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第70回:「誰かを好きになる」感覚って何だろう?

こんにちは、あみのです。テーマがテーマなので、今回はこちらの企画に参加してみたいと思います!

(コンテスト名だけでも充分に惹かれますね)

そんな今回の本ですが、noteでの感想は3冊目となりますいぬじゅんさんのライト文芸作品『この恋は、とどかない』(集英社オレンジ文庫)です。これまで読んだいぬじゅんさんの作品でも特に「恋愛」の要素が強めな作品でした。

「人はどうして誰かを好きになるのか」という疑問を抱える2人の高校生が、「ウソ恋人」を通じてその理由を探っていく物語。自分の「好きな人(好きだった人)」を好きになったきっかけを振り返りながら読みたい、甘酸っぱい青春小説です。

あらすじ(カバーより)

ウソから始まった恋。だけど――!?
恋なんてしない、と思っていた高二の陽菜。同じく恋に興味がないというクラスメイトの和馬から頼まれ、「ウソ恋人」になる。次第に陽菜は和馬に惹かれていくが…。その矢先、高校の廃校が決まってしまう。しかも、和馬の親友・蓮司の事故をきっかけに、和馬のある秘密を知ることになり…!?衝撃の展開にせつなさが募る!恋の痛みを描いた青春ストーリー。

感想

「恋愛感情」って、ある時に突然気付くものだと思います。友人の杏をはじめ、周りが恋愛の話題で盛り上がる中、主人公の陽菜は恋愛に対して消極的な毎日を過ごしていました。

恋愛に無関心な陽菜はある日、クラスメイトの和馬も自分と似た価値観を持った人物であることを知ります。そして、似た者同士な2人は期限付きで偽りの恋愛関係を結ぶことになります。

なんとなく始めた関係だったけど、廃校が迫る高校での日常やハンバーガー店でのバイト、遊園地デートなどを共に過ごすうちに、和馬と一緒にいることに対する「居心地の良さ」を感じるようになります。この「居心地の良さ」こそが陽菜が初めて知った「恋する気持ち」でした。

***

今作を読みながら、私が過去に好きになった人について振り返ってみました。例えば高校1年生のときに出会った、2つ年上の先輩。初めて見たときに大人っぽさで惹かれて、話してみるとかっこいいだけでなく面白い人でもあることを知って。彼の知らない姿を知るうちに、「楽しい気持ち」や「居心地の良さ」を感じるようになりました。

些細な「興味」が関わっていくうちに、「一緒にいて楽しい」「居心地が良い」相手だと感じる。この感情が強くなっていくことが「恋」なんじゃないかと私は思います。

陽菜の場合も「恋愛には興味ない」と言いながらも、価値観が近いことから和馬への「興味」というものは少なくともあったのではないでしょうか。ちょっとした「興味」が次第にこれまでに感じたことのない「好意」に変わった過程は、私の過去の経験と重なるところもありました。(ちなみに私は片想いで終わりましたが笑)

それにしても和馬はなぜ陽菜と「ウソ恋人」になることを選んだのか?この疑問は今作の最大の謎として描かれます。メインは甘い初恋の物語ですが、ミステリーが好きな人は和馬の気持ちを推理しながら読んでみるのも面白いかと思います。

また、作中で印象に残ったのが物語の至る所に登場する天竜浜名湖鉄道の駅の風景です。別作品でも登場した寸座駅をはじめ、作中にはたくさんの魅力的な駅が登場しました。駅と併設されているお店、ノスタルジックな風景と駅ごとの個性も感じられ、いつか聖地巡礼がしてみたくなりました。

世の中には「この恋は、とどかない」ことだってある。誰かに自分の恋愛を話すのを躊躇ってしまうこともある。でも、人は「誰を好きになっても良い」ということは確かだと思います。恋愛感情は無理に作るものではなく、自然に生まれていく感情だと思うし。今作は、全ての「恋する人」の気持ちを後押しするような、素敵な恋愛小説でした!

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今回の感想を読んで頂き、ありがとうございます!これまでに読んだような「生きること」の素晴らしさを描いた物語やサスペンスタッチのいぬじゅんさんの作品も好きですが、今作のような恋愛をメインにした作品も新しくて面白かったです。今後どのようなテーマの物語を描いていくのか、ますます楽しみな作家さんです。

(ともきちさん&yuriさん、魅力的な企画をありがとうございました!)

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