雨葉しずき

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小説【初投稿】

気づけば私はまた同じ小説を開き、世界を彷徨っていた。この小説を初めて読んだときに戻れないだろうか。気づきと感動をもう一周するために。そんな行為は人生をもう一度初めからやり直すのと同じで不可能だった。生きるということ。それは大好きだったはずの小説が、読みすぎて飽きてつまらなくなること。覚えるまで彷徨った文字の世界に新たな気づきと自分との接点を探すこと。

    • Winter loneliness

      なぜ私は秋冬が好きだと思い込んでいたのだろう。記憶のどこを探しても楽しくなかった夏など見つからない。 今年の夏も楽しかった。この情勢、ほとんど友達にも会えず夏休みもなかったの同然だったが、楽しかった。心が軽かったのだ。毎晩、お気に入りの曲を聴いているだけで何の苦もなく、毎日朝を迎えられた。 秋。心地いい風は、その裏に孤独を感じさせる冷たさを持っていた。 もう秋は過ぎたのだろうか。寒くて窓を開ける気にならない。風は唯々冷たいものに。 毎日のように話しかけてくる友達が鬱陶

      • 一日、ちゃんと動けば眠れるということ。

        5日間、ちゃんと朝から学校へ行った。 一歩坂を登れば息苦しくなるような暑い日も、風が冷たくて鳥肌が立つような日もあった。 その日その日によって見出す表情が違うということを久しぶりに感じた。 朝、電車を待つホームにだんだんと人が増えていくこと。日常が戻ってくるということ。 新しい夏服が肌に触れる。冬服を着たのはほんの数回。 強い日差しが街を歩くみんなに降り注いで、今にもセミの声が聞こえてきそう。 そんな初夏の風景に違和感を覚える。 この風景が見れるようになる前の、

        • 誰かに優しくなりたい

          「あなたと幸せに過ごせる適切な距離はどのくらい?」 私はまだこの問いに答えられない。 「今は唯々あなたが怖い」 そう、私はあのときあなたを必死に避けていた。 だって怖かったもん。自分の脳内でなにが起こっているのか理解できなくて、避けることしかできなかった。 最初は、そんな私を放っておかずに、あなたは遠くから見守ってくれてた。 ひとり机にうずくまっていた私の頭を撫でてくれた。 言葉にできないくらい嬉しかった。 でも、その後もずっとあなたには触れられなかった。あな

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          3本

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          私の大切な人

          ↑読んでいない方はこちらをお先に 私が尊敬して大切な人。 彼は、不器用で素直だった。おっちょこちょいで、みんなにいじられてばかり。自分の好きなことばっかに夢中で、あとは全部適当。 でも、他人のことを気遣えるいいやつだと思うんだ。本人に言ったら、調子乗りそうだけど。 自分の好きなことばっかに夢中になってる彼のことが、ちょっと羨ましい。一緒に話しているときも、いきなり私の知らない話を夢中になって喋り始めるんだ。そののめり込み具合に時々呆れる。 時々寂しそうにしているのを

          私の大切な人

          僕の大切な人

          僕が一番尊敬してて大切な人。 彼女は、いつも他人のことを助けるために腐心していた。賢く、みんなにとって頼れる存在だった彼女は、静かではあったが、明るい印象があった。 でもふとしたときに、何か思いつめた目をしていた。 彼女は、僕をよく頼ってくれた。彼女がみんなを、そっと気づかない内に助けていることを、僕は知っていた。自然とみんなが笑顔になれるように。だから彼女の愚痴を聞くことも、相談に乗ることも、わがままに構うことも、全部やってあげた。 全く苦じゃなかった。なぜなら、彼

