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『コーヒーが廻り世界史が廻る』臼井隆一郎

こんにちは、天音です。

今回の読書感想は臼井隆一郎さんの『コーヒーが廻り世界史が廻る』(中公新書)です。

●概要(Amazon)
東アフリカ原産の豆を原料とし、イスラームの宗教的観念を背景に誕生したコーヒーは、近東にコーヒーの家を作り出す。ロンドンに渡りコーヒー・ハウスとなって近代市民社会の諸制度を準備し、パリではフランス革命に立ち合い、「自由・平等・博愛」を謳い上げる。その一方、植民地での搾取と人種差別にかかわり、のちにドイツで市民社会の鬼っ子ファシズムを生むに至る。コーヒーという商品の歴史を、現代文明のひとつの寓話として叙述する。

プロフィールにも書いているとおり私は大のコーヒー好き。
朝晩必ず飲みます。
好物がどういう経緯を経て世界を駆け巡ったのかが気になり手に取りました。

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本書は8章の構成で成り立っています。

第一章 スーフィーのコーヒー
第二章 コーヒー文明の発生性格
第三章 コーヒー・ハウスと市民社会
第四章 黒い革命
第五章 ナポレオンと大陸封鎖
第六章 ドイツ東アフリカ植民地
第七章 現代国家とコーヒー
終章  黒い洪水

地域を見ると、イスラム諸国からやがてヨーロッパにわたり、イギリス、フランス、ドイツを軸にして語られます。
時代的には15世紀から20世紀が中心です。

白状します。かなり侮っていました。
というかどんな本かがわかってなかった。
コーヒーの秘密や豆知識が知りたいな!というあほみたいな軽い気持ちで読んだのですが、かなり深く世界史について書かれています。

イギリス市民の近代感覚が萌芽した時期。
フランス革命、ナポレオンによる大陸封鎖。
ドイツのフェイクコーヒー開発。ナチズムの台頭。
ブラジルなどコーヒー・プランテーションの政策。
そして全体を通して読み取れる、植民地、プランテーション、モノカルチャーの危険性、人種差別、経済格差、経済破綻、市民の自由に対する意識。

かなり多岐にわたった視点で総括的に歴史を復習できました。
一度世界史をやっていて、もう少し違った角度から読み解きたいという方には本当におすすめです。

そして本書の魅力は、なんと言っても饒舌な筆者にあるでしょう。

もちろん新書であるために簡単な言葉しか使わないなんてことはないけれど、それでも口が滑ったかのようにペラペラとよく喋ってくれるんです。

ユーモアを交えて語られる深い歴史とその考察。
新書を読んでいるのに、なぜかニヤニヤしながら読んでいました。

結構ガッツリ世界史なので、少し知識がなければしんどいところもあるんですが、書き方が軽快なので勉強としてだけでなく読み物としても楽しめます。

特にプロイセンの大王、フリードリヒ2世の頁は群を抜いて面白かったので、ぜひここだけでも目を通してみてほしいです。

フランス革命や世界大戦あたりはごちゃごちゃしていていつもわからなくなるんですが、かなりわかりやすく構成されていて、新鮮な観点から見直すことができました。

2021年7月末。
東端の国にある家で1人。
本書では日本への言及はほとんどありませんでした。
しかし、コーヒーを片手にこの本を読むというのは、なんとも時代の流動性を感じるものがありますね。
コーヒーは現在も世界を廻っています。

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