読書感想No.5『推し、燃ゆ』
こんにちは、天音です。
今回の読書感想は、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』(河出書房新書)です。
目を引くピンクの表紙。
まるで人公の可愛らしさと不安定さを表しているかのよう。
第164回芥川賞受賞作で、現在読書アカでも大盛り上がりな作品です。
私もずっと気になっていたのですが、どこに行っても手に入らなくて。
気長に待とうと思っていた矢先に、全く期待していなかった本屋さんで見つけました。
ラッキーです。
積読がたくさんあって、どうしたもんかと思っていたのですが、手に取ってみるとかなり薄かったので積読待機列に割り込ませてすぐに読みました。
簡単に内容に触れます。
タイトル通り大好きなアイドルが不祥事で炎上してしまった女の子のお話です。もちろんこれだけではないんですが、もしかしたらネタバレが嫌な方がいるかもしれないのでこれくらいに留めておきます。
その代わりと言ってはなんですが、文体に言及しますね。
文章自体は、とても簡潔で読みやすいと思います。
読むのが大変遅い私が二時間程度で読めた作品です。
ただ一人称語りでかなりフランクな喋り言葉が使われている……というかなんというか、若い子向けの言葉が使われているので、普段そういった言葉に触れる機会のない層の読者は戸惑ってしまうかもしれません。
むかし朝井リョウさんの『何者』を読んだ時に、あまり馴染みのない文章で半分くらい読んで慣れるまで苦戦した経験を思い出しました。
といっても、そこを含めて現代の若者をとても如実に表している素晴らしい作品だと思います。Twitterや他の投稿サイトなどで目にする若者の文章をそのまま切り取ったような描写で、読んでいて唸ってしまいました。
私自身、推しという存在がいるにはいます。二次元ですが。
グッズとか、ありますし……。
オタクだと思います。
ここではあまり出さないようにしているんですが、滲み出ていたらすみません。目を瞑ってください。
『推し、燃ゆ』の主人公あかりは、「推し」を推すことで自己を確立しています。それは自己確立のようでいて、全く違う行動です。「添木」ではなくなっている「背骨」となった他者は、たやすくその喪失や在り方によって本体を傷つけます。
私にも推しがいますが、あかりほどの熱量を持ってはいないです。
何かあった時は、必ず保身が先だと思います。
しかし、あかりの推しに向ける愛の歪さと自分が重なるところを、読者は作品を読みながら見つけてしまうでしょう。
別に、「推し」というのはアイドルや芸能人でなくともいいんです。この「推し」は、自分の愛を向ける対象です。
恋人でも、家族でも、動物でも。
この自分に向ける愛と、他人に向ける愛の不均衡さは、きっとどこにでも存在しているものです。
自分に向ける愛が、他人に向ける愛に比べて極端に少ない場合、二足歩行で自分で歩いて行くことすらままならなくなる。
そんな歪な在り方が、淡々と、しかし凄まじい圧力で迫ってくるような作品でした。
探していた本だったこともあり、ページをくる手が止まらなかったです。最後までギュンギュン読んでしまいました。
宇佐見りんさんの他の作品も読んでみたくなりました!