天津佳之

歴史小説の書き手。第12回日経小説大賞受賞。『利生の人 尊氏と正成』(日経BP/日本経…

天津佳之

歴史小説の書き手。第12回日経小説大賞受賞。『利生の人 尊氏と正成』(日経BP/日本経済新聞出版本部)『和らぎの国 小説・推古天皇』(日経BP/日本経済新聞出版本部)。最新刊『あるじなしとて』(PHP研究所) 。

最近の記事

島原取材紀行~半島を南から西へ~

島原城築城400年記念小説『海道の城 ~松倉重政伝~』の製作過程をご紹介しております、こちらのnoteも3回目となりました。 写真もできるだけ載せて、風光明媚な島原の風景や地元飯の紹介もしてきましたが、やっぱり体験するのが一番ということで。 現地を訪れるきっかけになれば幸いです。 さて、一泊二日の島原取材旅行につきまして。 前回は島原城の周辺を散策しつつ、作品の方向性を固める過程をご紹介しました。 二日目は島原市を出て、南島原を中心に周辺地域を巡る旅程です。 前日の打ち合わ

    • 島原取材紀行 ~お城周辺~

      さてさて、前回は『海道の城 松倉重政伝』の企画の始まりや方向性について書いたところですが、今回は実際の取材につきまして。 船便で島原に入り、バスで待ち合わせの島原駅へ。 出迎えくれたのは、依頼者である島原観光ビューローの担当・Sさん。おっとりしたところのある好青年という感じの方で、今回の取材に合わせて、いろいろ手配していただきました。 ここに、今回の企画をコーディネートしていただいたヒストリンクの代表さんを加えた3人で故地をまわることに。 とはいえ。 島原に到着したのはお

      • 『海道の城 松倉重政伝』について

        梅も見ごろのこのごろ、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 こちらは長編新作の準備をしつつ、日々の仕事にこなしつつ、花粉に目鼻をやられつつと、早春の日常を過ごしています。 さて。 先日来、島原城公式ホームページならびにnote上で順次公開してきました『海道の城 松倉重政伝』が2月末に完結しました。 少し時間が空きましたが、今回はこちらのお話を。 本作は、お城の管理をはじめ島原市の観光プロモーションなどを手掛ける「島原市観光ビューロー」さんのご依頼で執筆した作品です。2024

        • 2023年もお世話になりました

          SNSはX(Twitter)もnoteも大変ご無沙汰の天津です。 早いもので今年も暮れようとしていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 少し前にnoteから「今年のあなたの活動記録」が届いていたのですが、今年のnote更新回数はわずか2回。これが3回目の投稿となりますから、開店休業もいいところですね。とはいえ、小説家業3年目も、なんやかんやで忙しく立ち回っていましたので、少し振り返りにお付き合いいただければ幸いです。 ●「六条院紫手習始」の連載開始(4月) 以前から

        島原取材紀行~半島を南から西へ~

          『あるじなしとて』(PHP研究所)が第12回日本歴史時代作家協会賞「新人賞」候補にノミネートされました

          気がつけば夏至もすぎて、ところによっては梅雨も明けつつある昨今、いかがお過ごしでしょうか。 拙作『あるじなしとて』(PHP研究所)が世に出てから早一年。いろいろ忙しくしていたら、望外のお知らせが飛び込んできました。 拙作『あるじなしとて』、日本歴史時代作家協会賞「新人賞」候補にノミネートでございます。 正直に言えば、まったく考えてもいなかったのでただびっくりしたというのが最初の感想でしたが、担当編集さんの喜びの声を聞くうちに、じわじわと気持ちが追い付いてきて。 そういうこ

          『あるじなしとて』(PHP研究所)が第12回日本歴史時代作家協会賞「新人賞」候補にノミネートされました

          『菊の剣』完結しました。

          年が明けて早一ヶ月。放っておくとあっという間に時間が過ぎていくのを実感する今日このごろですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。 新しい長編に手を付けてからというもの、そちらに夢中でなかなか他のことに手が回らず、大事なことに触れていなかったので、慌ててテキストを打ちはじめた次第です。 1月発行の「わいわい歴史通信」にて、ショートショート連作『菊の剣』が掲載されました。今号で最終回、題材には個人的に最も好きな刀匠「粟田口藤四郎吉光」を取っています。 昨年4月号から全4回。そ

          『菊の剣』完結しました。

          2022年もありがとうございました。

          今年の振り返り。 早いもので、2022年も残すところ二日。作家デビューしてからの日々は、とにかく早く過ぎてきましたが、年の瀬になると余計に感じるところがありますね。 デビューして二年目の今年は、日経小説大賞受賞第一作の出版に加えて、良縁をいただいてもう一作を世に出すことができました。また、書き物の仕事や講演のご依頼もいただいたりと、個人的には頑張ったんじゃないかなと思っています。 そんなわけで、活動報告がてら、今年一年の仕事を振り返ってみたいと思います。 ●『和らぎの

          2022年もありがとうございました。

          兼業作家の日常

          ご無沙汰しております。 前回の更新からなかなか落ち着くタイミングがなかったのですが、じつに4ヶ月放置はなかなかのズボラっぷり。最初に定期更新はしないと決めていたとはいえ、このままではいかん!と駄文を連ねる次第です。 実際のところ、兼業作家である以上、必然的にダブルワークとなるわけで。私は業界新聞記者をやってますから、デビュー以降は勤務先でもテキストを書き、職場を離れてもテキストを書き、という生活になったんですね。 よく聞かれますが、一日中テキストを書くのは全然苦痛じゃな

