私の大切な人
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私が尊敬して大切な人。
彼は、不器用で素直だった。おっちょこちょいで、みんなにいじられてばかり。自分の好きなことばっかに夢中で、あとは全部適当。
でも、他人のことを気遣えるいいやつだと思うんだ。本人に言ったら、調子乗りそうだけど。
自分の好きなことばっかに夢中になってる彼のことが、ちょっと羨ましい。一緒に話しているときも、いきなり私の知らない話を夢中になって喋り始めるんだ。そののめり込み具合に時々呆れる。
時々寂しそうにしているのを見るけど、誰と話しても笑える彼はすごい。誰と話しても態度は全くとして変えないし、だから誰とでも笑える。もっと自信持てばいいのに。
私が彼と初めて話したときも、いつもの彼で接してくれて少しびっくりした。私って周りから静かで真面目なやつって思われてるから。
ひとりの方が気楽って思える私だったけど、彼と話すのは本当に楽しかった。
彼を助けたいって思った。
彼と話しているときは、いつもケラケラ笑ってる。そんな私の表情を見て、彼は本当の温かい表情っていうか、ちょっと残った暗がりがぱっと消えた様な表情をしてくれる。
私が唯一、いつ話しても笑えるやつだ。暗い話もいつものように受け止めてくれるし、笑える。私にとって、こんなに嬉しいことはない。
一度彼から、一番尊敬して信頼してる、って言われた。
そんなこと言われても困る。私は何もしてない。信頼されても困る。私は何もできない。
全部、全部彼の性格と人情のおかげなのだ。
彼は時々、私の心の鈍い痛みに触れる。ずぅーっと外側から。誰も気づかない私の秘密の存在を彼だけが知っている。
不器用な彼は不自然に聞いてくる。大丈夫?って。少し心配する表情とセットで。
彼は私の存在をどのように捉えているのだろう?私のなにを尊敬しているのだろう?
彼は私の知らない私を知っているのかもしれない。
少しずつ見失っていたものの靄が晴れる。
私の知らないことを少しずつ、少しずつ教えてくれる。
彼が私に与えてくれるもの。
自分のいる世界の美しさ。
他人に支えてもらえる心強さ。
私のまんまを認めてくれる嬉しさ。それだけで救われるということ。
私も何か彼に与えられたなら。