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ホラー怪談小説

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記事一覧

白い大蛇【ホラー怪談小説】

 毎年冬の夕暮れになると思い出すことがあります。ある忌まわしい予言を伴って。

 この話は私の小年時代にまで遡ります。 当時小学5年生だった私は弟と一緒に母に連れられて、占い師のもとまで行ったことがあります。

 それは私の暮らしていた街から少し離れた埼玉県草加市の占い師で、そうしてその占い師はよく当たるという評判でした。母はその頃、占いに凝っていましたので、それを知って行く気になったのだと思いま

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氷のホテル【ホラー怪談小説】

 どうも、伊集院です。これは20年ぐらい前のことなんですが、今でもはっきり覚えています。デブ仲間の内山君、まいうーの石塚さん、それから数人のスタッフというメンバーで香川県へ行きました。讃岐うどんの美味しいお店が高松市内にあるというので、僕らはそれの取材に行ったのです。 そして、当日、8月、猛暑、現地のホテルを予約して取材の仕事を無事に済ました僕らが、ホテルに到着したのは、夜の7時頃だったんですけど

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パーティーに現れる亡霊【ホラー怪談小説】

 1995年8月13日のことである。
 茨城県水戸市に森山勝二という53歳の男が住んでいた。地元で運送業を営んでいた。毎年夏になると彼は、知人を家に招いて自宅の庭でパーティーを催すのを恒例としていた。その日も会社の従業員や親戚や友人たちを庭に招いて夕方からパーティーを楽しんでいた。
 肉を焼いたり酒を飲んだり歌ったり踊ったり陽気なパーティーは夜遅くまで延々と続いた。
 午前0時近く、パーティーもそ

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生首【ホラー怪談小説】

 山奥に暮らす気弱な男が、下町の親類のもとまで行って、そこで酒を振る舞われて、ほろ酔い機嫌になって帰ってきた。
 寒い春の晩のことである。
 その若い男は独り者で、親類に自身の縁談を依頼していたので、その用事もあって、下町の親類の家へ寄ったのだが、そこから出た頃には夜もかなり更けていた。
 男は、ふらふらした足取りで街中を歩いた。そして時たま、すれ違う恋仲らしい男女を振り返ってみたりした。その都度

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古井戸【ホラー怪談小説】

 この前、友人の武田君から電話がかかってきて、
「なんだか、幽霊が出るんだけど、ちょっと来てくれないか」
と言うから、私は行くことにした。私は生まれてから一度も幽霊を見たことがない。 またその存在も信じていないことはないのだが、どうにもこうにも半信半疑。だから幽霊がいるんだったら実際に見てみたいと思った。
 武田くんの家は私の家から1キロぐらい離れたところにある。庭が広くてなかなか立派な家である。

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首なしライダー【ホラー怪談小説】

 私ってさ、暴走族やってるからさ、よく単車に乗るんだ。私は女なんだけど、ビシッと黒い特攻服を着てさ、改造した原チャリに跨がってさ、爆音を轟かせて走っているんだ。風を切って颯爽と走るのは、めちゃくちゃ気持ちいいんだよ。こちとら暴走族じゃ!舐めんじゃね!で、たいてい 走る場所は決まっているのだけれども、それは地元の町はずれの峠道なんだけど、実はそこに魔のカーブと言われている危険なカーブがあってその辺り

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足音【ホラー怪談小説】

  タレントの伊集院は、最近腹の肉が気になってきたのでダイエットを決意した。彼の家から3km先に公園がある。そこまで ランニングをすることに決めた。走るのは夜。昼間だと人目が気になる。ある晩、 いつものように走ってると背後から足音がする。コツ、コツ、コツ。人気のない夜道である。立ち止まって振り向いても誰もいない。足音ももう聞こえない。伊集院は気のせいだったのか、とそんな風に考えまた走り出すと足音。

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夏合宿【ホラー怪談小説】

 ラグビー部の夏合宿で体験した怪談話です。それは私が初めて参加した合宿でした。 その頃、中学1年生だった私たちは、ボールに触る機会もなく、もっぱら基礎体力作りに汗を流し、朝夕、校庭を走り回るだけの日々でした。しかし、いつか必ず選手になって試合に出て活躍してやるぞ、という強い思いを胸に秘め、毎日毎日、辛い練習に耐えていました。
 そして1ヶ月があっという間に過ぎ、やがて夏休みに入り、いよいよ夏合宿が

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夜道【ホラー怪談小説】

 やだわー、もう。参っちゃった。こんな夜遅くじゃ、誰も歩いていないし、どうしょうかしら。うーん、困ったなあ。どうしようかなあ…。あ!あそこの道端に、お巡りさんが居るじゃない。ちょうどいいわ。あのお巡りさんに尋ねてみよう。
「ねえ、ねえ。お巡りさん」
「はい。何でしょう」
「わたし、聞きたいことがあるの」
「どうそ。遠慮なく、おっしゃって下さい。市民の皆様を助けるのが、私の役目です」
「そう。じゃあ

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道案内

 秋田県に暮らす親戚の祖母から聞いた お話です。
 僕の祖母が近くの神社にお参りに行ったその帰りのあぜ道で、夕方頃だったんですけど、老人男性に道を尋ねられました。 その時、祖母はこの人はお化けだな、と直感したそうです。祖母の田舎の街並みというのは都会のように道が入り組んで、ごちゃごちゃしてなく見通しの良い簡素な作りなのに、それなのに、道を尋ねられた。 それがおかしいと思ったそうです。けれども、祖母

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霊柩車

 昨日の夕方、道を歩いていたら、向こうから車が走って来た。霊柩車だ。僕は端に寄って、車が通り過ぎるのを待った。夕日を浴びて真っ赤に染まった霊柩車は、音も無く静かに近づいて来て、僕の横を通り過ぎた。僕は再び歩き出そうとしたが、ふと、妙な視線を感じて振り返った。すると、霊柩車の後ろの扉が少しだけ開いていて、その隙間から、顔半分が焼け爛れた男の人が白く濁った眼で、僕をじっと見つめていた。

魔女

「バスには絶対に乗るな。惨劇が起こるぞ」
この女の予言を聞いた時、人々は密かに苦笑した。
 1999年9月9日、長野県の高速道路で、修学旅行の子どもたちを乗せた大型バスが横転し、20人以上の死者を出す大事故が起こった。
 この事故が起こったその日の朝、修学旅行の出発に色めき立つ小学校の校庭を、魔女のような黒装束に身を包んだ一人の女が、
「バスには絶対に乗るな。惨劇が起こるぞ」
と叫びながら、駆け抜

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光の玉

 これは、私の小学校の頃の話である。その夏の日、塾に行くために、夕方のたんぼ道をひとり自転車で走っていると、青白い光の玉が、ふわりふわりと目の前を飛んでいた。私は、たしょう、不思議に思ったが、その光の玉の動きが、何だか面白かったので、その後を追いかけた。すると、その光は、一瞬、焦ったように、ボット赤い火柱をたてるやいなや、慌てて逃げ出した。私は、いよいよ、面白くなり、せっせとペダルを踏んでその光を

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一生そばにおります

 2丁目の吉田さんちのご夫婦はとても仲の良い老夫婦でした。おじいさんは愛想のいい人で、道で会うと決まって、こんにちは、今日はいい天気ですね、とニコニコ挨拶してくれましたよ。でももう長いこと 患ったまま寝たきりだと聞いております。おばあさんの方はと言いますと、これまた なかなか勝ち気な性格で暮らしを支えるために朝から晩までパートやら内職やらで稼いで、夫婦二人分の糊口を凌いできたと言います。けれども、

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