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カッコつけない、ありのままの姿を。オーダースーツ【Tailor F.】黄心

全国各地の経営者様をインタビューし、事業の特徴や人柄をお伝えするインタビュー企画。今回ご登壇いただくのは、オーダースーツ【Tailor F.】の黄心(ファン シン)さんです。

サッカーをやりながらアフィリエイトで成果を出したものの、無力感から地位もお金も手放すことに。一から始めたのは昔から好きだったスーツ作りでした。人としてのあり方を大事にされる黄さんに、これまでのキャリアや事業のこだわりを伺いました。


黄 心(ファン シン)/オーダースーツ
1996年生まれ、愛知県出身。現在は個人でオーダースーツ屋として活動。大学当時からネット広告業を始め、就職せずに一人暮らしをしていたが、お金が増えても自分自身の価値が上がっていない事に気づき、昔から憧れがあった、オーダースーツ屋を開業。現在は東京を中心に、出張のみで全国にオーダースーツを届けている。

Instagram:https://www.instagram.com/yellowheart1215/
小幡 渉(おばた わたる)/ライター
2021年よりSNS運用代行・コンサルタントとして独立。Web集客に力を入れたい企業様の代わりにSNS運用や発信のサポートを行なっている。人と距離を縮めること、文章を書くことが得意。滋賀を中心に活動中。野球、お笑い、筋トレが好き。特に好きなのは、オードリーとなかやまきんに君。

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サッカー漬けの学生時代

ーー自己紹介をお願いします。

黄 心(ファン シン)と申します。在日の韓国人で、18歳まで名古屋に住んでいて、ずっとサッカーをやっていました。当初は高校卒業後に服飾の専門学校に進学してサッカーをやめるつもりでしたが、入試一週間前に「やっぱりサッカーを続けたい」と思い、東京の大学でサッカーを続けることにしました。そして、現在も東京に住んでいます。


ーー進路を変えようと思ったのは何かキッカケがあったんですか?

キッカケは恩師の一言です。卒業後に服飾の専門学校に進もうと思っていたのも、元々スーツが好きで、スーツ屋さんになりたかったからなんです。ですが、入試前に恩師から「やろうと思えばスーツの仕事は大学卒業後でもできる。だけど、大学サッカーは今しかできない」と言われたんです。その話を聞いて大学でサッカーをやることにしました。


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大学在学中にアフィリエイトで稼げるように

ーー大学生活はいかがでしたか?

大学サッカーをやる中で、本気でプロを目指す人と自分との間に熱量の差を感じたんですよね。僕は最初からサッカーで生計を立てるつもりはなかったので。そこで、将来について漠然と考えるようになりました。

将来のために何かしようと思い立ち、一番最初に取り組んだのがアフィリエイトです。正直、最初は騙されました。「とりあえずやってみる」という性格が裏目に出まして。騙された結果、数十万円借金したんですけど、「ここまできたらやるしかねえな」と開き直りました。そうしていくうちに、アフィリエイトでお金を稼げるようになったんですよね。


ーー挫折から結果を残されるのはすごいですね。就職はどうされたんですか?

大学までサッカーしかしてこなかったので、働くイメージが全くなかったんです。ただ、「やりたいことができた時に、すぐ移行できるようにしておこう」という考えが浮かんできました。そうなると、企業で働くよりも自分でビジネスをした方が自分には合っている。幸いにも大学を卒業する時点で収入源はいくつかあったので、アフェリエイトを継続することに。結果として2年ほど続けました。



お金が増えれば増えるほど、無力感が増していった

一昨年、アフィリエイトを通して最高売り上げを達成しました。普通売り上げが上がったら嬉しいじゃないですか。でも、その時僕は素直に喜べなかった。23歳でめちゃくちゃ稼いでお金も使える状況だったのに。「この生活はしょうもないな」と気づいてしまったんです。

誰かに直接価値を提供して、お金とともに自分の価値が高まっている感覚がなかった。周りの人は表面だけを見て「若いのにすごいね」とチヤホヤしてくる。口座残高が増えれば増えるほど、無力感が増していったのを今でも覚えています。自分の感情と周りの評価とのギャップを感じていましたね。



直接価値提供をするために、スーツ事業へ

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ーースーツ事業に移った背景を教えてください。

大学生の時からアフィリエイトを始めて、作業を1日もサボったことがないんですよ。飲みに行った日も旅行に行った日も、欠かさず作業をしていました。それなのに、過去最高売り上げを出したタイミングで初めてサボったんですよ。

そこで、今まで張り詰めていたものがプツッと切れてしまって。緊張の糸が切れたのと同時に、「お客様商売をして直接価値を提供する働き方をしないと、自分はしょうもない価値観の人間になってしまう」と危機感を抱きました。

そこから収入が発生しないように、アフィリエイトのサイトを全て閉じました。収入源がなくなった中、もうやるしかない状況で、昔からやりたかったスーツ事業を始めることにしました。



1から自分でスーツ事業の道を切り拓いた

ーー少しずつ話が繋がってきましたね。スーツ事業を始めるにあたって、何か人脈や知識などはあったんですか?

