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第64回:「親友」と過ごした日々は、一生分の宝物

こんにちは、あみのです。とても心に刺さる青春小説に出会えたので紹介します!

今回の本は、櫻井千姫さんのライト文芸作品『16歳の遺書』(実業之日本社文庫GROW)です。「難病もの」ではありながらも「友情」に重点を置いたあらすじに珍しさを感じたことと、凄まじさを感じるカバーイラストに惹かれて今作を読みました。

今作は、「恋愛」よりも「友情」の要素が強い物語や、他人への「憧れ」が感じられる物語が好きな人に凄くおすすめです。もちろん、心が揺さぶられる、感動的な物語を求めている人にもぜひ手にしてほしい1冊です。

あらすじ(カバーより)

あなたの分まで生きるから!痛いほど切ない、最期の日々。
SNSで自殺願望を綴っていた城野絆は、秘密の投稿を同じクラスの徳川郁に見られてしまう。だが、郁からも重大な秘密を告げられる。「あたしの寿命、あと半年なんだ」。絆は余命短い郁の「死ぬまでにやりたいこと」に協力するが、そこには驚愕の真実が…。孤独な《死にたがり》少女と、《生きたい》美少女の友情の日々を描く号泣必至のストーリー!

感想

ストーリーとしてはシンプルながらも、少女同士の「友情」から生きる理由を見つけるとても美しい物語でした。同性への「憧れ」を感じる物語、めっちゃ好き。

主人公の絆は、SNSへのネガティブな書き込みやリストカットをすることで、自分なりの生き甲斐を作っていました。彼女を取り巻く家庭環境や過去のいじめの話題があまりにも痛々しくて、序盤は目を背けたくなる場面も多かったです。

一方でクラスの人気者の郁は、「難病で近いうちに死ぬ」という深刻な秘密を抱えています。絆は、自分とは住む世界が違う郁のことを嫌っていましたが、お互いの「秘密」を知ったことによって、絆の中にあった「生きる」ことへの価値観を大きく変えていきます。

郁の「死ぬまでにやりたいこと」リストを通して、彼女との仲を深めていく絆。知らなかった世界を知りながら、生きる理由だけでなく素敵な仲間も得ていく絆の成長に、心がぐっと掴まれる良作でした。

とにかく「出会った人とのつながり」をとても大切にする郁の性格には、「憧れ」しかないです。1日1日を前向きに生き、絆がピンチの時はどんな手段でも助ける。「親友」への愛が詰まった、郁の行動のひとつひとつに絆が惹かれていく気持ち、凄くわかります。

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作中にて、絆が郁に過去のいじめの話をするシーンがありました。話を聞いた郁は、絆をいじめた同級生に「復讐」することを提案します。

早速同級生の自宅に出向いて、復讐を実行しようとした絆ですが、そこで彼女はあることに気が付きます。それは「復讐に成功したって、自分は何も変わらない」ということです。ここに気付けた絆は、同級生への復讐を諦めることを決意しました。

郁も褒めていましたが、現在の同級生と会って過去を振り払えた絆の考え方の変化は、かなり大きな成長だったと思います。物語の前半だけでもここまでの成長を見せていたので、物語の終わりにはどのように変わっているのか、絆の更なる成長に期待しながらその先を読み進めました。

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郁と仲良くなるにつれて、絆自身にも「仲間」と呼べる存在が郁以外にも増えていきます。郁の幼なじみで、後に気になる異性にもなる和義くん、郁と同様、これまで避けていた乃慧(のえ)とその友人たち。

和義くんは、郁が話さないような秘密を知っている一面もあり、絆にとっては良き相談相手だったと思います。友情の悩みと真摯に向き合う彼の姿勢が、絆の恋心に火をつけたのではないでしょうか。

また、絆に対する感情が「嫉妬」から「最高の友人」へと変わっていく乃慧の気持ちの変化も印象的でした。私も乃慧のような人がクラスにいたら、絆と同じく避けてしまうと思います。

絆も乃慧もお互いのことを嫌っていましたが、郁の死が近づくにつれて2人の関係にも変化が起きます。これからも生きていく友達には、自分が生きれなかった分も一生懸命に生きてほしい。郁の強い願いがつないだ絆と乃慧の友情。和義くんとの関係と同様に長く続いてほしいですね。

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「友情」や「恋愛」といった青春のすべてが詰まった、心に残る1冊。痛々しさを経て、生きる理由を見つけていく絆の成長と郁との友情の記録は、何度も読み返したいです。私にとっての「宝物」のような物語がまたひとつ増えました。

最後に、今回も私の感想を読んで頂きありがとうございます。この感想文で、今作への魅力や関心を少しでも感じたらより嬉しいです。

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