたところも親近感があっていいなと思いました。その中でも私は冬華が印象に残りました。

蓮やミルの視点では「お姉さん」のような存在として描かれていた冬華ですが、実は「お姉さん」を演じている自分が辛いと心の声を漏らすシーンがありました。

昔から誰よりも蓮が大好きだから「お姉さん」のふりをしてしまう。センターとして活躍するミルが本当は妬ましくて、彼女に引退を勧めるアドバイスをしてしまった。

そんな冬華の心の声からは、彼女もひとりの人間であることを実感します。誰にも言えない黒い感情を抱える「アイドル」の姿には共感してしまう人も多いのではないでしょうか。

私もミルや冬華のような可愛くてキラキラした人が羨ましいと思うことがあります。でも彼女たちが本当は何を考えているのかは本人にしかわからない。もしかすると私以上に重い悩みがあるのかもしれない。そう考えてみると誰にでも悩みはあって当然だし、人と自分を比べるのはやめたいなと何よりも思いました。

今回はミルがメインのエピソードにはなっていましたが、ヒロインが複数人登場していたので、今後冬華や琴乃(アイドル好きの蓮のクラスメイト)にフォーカスしたエピソードがあっても面白そうですね。

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