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失恋することも、人生では大切な経験(『わたしを変えた恋』*アンソロジー)

スターツ出版文庫の『わたしを変えた恋』というアンソロジーを読みました。

このアンソロジーでは、恋愛によって何かが変わった人々の物語が描かれていました。

これまでにもスターツ出版文庫のアンソロジーは何冊か読みましたが、どちらかというと学生向けのメッセージの作品が多い印象がありました。

でも今回のアンソロジーは王道な青春物語だけでなく、かつて学生だった人にも刺さりそうな物語もいくつかありました。

その中で印象的だったのが、此見えこさんの『なにもいらない』という作品です。この物語では、学校の先生に恋をした中学生の女の子の日常と恋の終わりを描いていました。

三上先生とは付き合えないはずなのに、彼の1番になりたくてたまらない。日々積もっていく主人公の複雑な気持ちは、私の以前の片想いと重なって見えたところもありました。

私には前のバイト先で、ずっと一緒にいたいくらい好きになった年上の人がいました。あくまでも「仕事仲間」だから、歳が離れているからといった理由でその人にはフラれてしまいましたが、失恋してからもしばらく好きだった。そんな苦い気持ちを思い出した作品でした。

主人公も三上先生が既婚者である事実をはじめは受け入れられなかったですが、先生の自宅が火事になり、彼の家族を助けた経験が主人公の恋愛観を大きく変えていきました。

胸がキュッと切なくなる結末ではありましたが、三上先生への片想いは主人公の心を強くしたことは確かではないでしょうか。

最近の此見さんの作品はどちらかというと王道路線な物語が長編も短編も多かったので、今回のような少し攻めたスターツにはなかなかない感じの作品が読めるとやっぱり嬉しいですね。

***

今回のアンソロジーを読んで感じたのは、失恋も人生で大切な経験には必ずなるということです。失恋した瞬間はショックが大きいですが、時間をかけて失恋と向き合うことで、新たな自分の姿に気付けるかもしれないと感じた結末の物語が多かったです。

世代関係なく「失恋」を経験した人ならきっと共感できる、そして失恋という感情を登場人物たちと一緒に乗り越えられる素敵なアンソロジーでした!

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