          僕の大切な人

          雨音響く東屋の下 一枚落ちる葉に向かう思いは 静かな君へと移り変わる 手の中にある湯気立つコーヒーと いつかいつものように座っている君は 多分僕の中で同じ存在だ

          雨音響く東屋の下 一枚落ちる葉に向かう思いは 静かな君へと移り変わる 手の中にある湯気立つコーヒーと いつかいつものように座っている君は 多分僕の中で同じ存在だ

          カレンダー

          自然に目が覚めるまで起きない、アラームからも誰からも起こされない。 毎日何時に起きてもいいし、朝早くから満員電車に乗る必要もない。 僕には予定がないから。 真っ白なカレンダー。寂しいからシールとかで全部埋めてやろうかと思ったり。 何枚か前ページにめくると、毎週土曜には決まった用事が書かれていて、ぐるぐるーっと囲まれている日があったり、、、。 めくりたてのカレンダーには、ふたりほどの誕生日が書かれているだけ。きっと直接おめでとうも言ってやれない。遣る瀬無い気持ちに襲わ

          カレンダー

          公園

          公園のベンチに座る。毎日。 公園のベンチで小説を読んだりする人もいるだろうが、僕は何もしない。ただ、公園を眺めるだけ。たまにコンビニで買ったコーヒーをすすりながら。 …毎日?雨の日も?コーヒーに入る雨粒を見つめながら座ってんの?服をびっしょりと重く濡らしながら?やば…と思った人がいるかもしれない。 気づいた人は…きっと君も雨が好きなんだろうね。雨の日に目を向ける人は少ないと思う。 流石に雨の日にただのベンチに座るようなことはしない、耐えられないよ笑 雨の日は東屋の

          春と友と

          今日は久しぶりに友達と喋った。もちろん、直接会ってなど無理な話だからLINE通話でだ。 友達とだったら唯々笑うことができる。わざわざ闇を吐こうと思わない。 「家で何してんの?」だとか「この曲マジでいいよ」とかそんなたわいも無い話である。 私にとってこの春は区切りで、新しい人間関係を築いていくはずだった。でも新しく作った友達なんてまだひとりもいない。 今日みたいに楽しく喋れる友達が増えるとか滅茶滅茶楽しみだな…って思った。できるかな? 春はもう過ぎてしまうかもしれない

          ペンのインク切れ

          あっ。 手元の字よりも脳内の字に意識を寄せていた私は、数秒遅れてペンのインクが切れたことに気づく。紙にはインクが乗るはずだった凹凸がある。 すぐにインクを買いに行かなければと椅子から離れようとしたが、このご時世、どの文房具屋も開いてないだろうということに気づく。あぁ。ペンを握り直すとさっきよりペンが軽くなった気がする。しばらくこのペンは使えないだろう。 僕が常に愛用しているペン。基本このペン以外は使わないし、使えないのだ。紙には書きかけの文章。しょうがない、と引き出しか

          ペンのインク切れ

          空を眺めることは好きじゃない。空は変わり続ける。いつのまにか形が変わって、色が変わって、暖かさが変わる。時間が過ぎていくのを、進んでいくのを感じる。 自分が何者にもなれなくても、時間は去っていくのだということを思い知らされる。もうここにはいられないということが、大切なものを置いていかなければならないということが、大人にならなければならないということが、悲しいほどに目に入ってくる。 小瓶を胸に抱え歩く。暗い松林を抜けると、いつもと同じ音で海が迎えてくれる。海は好きだ。海岸に

          記憶

          「クラスで満点はあなただけだわ、よく頑張りました。」 重要語句100問テスト。先生は満点防止のためにマニアックな問題も出すから、満点を取れる人が出るのは珍しい。勉強した甲斐があったな、と胸を撫で下ろす。 雑多な雑音が響く電車の中で、今日もまたいつものように単語帳をめくる。そんなとき、ふとこんな疑問が湧いた。 「こんなたくさんのことを覚えるメモリはどこに生まれたのだ?脳の容量はどうなっているんだ?」 僕は焦った。この単語帳をめくればめくるほど、小さい頃の記憶が失われてい