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忙しいのは悲しいのと同じくらいキラい

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暇すぎて考えてしまうこと。半径0メートルの形而下学。見えるものしか見ません。
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2022年5月の記事一覧

ショックを受けた話はたくさんしたほうが大丈夫になっていくみたいに

昨日遭ったショックの話を今日はなるべく多くの人に多くの回数話して聞かせた。自分が傷ついたことも含めて笑い話にして「しょうもない」ことに仕立て上げることでしかやっていけないし、人に話せばむかつくこともたくさん出てくる。なるほどこうして鮮明な経験を記号にして、とるに足らないことにして”慣れ”ていくことが人間が生きる営みそのもの、『暇と退屈の倫理学』に書いてあった通りだ。

どれだけ傷つけられまいと警戒

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あの人が恋人だと知って開けられなくなった手紙みたいに

以前勢い余って恥ずかしい手紙を渡してしまった子にそれ以来始めてちゃんと会う日だったから、返事をもらえたもらえなかった含めてそのことについて今日の日記に書くのだろうと思って一日過ごした。

無事お返事はもらえたのでひとまず不安は取り除けたのだが、もらえたそれはまだシールを剥がされずに鞄の底。開けられないのは手紙そのものに対する気持ちではなく、それに向き合えなくなるほど大きなショックを受けたから。ショ

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今日は後ろから見ていたみたいに

はからずも昨日と似ているような逆のような体験をした。映画館に入ると知り合い二人が隣どうしで上映開始を待っていた。事情が複雑なのはそれが仲良くしている女の子と先輩の男だったからだ。彼女は自分含めなんの抵抗もなく誰とでも二人で出かけるし、なんならその人には気を遣うのでちょっと居にくいくらいのことを感じていると言っていた気がするから、その事実自体には何も脅かされることはない。でもやはりざわつきを感じたの

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一緒に劇場にいた知っている人を外に出てから追いかけるみたいに

映画館を出て、同じ映画を観ていたらしいゼミの後輩の女の子を見つけた。エスカレーターを降りながら連絡を確認していたら見失ったけど、数百メートル歩いたところでみつけて追いついて話しかけた。

表面だけ見ればそんな出来事だが、内面を話せばドラマチック。藤井青銅イズムを意識して。

まず映画館でたまたま出会ったみたいなところから嘘。その回を彼女が観に行こうとしているという話は一方的に耳にしていた。もともと

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26時半から一緒に映画館に集まった俺たちみたいに

このトークが終わったタイミングで抜けたら終電に間に合うぞとオチを待っていたら、それがその日イチのロングエピソードトークだった。

タクシーで帰れる距離ではないので、深夜1時半の新宿に放り出された。そんな人間そこでは珍しくもなんともないので、受け入れてくれる場所はたくさんある。ファミレスでダラダラしたっていいし、寝ることのできる場所も探せば見つかるだろう。

だが私がその日選んだのは映画館。コロナ禍

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悲しいニュースが載った一面が内側に折りたたまれていたみたいに

隣に住む祖父母の家がとっているスポーツ新聞を、いつもは仕事帰りの父親が寄ってもらって帰ってくる。だけど今日はワクチンの副反応休暇で家にいたため、夕食後自分がとりに行くことに。よりによって今日の一面は悲しい悲しいニュース。反射的に、その面が内側になるように折りたたんで持ち帰る。

西の方遠くで毎日起きている悲しい死のことは、どこかで私たちにつながっているので、しっかり向き合わなきゃいけない。だけど、

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ダンス練後のギャルがハチ公前でよくみるおじさんにMIYASITA PARKでカラまれていたみたいに

ヒューマントラストシネマ渋谷にてシャンタル・アケルマン『アンナの出会い』に心つかまれた後、せっかくの晴れ空なのでMIYASHITA PARKのフードコートでテイクアウトし、屋上の芝生で昼ご飯を食べることに。デートでないのがもったいないが、10日後に控えた公園デートの天候が良好そうなので焦りはない。

食べ終えてから昼寝までこなす素晴らしい午後のひとときを邪魔したのは、しゃがれきったギャルの声。私に

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大学をサボってひとりで過ごすみたいに

サボったって言ってもですよ、あれです、真っ赤な嘘をついたわけではなく、本当に具合悪くて早めに諦めて、いざ時間になるとそうでもなくなってきたけど今から行く気にもなれないなーってやつです。起きてすぐ激痛だったのは事実でそのせいでなんの準備もしてないから行っても意味ないしいいや!っていう思考回路。たしかに逃避ではあるが、サボることでなにかマイナスを避けようとするというより、サボることでしか得られない快楽

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どこかの席に運ばれるデミグラスの香りでお腹がすくみたいに

デニーズのメロンフェアが数量限定ということで足を運んだ。タペストリーがかけられている「静岡県産マスクメロンのザ・メロンサンデー」は身の丈にあっていないので、1ランク下げて「まるごとメロンなパルフェ」をいただいた。果実でもソルベでもムースでもゼリーでもメロンを楽しめて満喫できた。2時間ほどそこで時間を予定をつぶす予定だったがアイスが溶ける前にと急いで食べ終えてしまった。店内はちょうど空いてきたところ

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返ってこなくてもいいから渡せる手紙みたいに

今度お世話になった目上の人に手紙を書くことにした。その練習という名目で親しい人に書いたものを今日渡した。書きたかった気持ちが先か、その名目が先かはもう忘れてしまったが、渡した事実だけがこちらの手元に残っている。

「やらなかった後悔よりやった後悔」を信じてやってみたものの、やった後悔って意外と重い。引かれないように言い訳がましい文章になってしまったし、書き終えてみたら何を伝えたいかわからないものに

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向かいの家の子どもがいつの間にか大きくなっていたみたいに

隣に住んでいる祖父母+叔母とたまにいっしょにご飯を食べるといつも親戚の近況みたいな話になる。自分は年に一度の、最近はご時世もありなかなか行われない新年会でしか会わない人たちなのでそんなに興味はないが聞いている。

だが今日は、天気が良いので外にキャンプ用の机と椅子を出してデパートのお弁当を食べた。やはり見えるものに興味が湧くようで、ご近所さんの話。ずっと育ってきた場所で、子どものときは毎日のように

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創作フレンチをゆっくり食べるみたいに

誕生日だからといって子供にあげるようなものもないのでと、神楽坂のちょい高めの和風フレンチレストランへ家族で行くことに。"和風フレンチ"の矛盾を抱えているのは料理だけでなく、その内装にいたっても一室に敷かれたカーペットとさらにその上に椅子がしっかり足を下ろすまでに徹底されていた。違和感を覚えたもん負けの格式高いで、思った通りにダラダラちびちび料理が出てくる。

映画でも美術でも、一流のものはそれ以下

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