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どんな道を辿っていても、希望は取り戻せる(松村涼哉:『暗闇の非行少年たち』)

松村涼哉さんの最新作『暗闇の非行少年たち』(メディアワークス文庫)を読みました。

今作では過去に罪を犯した少年少女が仮想共有空間メタバース「ネバーランド」での交流やネバーランドに隠された謎を通して、再生していく様子が描かれました。

少年院を出てからも街で堕落した日々を過ごすハノをはじめ、今作に登場した少年少女たちの罪には許しがたいものもありましたが、一方で今でもそれぞれの罪を責め続ける彼女たちに何か希望があってほしい、と読んでいてひたすら願っていました。

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今作を読んで私が強く感じたのは、どんな過去を背負っていても、努力次第で人は必ず乗り越えられるということです。

(ハノたちとは状況はまったく異なりますが)私には、支援学級・通信制の学校で過ごしてきた中高生時代の自分にコンプレックスを抱き、少し前まで将来に希望が持てませんでした。

今となっては自分が辿ってきた道に何も思ってはいないけど(むしろ誇りに感じている)、就活などで中高生時代の話題をつっこまれたのも多いことから、過去が今後の生活にも影響してしまうのでは…とこれからの自分に不安を感じていた時期がありました。

そういった経験から今作を読んでいて、ハノたちが抱える生きづらさや将来への不安は、かつての私の姿のようだと感じたところがありました。

また物語の後半では、「ネバーランド」という仮想空間を作った「ティンカーベル」という人物のことも深く描かれていきます。

罪を犯した少年少女たちに安全で楽しい居場所を与えたい。かつて自分が犯した罪と重ね合わせながら、人生が狂ってしまった子供たちを救いたいと願うティンカーベルの熱意には心打たれました。そして、ティンカーベルの思いはハノたちにも受け継がれていきます。

ネバーランドで似た傷を抱える仲間に出会い、それぞれの生きづらさを乗り越えていく。物語のラストで描かれていたネバーランドの仲間たちのその後からは、過去にとらわれないで将来に希望を持って生きることの素晴らしさを感じられました。

設定としても明るい物語ではないので、途中読むのが苦痛になってしまう人もいるかもしれません。でも読了した時には、わずかでも希望が感じられる物語であるのは確かだと思います。

悪いことをしたのは事実であっても、これからの努力次第で充分乗り越えることはできる。私も過去ではなく、将来どんな自分になりたいかをよく考えることを大切にして、毎日を頑張っていきたいです!

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松村涼哉さんの既刊はこれまでにも何冊かnoteで紹介しているので、過去の読書感想文も合わせて読んでみてください!noteでは紹介していないメディアワークス文庫の既刊も良作多いです。

【前作:犯人は僕だけが知っている】

時には「逃げる」という選択をとることの大切さを教えてくれる青春ストーリーです。

【前前作:監獄に生きる君たちへ】

こちらもテーマ重ためですが、謎解き要素も強いのでミステリー好きの人にもおすすめです。

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