26時半から一緒に映画館に集まった俺たちみたいに

このトークが終わったタイミングで抜けたら終電に間に合うぞとオチを待っていたら、それがその日イチのロングエピソードトークだった。

タクシーで帰れる距離ではないので、深夜1時半の新宿に放り出された。そんな人間そこでは珍しくもなんともないので、受け入れてくれる場所はたくさんある。ファミレスでダラダラしたっていいし、寝ることのできる場所も探せば見つかるだろう。

だが私がその日選んだのは映画館。コロナ禍ですっかり減ったと思っていた超レイトショー、今は結構再開していて意外とたくさん選択肢があった。何をやってるか予め知らずにその時観られるラインナップから選ぶことに憧れるが、残念ながら今回は見ておきたい作品があってしまった。

26時半から28時半まで共に過ごした『シン・ウルトラマン』がさほど面白くなかったのは多分さすがに眠くて意識が飛び飛びだったからだろう。『シン・ゴジラ』をやるにもシンエヴァ完結編をやるにも中途半端な感じがしたのはたくさんのシーンを見逃しているからだろう。

でもいい時間の過ごし方が出来たのは間違いない。そもそも深夜の街が好き。ビルのメンテナンスでセブンイレブンが閉まってるのを珍しがって写真とっていたら後ろに立っていたお姉さんと、「閉まってますよ」とコミュニケーションがとれたのもあの時間帯のおかげ。

劇場の雰囲気も良い。劇場は空いているほうがもちろんリラックスできるが、昼間に空いていると運営のことを余計に心配してしまう。ド深夜のレイトショーはもともとそんなに客入りが期待されていないと思うので、その点気軽にガラガラの劇場を楽しめる。

今回気づいた良さはそこに集まる人のモチベーションの低さが想像できること。26:30〜の回の映画を見にわざわざ出かけるなんて考えにくい。おそらくみんな自分と同じように時間つぶしである。日中忙しくてそこしか体が空かなかった場合も考えられる。その人は結構楽しみにしていたかもしれない。私と同じように人の少ない劇場で公開したての作品を鑑賞したいとしても確かにこの時間を選ぶか。

よく考えてみると深夜にすすんで映画を見に来る動機なんていくらでもある。それでもあのとき集まった人たちになんとなく共感できてしまう。それはこうした"想像"そのものがそうさせているのだと思う。常識的に観る時間に集まった多くの人が、それぞれなんで今この時間に見に来たのかに思いを馳せようとなどしない。

特殊な体験をしただけで、勝手に仲間が出来た。深夜とはそういう「空間」だ。

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