見出し画像

第164回:幸せな「魔法」にかかる物語(喜友名トト:『どうか、彼女が死にますように』)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、喜友名きゆなトトさんのライト文芸作品『どうか、彼女が死にますように』(メディアワークス文庫)です。

この作品はKADOKAWAの文庫レーベルの夏のキャンペーン、「カドブン夏フェア」のラインナップからの1冊です。
「なんでこのタイトル?」と前から気になっていた作品だったので、このキャンペーンを機に読んでみました。

王道な純愛ストーリーに見えて、実はファンタジーでもある今作。温かな感動を味わいたい人にすごくおすすめです。

あらすじ

彼女の想いを叶えるために、僕は彼女の死を願う。
 とある事情により、本心を隠して周囲の人気者を演じていた大学生の夏希。
 その彼に容赦ない言葉を投げたのは、常に無表情で笑顔を見せない少女、更紗だった。
 夏希は更紗に興味を持ち、なんとか笑わせようとする中、次第に彼女に惹かれていく。
 だが、彼女が”笑えない”ことには理由があった――
「私、笑ったら死ぬの」
 明かされる残酷な真実の前に、夏希が出した答えとは?
 想像を超える結末は、読む人すべての胸を熱くする。

カバーより

感想

主人公の夏希は「魔法使い」。魔法使いたちは、いつの時代も人々を幸せにするために魔法を使うことを大切にしています。
彼はいつも無表情な更紗を魔法を使って笑わせようとしますが、更紗が笑うことは同時に彼女を「殺してしまう」ことでもありました。

魔法使いの使命とは真逆ともいえる更紗の秘密に夏希は絶望します。究極の選択に揺れる夏希ですが、一方の更紗は命を犠牲にしても「幸せな気持ち」がどんなものか知りたいと願っていたことから、夏希は「魔法を使って更紗を笑顔にする」という答えを選びます。

不吉なタイトルではありますが、読み進めていくと「死にますように」には「更紗が幸せになりますように」といった夏希の願いが隠れていたように感じることができました。読む前と読んだ後でタイトルへの印象がかなり変わる作品でした。美しいカバーイラストも読後に見るとクライマックスの感動が蘇りますね。

更紗がいなくなった後も夏希は彼女との思い出を胸に、「魔法」でたくさんの人を笑顔に、幸せにしていくのだと思いました。

また夏希のような魔法は使えなくても、「誰かの幸せを願って行動すること」は誰にでもできることだと今作を読んで感じました。私も夏希のように誰かの幸せを大切にして行動できる人になりたいと思いました。

更紗だけでなく、読んだ人も夏希の「幸せな魔法」にかかる物語。「魔法使い」「魔法」といった要素が他の恋愛小説にはない良さを引き出していて、予想以上に好きになった1冊でした。

今作と同じ世界観の作品がメディアワークス文庫にあるそうなので、今度そちらの方も読んでみたいと思います。

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

#恋愛小説が好き

5,003件

いつも記事など読んで頂きありがとうございます。日々励みとなっています。もっと面白いネタを収穫したいので、良かったらサポートもお願いします(^^)