僕の大切な人
僕が一番尊敬してて大切な人。
彼女は、いつも他人のことを助けるために腐心していた。賢く、みんなにとって頼れる存在だった彼女は、静かではあったが、明るい印象があった。
でもふとしたときに、何か思いつめた目をしていた。
彼女は、僕をよく頼ってくれた。彼女がみんなを、そっと気づかない内に助けていることを、僕は知っていた。自然とみんなが笑顔になれるように。だから彼女の愚痴を聞くことも、相談に乗ることも、わがままに構うことも、全部やってあげた。
全く苦じゃなかった。なぜなら、彼女の役に立てることが嬉しいから。周りから必要とされていない、と常に感じている僕にとってこれほど嬉しいことはない。
もしかしたら、彼女は僕の心細さを取り除くために僕を頼ってくれているのかもしれない。そう考えたのはつい最近で、それほど彼女の行動は全部自然に見えた。僕と違ってとても器用なんだろう。
そんな彼女が時々思い詰めた表情をしているのは、僕に明かしていない悩みか、秘密かを持っているからだと思う。毎日のように頼られると、なんとなくそう分かる。
努力家の彼女は、しっかりと自分を持っていた。いくら叩かれても、睨まれても、自分はこのままでいいという強い意志をもっていた。
彼女の心の中には、ひとりぼっちの部屋みたいなのがあるんだと思う。その部屋の中で答えのない問いを解くために、ずっと孤独で戦っているんだと思う。
彼女は時々、儚く消え入りそうに見える。
そんな彼女を助けたいと思うが、僕には何もできない。いつも助けてもらってばっかりだ。自分の無力さに嘆息がもれる。
いつも笑顔で話しかけてくれる彼女。
どうして自分のために僕を頼ってくれないの?
彼女は僕の疑問に気づかず、ケラケラ笑っている。
美しかった。
彼女の弱みは、僕以外誰も知らない。多分。人間誰にでも、苦悩、葛藤、があることをみんな知ってるはずなのに。
知らず知らずの内に、みんな彼女に助けられている。支えられている。
知らず知らずの内に誰かに支えられて生きているのがこの世界だ。
彼女は僕にとって大きな世界だった。
そんな彼女は僕に大切なものを与えてくれる 。
幸せだ。
僕も彼女に何か与えられたなら。