『フランケンシュタイン』メアリ・シェリー
こんにちは、天音です。
「五十音順作家巡り」、「し」の作家はメアリー・シェリー。
今回の読書感想は『フランケンシュタイン』(創元推理文庫)です。
真理の探求に取り憑かれた天才科学者、ヴィクター・フランケンシュタインは各器官を寄せ集めて新しい生命を作り出す。しかし、自らが作った醜い怪物に恐れをなしたフランケンシュタインは、その怪物を見放してしまう。
創造主にすら捨てられた怪物は、苦悶の放浪の末に知性を獲得し、自分を苦しめ続ける人間への復讐を決意する。
大体こんな感じの内容です。
ずっと読んでみたかった本でした。
結構有名だと思っていたので、巻末の解説にマイナーと書いてあり驚きました。イギリス文学史の本を確認すると、ロマン派詩人である夫パーシーの記述しかなかったので、本当にマイナーなようです。
映画が有名なので名前は広く知られているけど、原作を読む人は少ないということでしょうかね。
話はウォルトンという、初めのヴィクター同様探究心にあふれる青年の姉に宛てた手紙から始まります。
この本は書簡形式とモノローグで書かれています。
そのため、かなり心情が直接的に描写されていると感じました。
それにしても読めない本でした。
難しくはないし、読み始めたときからすごく面白かったんですけど、なんか先を読み進めることができなくて。
結局読み終わるのに2週間以上かかりました。
正真正銘の大苦戦です。
おそらく告白形式というのもなかなか読めなかった一因だと思います。
怪物が自分が生まれてからどう過ごしていたかをヴィクターに告白するところがあるのですが、これが本当に生々しく感情や人間の多面性を描写しているのです。
1人の人間が、たった一つの属性しか持たないということはほとんどありません。
みんな必ず善いところと悪いところを持っています。
しかし怪物の内に芽生えた善性は、容姿があまりにも悍ましく醜いことから受けた迫害よって塗りつぶされてしまいます。
彼はただ人間に同情を乞いますが、それが得られることは終ぞありませんでした。
怪物の行き着く先は破滅。
これは初めから疑いのないことです。
邪悪な怪物は必ず破滅する。
それでは、自分の中にある「悪」はどこへ向かうのだろうか。
この問いが浮かんでしまい、読み進めることで確定している破滅にたどり着くのが私は怖かったんだと思います。
読んでいるうちにだんだんと、怪物の方に感情移入してしまったんです。
『フランケンシュタイン』は、“もう1人の自分”の物語です。
ヴィクターと怪物が対応しています。
しかし、対応は物語の中だけでしょうか。
怪物と対応しているのは、もしかしたら自分に潜む影かもしれない。
怪物は何度も自分は誰だ、どこから来たのかと繰り返し問います。
そんなことを考えた、長い読書体験でした。
本当に面白かったです。
中断すべきか迷うほど途中が読めなかったのですが、読了してよかった。
真ん中の怪物のモノローグさえ抜けてしまえば、あとはみんな破滅まで一直線。最後の方はまさに氷の崖を真っ逆さまという感じの読み心地でした。
ロマン主義、SF、ゴシックと要素もりもりで読んでいて楽しかったです。
久しぶりに、これは原書で読みたいと思った小説でした。
私が読むには少し長いし難しいかな。
いつか挑戦したいと思います。
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