どこかの席に運ばれるデミグラスの香りでお腹がすくみたいに

デニーズのメロンフェアが数量限定ということで足を運んだ。タペストリーがかけられている「静岡県産マスクメロンのザ・メロンサンデー」は身の丈にあっていないので、1ランク下げて「まるごとメロンなパルフェ」をいただいた。果実でもソルベでもムースでもゼリーでもメロンを楽しめて満喫できた。2時間ほどそこで時間を予定をつぶす予定だったがアイスが溶ける前にと急いで食べ終えてしまった。店内はちょうど空いてきたところだったので、水で居座ることは問題なかったが、そこに近くの誰かが頼んだハンバーグと思しきデミグラスソースの香りの誘惑が。昼ごはんはすでに食べていたのでそんな欲望はその匂いが発生するまでまったくなかった。だが確かに一気にお腹が空いた。

欲望とはやはりこうやって外部からの刺激によって発生するものだと思い出した。コロナ禍以来家にこもりがちな私たちはこのような”外部”の存在からすっかり遠ざかってしまっている。ちょうど昼間家族と日本経済の停滞を憂いていたところ。やはりその原因はデミグラスソースのような刺激の少なさなのではないか。コロナ禍で経済が停滞しているのか、みんながお金を持っていないから物が売れないのか、鶏が先か卵が先かという話をしてもきりがないし、そもそも経済が活性か否かは貨幣の流通量で決まるのだから貯金に目を向けたってしかたがない。お金の量とは財産の量ではなく交換の量、お金は使えば生まれるものなのだから、なぜ人がものを買わないかということを考えなければならない。

そのなぜに答えを出すとしたらやはり先述のように「生活における外部の不在」がひとつ考えられる。家のなかにいては新しい欲しいものは増えていかない。コロナがなくたって幅を利かせていたネットショッピングがその刺激を代わりにしているようにも思えるが、インターネットから得られる情報は視覚や聴覚情報(それもかなり解像度の低い)ものだけで、それもたいていは最近買ったものとよく似たものを勧めてくる広告からだ。パンツを探しながらTシャツの広告が出てくることはあってもメロンパルフェをみながらデミグラスソースに思いを馳せることはないし、においのように直接的な情報はない。広告が与えるのはイメージだけであり、理性を狂わせるような刺激を与えてくることはない。

オンラインショッピングは買いたいものがあるときに便利なことは間違いないが、消費を促すにはあまりに遠回りである。ECが普及して街の店がつぶれていくのは決して資本の集中が原因ではなく、人々の欲望そのものが停滞しているからなのではないだろうか。

これくらいのこと少し調べればどこかの経済学者がすでに証明しているはずだが、デミグラスソースの香りは経済の勉強を深くしたことがない私にもそれを気づかせるくらい素晴らしいものだった。

もっとみんなが外出するだけで経済はよりよくなるのではと本気で信じている。

まあハンバーグ頼んでないんだけどね!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?