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ユーモラスな神様と「なりたい自分」を目指す!(青山美智子:『ただいま神様当番』)

先日読んだ青山美智子さんの『お探しものは図書室まで』という作品が凄く面白かったので、2冊目に『ただいま神様当番』という作品を読んでみました!

幸せな自分になりたいと願う咲良。
わんぱくな弟に手を焼いている千帆。
「リア充」に憧れる直樹。
日本語の奥深さに苦戦するリチャード。
社員が思い通りに動かないことに頭を抱える福永社長。

坂下バス停に毎朝並ぶ年齢も性別も異なる5人。今作ではその5人が「神様」と名乗る謎の老人によって、「神様当番」に任命されてしまったことを機に、それぞれのなりたい自分を目指していく様子が描かれていきました。

神様との共同生活によって、彼らが心の奥底に隠していた本当の気持ちが明るみとなっていき、じわじわと理想を現実に近づけていきます。普段の考え方をちょっとでも変えてみることが、なりたい自分・理想の生活に近づくカギであると感じた物語でした。

私は今作の中でも特に、咲良のエピソードに感銘を受けました。作中で咲良が知り合った葵は、仕事中にちょっとした「面白い」を見つけていくことをとても大切にしていました。

辛い時こそ「楽しさ」を自分で見つける。それは私もとても大切にしている考えなので、葵には非常に共感しました。葵がいつも怒っている社長に「ぷんぷくちゃん」とこっそりニックネームをつけていたところには笑ってしまいました。

ちなみに葵が苦手だと思っている社長は最終話の主人公でもあり、一見関係なさそうに見える登場人物同士の意外なつながりが見えてくるのも連作短編ならではの面白さだと思います。社長がなぜ怒りっぽい性格になったのかが最終話で明らかとなり、誰にも悩みとか理想の人間像があることを実感します。

また、世の中は誰かのおとしものでできているという箇所が読んでいて凄く印象に残りました。

私は昔から「真似する」という行為にとてもネガティブな考えを抱いてしまいます。だけど、理想としている人が落とした行動を「真似」することで、初めて身につくこともたくさんある。そしてなりたい自分にグッと近づく。ただ自分の考えだけで理想を叶えようとせず、誰かをお手本にしながら学びにすることも大切にしたいと思いました。

あと、神様のキャラクターがとにかく面白いかつ癒されます。はじめはコントのような登場の仕方だな~と面白かったですが、読んでいくにつれて自分のおじいちゃんのような温かさに可愛く思えてきました笑。この神様の物語が私はもっと読んでみたいです。

様々な世代の人物が登場するので作中で扱うネタが幅広く、小学生から大人まで楽しめる1冊だと思いました。青山美智子さんの作品、これからもいろいろ読んでいきます!

*『お探しものは図書室まで』の感想はこちら

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