          兼業作家の日常

          『利生の人』のこと②

          お盆も迫ってきた時節、だいぶん暑さにも慣れてきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。 前回からデビュー作『利生の人 尊氏と正成』のことを書きはじめましたが、何かやり出すと忙しくなる、というのも人の世の常と言いますか。 少し間が空いてしまいましたが、前回、本作のテーマが「禅」であって、足利尊氏と楠木正成が禅の同門であった、と子どもの時に聞いたことが発想のもとにあった……というところまで話をしました。 今回はその続きです。 建仁寺は、京都五山の第三位を占める禅寺です。開

          『利生の人』のこと②

          『利生の人』のこと①

          何だか今年の夏は早いと思いきや、梅雨が復活するやら。なかなか落ち着かない陽気なうえ、世上もいろいろな出来事で騒がしいままですね。 こういうときこそ平常心、当たり前のことが当たり前にできるようでありたいなと思う日々です。 さて、最新作『あるじなしとて』。ありがたいことに、いくつか書評をいただいており、恐縮するやら嬉しいやら。大変光栄なことで、改めて感謝を申し上げる次第です。 今回はデビュー作『利生の人 尊氏と正成』につきまして。 発売からすでに1年半ほど。ありがたいことに、

          『利生の人』のこと①

          【サンプル公開】『菊の剣』第一回・備前国則宗

          まずは、拙作ご紹介からさせていただければ。 受賞第一作、飛鳥時代初期を舞台に日本の国家としての黎明期を描いた『和らぎの国 小説・推古天皇』(日経BP/日本経済新聞出版本部)。 そして新刊、国政改革を志した政治家・菅原道真を題材とした『あるじなしとて』(PHP研究所)。 それぞれ好評発売中です。 参院選挙の時期ですが、両作品ともに為政者のお話でもありますので、政治とは何か、と考えるきっかけになればなと思ったりもしています。 ご興味いただければ幸いです。 デビューして1年半

          【サンプル公開】『菊の剣』第一回・備前国則宗

          味酒安行と牛。(『あるじなしとて』)

          天満宮に行くと必ず見かける「撫で牛」。 参拝の皆さんに撫でられまくっているおかげで、ぴかぴかでつるつるの子が多いですね。 頭を撫でると天神さんが知恵を授けてくれる、とか。あるいは、身体の悪いところを撫でると不調を治してくれる、とか。 いろんな言われかたをしますが、そもそもなんで"天満宮に牛"なのか。 今回は、そのあたりをお伝えしつつ、拙作『あるじなしとて』のサブ主人公・味酒安行(うまさけのやすゆき)のお話をしたいと思います。 天満宮と牛。 もちろん、そこにはご祭神である

          味酒安行と牛。(『あるじなしとて』)

          平安のお仕事小説。

          天神・菅原道真が“政治家”として目覚め、国政改革に奮闘する新刊『あるじなしとて』(PHP研究所)。一部オンライン書店さんにて電子書籍での配信も始まっています。この機会に、どうぞお手に取っていただければ。 さて、「菅原道真」と言えば学者や詩人としてのイメージが強いかと思います。学者としては文章博士を務め、六国史の類書である『類聚国史』の編纂が良く知られた仕事ですね。 漢詩人としては『菅家文草』の名作の数々、歌詠みとしても「東風吹かば」や「神のまにまに」など、学識はもちろん、言

          平安のお仕事小説。

          神のまにまに。

          "政治家"菅原道真の半生を描いた『あるじなしとて』(PHP研究所)が、いよいよ明日6/10に発売されます。 これまでに語られてこなかった、志高く骨太な政治の人としての菅公さんを描きました。どうぞ、お読みいただければ幸いです。 本作は大もとの着想から12年、第一稿の完成に6年、さらに三度の全面改稿を経て、ようやく皆さんにお届けすることが叶いました。 私自身としても、とても思い入れのある作品です。 学問の神様や悲劇の文人貴族、そして怨霊として語られる道真。その伝承上の姿にはど

          神のまにまに。

          ご縁がつないだ新作出版の経緯。

          さてさて、まずは新刊のご紹介を。 "天神”菅原道真の、知られざる政治家としての姿を描いた『あるじなしとて』。PHP研究所さまより6月10日に発売予定となっております。 現実で参議院選が迫っておりますが、千年の昔、みずからの発心を以て政(まつりごと)に挑んだ男の姿を、ぜひ味わっていただきたいと思います。 さて、本作『あるじなしとて』は、発売までにさまざまな皆さんのご協力をいただきました。 なかでも、はじめのきっかけとなったお話に少しお付き合いください。 『利生の人 尊氏と正

          ご縁がつないだ新作出版の経緯。

          構想から12年。

          早いもので、作家デビューして1年と4ヶ月。 ご縁をいただいて、長編歴史小説として3冊目となる『あるじなしとて』が、PHP研究所さまから刊行されます。6月10日発売予定となってますので、どうぞよろしくお願いいたします。 さて、版元さんのご紹介の通り、本作は"政治家"菅原道真を題材とした作品です。 全国の天満宮のご祭神、"学問の神さま"として知られ、受験シーズンにはお詣りしたことのあるかたも多いのではないでしょうか。 詳しいかたなら、漢詩や和歌の達者な詩人として、彼の漢詩集

          構想から12年。