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最近の記事

野火止塚

 在原業平といえばプレイボーイの浮名が高かった平安時代の歌人であるが、その業平が政争に敗れて、関東に下っていた時、今の新座市一帯を支配するある長者の娘と恋に落ちました。  誘惑したのは言うまでもなく業平でした。  長者はひどく怒って、そんな落ちぶれた貴族なんかには、娘はやれぬと2人の仲を認めようとはしませんでした。  そこで2人は広大な武蔵野の林の中に眠る小塚を、密会の場所に定めて密かに会っていました。  臨済宗の禅道場として知られる平林寺 境内に残る野火止塚は、その密会の時

    • 知恩院

       知恩院と申しますと全国に7000余りの末寺を持つ浄土宗の総本山でおなじみです。  山門は日本一の規模を誇り、境内に入ると、 これまた途方もない大きさの本堂が周りを圧倒するようにそびえ立っておりますが、 実はこの本堂には面白い言い伝えがございます。  この本堂の右端の軒下で足を止め、顔を上に向けますと、軒のたるきの間に、 ほとんど骨だけになり果てた古ぼけた唐傘がちょこんと差し込まれているのが見えます。  これが俗にいう、知恩院の忘れ傘です。  これは言い伝えによれば、本堂の建

      • 道案内

         秋田県に暮らす親戚の祖母から聞いた お話です。  僕の祖母が近くの神社にお参りに行ったその帰りのあぜ道で、夕方頃だったんですけど、老人男性に道を尋ねられました。 その時、祖母はこの人はお化けだな、と直感したそうです。祖母の田舎の街並みというのは都会のように道が入り組んで、ごちゃごちゃしてなく見通しの良い簡素な作りなのに、それなのに、道を尋ねられた。 それがおかしいと思ったそうです。けれども、祖母は老人らしい親切心から、道案内をしてやろうと考えました。そして、しばらくの間、先

        • 霊柩車

           昨日の夕方、道を歩いていたら、向こうから車が走って来た。霊柩車だ。僕は端に寄って、車が通り過ぎるのを待った。夕日を浴びて真っ赤に染まった霊柩車は、音も無く静かに近づいて来て、僕の横を通り過ぎた。僕は再び歩き出そうとしたが、ふと、妙な視線を感じて振り返った。すると、霊柩車の後ろの扉が少しだけ開いていて、その隙間から、顔半分が焼け爛れた男の人が白く濁った眼で、僕をじっと見つめていた。

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          魔女

          「バスには絶対に乗るな。惨劇が起こるぞ」 この女の予言を聞いた時、人々は密かに苦笑した。  1999年9月9日、長野県の高速道路で、修学旅行の子どもたちを乗せた大型バスが横転し、20人以上の死者を出す大事故が起こった。  この事故が起こったその日の朝、修学旅行の出発に色めき立つ小学校の校庭を、魔女のような黒装束に身を包んだ一人の女が、 「バスには絶対に乗るな。惨劇が起こるぞ」 と叫びながら、駆け抜けた。校庭にうごめく人たちが、その女の言葉を聞き、姿も見ていた。黒装束の女は、誰

          光の玉

           これは、私の小学校の頃の話である。その夏の日、塾に行くために、夕方のたんぼ道をひとり自転車で走っていると、青白い光の玉が、ふわりふわりと目の前を飛んでいた。私は、たしょう、不思議に思ったが、その光の玉の動きが、何だか面白かったので、その後を追いかけた。すると、その光は、一瞬、焦ったように、ボット赤い火柱をたてるやいなや、慌てて逃げ出した。私は、いよいよ、面白くなり、せっせとペダルを踏んでその光を追いかけた。光の玉も、負けじと、赤い光の糸をひきながら、一目散に逃げて行く。そし

          一生そばにおります

           2丁目の吉田さんちのご夫婦はとても仲の良い老夫婦でした。おじいさんは愛想のいい人で、道で会うと決まって、こんにちは、今日はいい天気ですね、とニコニコ挨拶してくれましたよ。でももう長いこと 患ったまま寝たきりだと聞いております。おばあさんの方はと言いますと、これまた なかなか勝ち気な性格で暮らしを支えるために朝から晩までパートやら内職やらで稼いで、夫婦二人分の糊口を凌いできたと言います。けれども、最近じゃ、そのおばあさんも、すっかり弱って買い物以外、滅多に外出しようとしません

          一生そばにおります

          手形

           手形にまつわる怪奇体験をよく耳にします。 私の話もそんな体験の一つです。  その日残業をやっていたので仕事から帰ってきたのは夜の11時頃でした。家に着くと私はくたくたに疲れていたので、何もしないで電気を消してそのまま寝てしまいました。すると、すぐに目が覚めてしまいました。 誰かに手首をギュッと掴まれたような感触がしたのです。  驚き、目を開けて手首を見ると、別に誰にも握られていませんでした。気のせいかなと思いながらまた眠り始めるとまた同じところを掴まれました。けれども今度も

