知識だけでは解けない「クイズ」に挑む物語(小川哲:『君のクイズ』)
今回の本は、小川哲さんの『君のクイズ』という作品です。クイズをテーマにした作品とのことで、「天才」と呼ばれている人々の思考に興味があったので読んでみました。
読むといろいろな知識が身につくのはもちろん、ちょっとしたミステリー要素も入っていて非常に濃い内容の物語だと思います。クイズ番組の裏側を見ているような感覚で楽しめる1冊です。
あらすじ
感想
クイズ番組『Q-1グランプリ』での本庄の優勝と、物議を醸した「ゼロ文字押し」には何か裏があったのか?
「本庄絆」という難問と向き合っていく中で三島が辿り着いたある「既視感」に気付いたとき、ピースが多いジグソーパズルが完成に近づいていくような快感がありました。
今作は何より、三島と本庄という2人のクイズの天才の脳内をのぞけたのが非常に興味深かったです。2人の思考からは、知識や記憶力だけでなく、周囲の人の真理をよく見ることもクイズ番組で勝つカギになることを感じられました。
また三島の回想シーンでは、知人との何気ない会話やふとした好奇心が彼の知識につながっていたというエピソードが多く描かれていました。知識というものは本やインターネットだけでは満たせないことを実感します。
個人的には『アンナ・カレーニナ』という作品名を覚えたときの三島のエピソードが印象的でした。
作品名から「カレー」を連想し、更にはインド人などの登場人物から彼なりの物語を作っていく。なんだかテスト勉強みたいで笑ってしまいました。私も物の名前とか覚えるときに似た言葉から連想して覚えることがあるので、三島のこのテクニックには親近感もありました。
「クイズ」と向き合う姿勢はそれぞれ異なるけど、作中の「クイズは人生」という言葉は三島にも本庄にも言えることではないかと思います。
2人にとって大きな分岐点となった『Q-1グランプリ』での一部始終。番組内での対決だけでなく、クイズに対する価値観でも本庄に負けてしまった三島ですが、彼のこれまでの努力やクイズを本気で楽しもうとする気持ちは誰にも負けていなかったと私は思います。
自分の「好き」とどう付き合っていくかは、人によって異なるものだとは思いますが、三島にはクイズを愛する気持ちはいつまでも忘れないでいてほしいですね。
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