探し物

 ある日、散歩してたら、道端に女の子がひとり、しゃがんでいた。女の子は何かを探しているらしく、
「どこにあるのかなあ」
と、うつむいたまま、しきりにつぶやいていた。
 その様子を気の毒に思った僕は、近づいて行き、女の子に、声を掛けてみた。
「どうしたの?何か落としたの?」
「無くしちゃったの」
と、女の子は、じっと下を向きながら答えた。何を無くしたのか、分からないが、とても悲しそうな声だった。僕は手伝ってあげようと思った。
「僕も一緒に探してあげようか?」
すると、女の子は、
「本当?」
と、言って、ゆっくり、頭をあげた。その瞬間、僕は、目をみはった。驚いたことに、女の子の顔は無かった。目も鼻も口も何も無く、全くの空洞だったのだ。
 後で、うちの母から聞いたことだが、昔、この辺で、交通事故があって、幼い女の子が死んだそうだ。
しかも、トラックのタイヤにひかれた女の子の顔は、ぐちゃぐちゃに潰れていたそうだ。
 その日以来、僕は、一度もあの道を通る事は無かった。


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