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「悩み」はひとりでは乗り越えられない(佐原ひかり:『人間みたいに生きている』)

今回の本は、佐原ひかりさんの『人間みたいに生きている』という作品です。この作品、なかなかの衝撃作です。

あらすじに「吸血鬼」という言葉があったので、ファンタジーっぽい話かと思っていましたが、実際は生きづらさを描いた青春小説でした。

今作は「食べる」という日常的な行為を嫌う女子高生の成長を描いた物語です。自分にはわからない感覚を知れるのも物語ならではの魅力かと。
生きづらさに溢れた今の世の中だからこそ、心にぐっと刺さる1冊です!

あらすじ

食べることそのものに嫌悪を覚えている女子高生・三橋唯。「食べること」と「人のつながり」はあまりに分かちがたく、孤独に自分を否定するしかなかった唯が初めて居場所を見つけたのは、食べ物の匂いがしない「吸血鬼の館」だった──。

出版社サイトより

感想

死んだ生き物を加工して、口にいれるという行為が気持ち悪い。そのような理由から、主人公の唯は「食べる」という行為を拒んでおり、普段の食事をおいしく食べることができない自分に深く悩んでいました。

唯が「食べる」ということを嫌うのは、痩せたいからとか好き嫌いがあるからではない。だけど、他人が彼女の事情を理解するのはとても難しい。正直私も唯が普段の食事に対してどんな思いでいるのか、実感がわきにくいところがありました。

唯の悩みは非常に難しいものではありますが、泉さんという彼女と似た悩みを抱える人物と出会い、親しくなったことによって、唯は少しずつ「食べる」ことに対する意識を変えていこうと決意します。

食べることへの意識を変えるために唯は、様々な行動を起こしていきます。家族や知人に事情を話す、似た悩みの人の集まりに参加してみるなどして自分の弱さを乗り越えようと努力する唯の姿がとても印象に残りました。彼女の行動力、私も尊敬したいです。

中でも唯の家族は偏見が激しい性格で、はじめは彼女の事情をあまり理解してくれませんでした。だけど何度も話し合っていくうちに、少しずつ唯の気持ちがつかめてきて、最終的には彼女の悩みを一緒に乗り越えようと考えてくれました。唯の悩みが解決するまでまだまだ時間はかかりそうですが、身近な人が協力してくれると心強くなれますね。

理解が難しい悩みや偏見が多いこの世界。周りの声に流されないで自分の意思で突き進むことはもちろん、人と人が協力し合って様々な悩みを理解していくことも大事であることを感じられた物語でした。

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