          人形

           小学2年生の時、賀曽利貝塚 というところへ 遠足に行きました。そこで気味の悪い夫婦を目撃しました。僕らが貝塚を見学するため道を歩いているとその老夫婦が前から歩いてきたのです。  2人とも70歳ぐらいの老人で、おじいさんは、懐に赤ん坊を抱いていました。そして その隣のおばあさんはその赤ん坊に話しかけていました。  僕はその老夫婦とすれ違う時、ふと赤ん坊の顔を見ました。  すると、それは赤ん坊ではありませんでした。 赤い着物を着た日本人形だったのです。 おかっぱ頭で、色が青白く

          本当に知りませんか?

           ある夏の蒸し暑い日、純一という既婚の男が100万円の大金を用意して浮気相手のアパートに行き、別れ話を切り出しまし た。 ところが、女はきかず話がこじれ、しまいには二人で心中しようということ になりました。  そして、その日の夜中、2人は身投げしようと近くの橋に行きましたが、しかし、 流れのはやい川を眼下にして、女は急に怖じ気づいてしまい、純一の背中をポンと押して川に突き落として、そうして自分だけ帰ってしまいました。  それから2週間経った雨の夕暮れ、警官が1人、女のアパート

          本当に知りませんか?

          国会議事堂

           国会議事堂は、本来、9階建ての建物なのですが、現在は5階から上は登ることが出来ません。  昔、と言っても、終戦直後、 8階のホールが、事務員のダンスの練習場に使用されていて、夜になると蓄音器のいい音色に合わせて事務員たちがダンスに興じる光景が見られました。しかし、ある日を境に、このダンスホールの出入りは禁止されました。その理由は8階の窓から女の人の飛び降り自殺があり、その動機がダンスの練習で知り合った男に振られたからだといいます。  この日以来、8階のホールから女のすすり泣

          国会議事堂

          雨月橋

           信濃川上流にかかる雨月橋は幽霊が出る 橋として有名になりました。  ある晩、着物を着た女性が20m下を流れる信濃川に身を投げるのが目撃されました。 目撃者は慌てて川を覗き込みましたが、水音もなく女の姿もありませんでした。また若い男性がやはり川へ飛び込むのを見たという目撃情報もあります。  橋の記録を調べたところ、過去において、この川に身投げした女性、または川で溺れ死んだ大学生がいて、これらは目撃された情報に符合することが確認されました。 その他にも、この橋では多くの幽霊が目

          日本人形

           大阪の商人にAというケチな男がいて、そのAが、知り合いから赤い着物を着た古い日本人形を譲り受けた。その知り合いが言うには、これは、ある有名な人形職人が作った人形だから、質屋へ行けば、きっと高値で買ってくれるはず、との事。ケチなAは大喜び、早速その人形を持って質屋へ行った。人形は、古いにも関わらず保存状態もよく凝った作りだったから、質屋の主人は大変気に入り、10万で買った。  そして、ある日、金に困ったAが腕時計を売るつもりで、再び例の質屋に行き、店に入った。すると、 「この

          殺人ドライブ

           夜更けの市街地を駆け抜ける1台の車があった。車内では若い男女が会話を交わしていた。 男は健一、助手席に座るのはその彼女、優子。 「 ねえ、ねえ、これから、どこへ行くの?」 そう尋ねられ健一は、ハンドルを握りながらしばらく考えてから言った。 「じゃあ、山に行こうか?」 優子はつまらなそうに眉をひそめた。 「 やだあ、山なんかより海に行こうよ」 「 分かった、分かった。じゃあ海へ行こう」 と、渋々承知した。そして、 「佐島臨海公園でいいよな?」 と聞いた。優子は大きく頷いた。

          殺人ドライブ

          山頂にて

           登山にやってきた一人の青年が、 山頂の崖っぷちに立って、 向こうの山々に向かって、 「ヤッホー」 と、無邪気に叫べば、山びこが答えて言うには、 「落ちろ」

          探し物

           ある日、散歩してたら、道端に女の子がひとり、しゃがんでいた。女の子は何かを探しているらしく、 「どこにあるのかなあ」 と、うつむいたまま、しきりにつぶやいていた。  その様子を気の毒に思った僕は、近づいて行き、女の子に、声を掛けてみた。 「どうしたの?何か落としたの?」 「無くしちゃったの」 と、女の子は、じっと下を向きながら答えた。何を無くしたのか、分からないが、とても悲しそうな声だった。僕は手伝ってあげようと思った。 「僕も一緒に探してあげようか?」 すると、女の子は、