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島原取材紀行~半島を南から西へ~

島原城築城400年記念小説『海道の城 ~松倉重政伝~』の製作過程をご紹介しております、こちらのnoteも3回目となりました。
写真もできるだけ載せて、風光明媚な島原の風景や地元飯の紹介もしてきましたが、やっぱり体験するのが一番ということで。
現地を訪れるきっかけになれば幸いです。

さて、一泊二日の島原取材旅行につきまして。
前回は島原城の周辺を散策しつつ、作品の方向性を固める過程をご紹介しました。
二日目は島原市を出て、南島原を中心に周辺地域を巡る旅程です。
前日の打ち合わせの際、依頼者の島原観光ビューローのSさんにお伝えしたのは以下の通りです。

・築城400年なので、築城そのものをメインテーマに据えるのはどうか
・大和国からやってきた殿様が土着する過程を描き、そのキーとして城と地域を絡めてストーリーに仕立てる
・入部から城の完成までの時間軸を扱い、築城に意味付けすることで前向きな内容とする

というわけで、巡る場所も重政に地縁のあるところをリクエストさせていただきました。

雲仙岳が作った特徴的な地形を横目にしながら、まず向かったのは「有馬キリシタン遺産記念館」です。
有馬氏のキリスト教受容から島原の乱、そしてその後の隠れキリシタンたちの動向までを一覧できる、充実した施設ですね。

じつは、私が暮らす大阪府茨木市も、かつてはキリシタン大名として名高い高山右近の領地で、隠れキリシタンに所以の有る土地で。
かの有名なフランシスコ・ザビエルの肖像画が見つかった場所でもあります。その意味でも、縁を感じつつ見学しました。

つぎに向かったのは原城址。時間があればじっくりと見たいところでしたが、今回は島原の乱を扱わないこともあり、車内からざっくりと縄張りを見回るに留めました。

代わりに……というわけではないですが、時間を掛けて取材したのは、日野江城址です。
島原の旧主・有馬氏の居城であり、重政が入部当初に使っていた城ですが、彼は結局この城を捨てて、島原に自身の城を建てることになるわけですね。
中世に起源を持つ山城なんですが、実際に天守があった場所まで登ってみると、これが非常に険しい斜面の連続でした。

有馬から原城址、さらにうっすらと天草の島々も

あまり整備されてないことも合わせて、なかなか大変な道行きでしたが、この眺望は素晴らしかったですね。

日野江での取材を終えたら、そろそろ昼のいい時間になってきまして。この日もやはり地元飯が良かろうと、小浜に向かうこととなりました。
途中、重政が築造したと伝わる"諏訪の池"に寄りつつ、島原半島の西岸へ。

“諏訪の池”は現在でも島原半島最大の溜め池

小浜は島原有数の温泉地として知られていますが、重政がいた時代にもそれは変わらず、彼自身もことのほかここの湯を愛したと伝わります。
また、この地が天領であったころから、源泉を管理した町役人まで配されており、本多湯太夫の名を代々世襲しました。
時間があればひとっ風呂……といきたいところでしたが、帰りの船の時間もあり、ここでは源泉と資料館の見学を。

本多湯太夫邸にある源泉

そして、お昼はこちらです。

長崎と言えばちゃんぽん

海花亭さんの小浜ちゃんぽん。
長崎名物と言えばちゃんぽんですが、いまや地域ごとにいろいろバリエーションがあるそうで、小浜の場合は魚介系のだしと太麺が特徴とのこと。
実際、こちらのちゃんぽんも太めの麺とえび出汁の良く効いたコクのあるスープがよく絡み、めちゃめちゃ美味しい。
ちなみに、「本当に多いですよ」とお店の方に警告された大盛りもあり、あまりの量に笑ってしまいましたが、健啖家のSさんはしっかり完食していました。

さて、ひと通り必要と思われる場所はまわったかなというところで、帰りの船の時間が迫ってきました。
半島の西岸にある小浜から港まで、ちょうど雲仙岳を横断する形で運んでいただくことに。
途中、"雲仙地獄"の景色を窓から。硫黄泉が作った黄白い独特の景観と、モダンな宿泊施設が立ち並ぶ光景を横目に、港へと送っていただきました。

天候は相変わらずの快晴。濃い蒼の空が広がるなか、雲仙岳の緑が鮮やかにそびえています。
もちろん、その姿は、これから書こうとしている重政入封時代とはまったくちがいます。いわゆる「島原大変」で、眉山は山体の形からして変わっていますしね。
それでも変わらない土地の力、あるいは地の縁。そういう部分を大切にしつつ、物語を仕立てたいなと思いました。

港から見える雲仙岳を再掲

そんなこんなで書き上げた『海道の城 ~松倉重政伝~』。すでにお読みの方もいらっしゃると思いますが、公開に合わせて、島原観光ビューローさんの編集により、現地の素敵な写真や史料なども掲載いただいています。
築城400年記念企画もつぎつぎと催されていますし、ぜひこの大型連休や夏休みなどに島原を訪れ、島原城や雲仙の自然を堪能していただければ。

そして、松倉重政について、少し考えていただければ幸いです。

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