スーツ事業を始めると言っても、パイプが何もなかったので、Instagramで30人ほどにDMを送りました。そのうちの1人とお会いすることができ、代理店事業をスタートすることに。

「やってみるしかない」というタイプなので、友達には赤字覚悟で作らせてもらうなどをして動き始めました。数ヶ月動いた後には代理店事業をやめ、自分でやることに。生地屋さんを自分で探してきたり新しい工場と契約したり、とにかく動き回りましたね。


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人との出会いは量から質へ

ーーInstagramを見ると「1ヶ月で100人に会った」と記載されていたのですが、100人に会ってみていかがでしたか?

保険や不動産の営業マンを中心に月100人に会いましたね。たくさんの人に会っていると、気付いたことがありました。出会いは量より質が大事だということです。

せっかく会っても「紹介できそうな人がいれば紹介しますね。スーツに興味がある人がいれば紹介してください」というテンプレを話して、以降は全く連絡を取らないパターンがほとんど。ビジネスを通して出会った人はなかなか成約には至りませんでした。それでも、友達や知り合いはスーツを買ってくれたんですよね。僕のことを信用・信頼してくれていたから。


そもそも僕が目の前の人に保険を預けていないのに、他の人に紹介することなんて出来ないんですよ。逆も然りで。僕のスーツを着ていないのに、他の人に紹介することなんて出来ないんですよね。

この関係構築ではダメだと思い、1ヶ月あたり10人に2回会ったり損得勘定なしで付き合える人を増やしたりして、出会いの質を上げるようにしました。結果として成約率が上がったので、出会いは質が大事だなと思いました。



自分のありのままを発信したい

ーー出会いの場で言うと、黄さんの場合はInstagramも積極的に活用されていますよね。Instagramはどんな活用の仕方をされているんですか?

Instagramでは仕事のことを一切載せないんですよ。1日の流れとか、筋トレやゴルフ、日常で感じたことを素直に発信しています。普段名刺交換はするんですけど、Instagramの交換もするんです。

僕は毎日ストーリーズに投稿するので、Instagramを交換しておけば接点が増えるんですよね。自然と僕の存在を認識してもらえるというか。自分のありのままの姿を見せていますね。普段発信をしていると、Instagramからお問い合わせのDMがくるようになりました。



スーツを作る”敷居”を下げたい

ーー普段の投稿を見ると、ついつい突っ込みたくなるような内容もありますよね。あのような投稿は意図的にされているんですか?

スーツを作ることに対して”敷居が高い”と感じてもらいたくないんですよね。ファッション系の発信をされている方って、カッコいいけど距離が遠いじゃないですか。それって僕のやり方とは違うと思うんです。僕はお客様と距離が近い、人と人との関わりを大事にしてスーツを作りたいと思っています。



後ろ姿、背中を整えます

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ーー売り手としてこだわっていることはありますか?

よほどスーツのことが好きじゃない限り、スーツの違いって分からないと思うんですよ。ただ、「着ても分からないから、これくらいでいいや」と売り手が妥協したらおしまいだと思っています。売り手は質にこだわりつつ、信頼や信用してもらえる人になること。選ばれる基準は信頼や信用の部分だと考えています。売り手がどんな人なのかが重要ですね。


ーー黄さんがスーツを作る上で大事にされていることはありますか?

スーツって正面からは自分の目で確認できるけど、背中を確認できる人は一人もいないんですよ。後ろ姿って意外と見られているのに。既成服だと肩甲骨が飛び出ていたり肩が上がっていたりしてしまい、シワが出ちゃうんです。でも、シワが出ていることに本人は気づかない。

目に見えないものをこだわる人って少ないんですよね。だからこそ、”後ろ姿、背中を整えます”というキャッチコピーのもとで、目に見えない部分をこだわりながら、スーツを作っています。



一番の思い出は、結婚式で新郎が着るスーツ作り

ーー今までスーツをたくさん作ってきた中で、印象に残っていることはありますか?

半年間くらいちょこちょこ連絡をとっていたお客様から、ある日連絡がきまして。「結婚するから、結婚式のスーツを作ってほしい」と。当時は経験も浅くてどうしようかと思ったんですが、ここで逃げたら一生逃げるなと思って。覚悟を決めて、やらせてくださいとお伝えしました。

スーツを作ることが決まってから式場を聞いて、式場に行きました。中途半端なものは作りたくなかったので。式場の雰囲気、光の入り方、新婦のドレスの色合い。式場の方にも協力していただきながらリサーチをした上で、スーツの色・雰囲気を決めてお客様に提案しました。徹底的に準備したことで、結果的にお客様からは大変喜んでいただきました。


スーツをお渡しした後もお客様とは連絡をとって、ご飯に行きました。スーツを作った後も関係性を作れるのは、個人事業主の醍醐味だと思います。新郎のスーツを作るということが、僕の中ではビッグイベントでした。

↓↓実際の様子↓↓
(黄さんのInstagramより)



スーツを作る過程も楽しんでほしい

ーーどんな人に対してスーツを作っていきたいですか?

スーツって仕立てること自体が楽しいんですよね。僕としては、社会人だけでなく大学生にもスーツを作る過程を楽しんでほしいんです。

また、スーツを着る人は2種類いると思っていて。”必要だから着る人”と”好きだから着る人”。必要だから着る人ってこだわりがないんですよね。片や、好きだから着る人は大事に使うし、こだわりが強い。僕としては、好きだから着る人にスーツを作りたいですね。


ーーご連絡いただきたい方がいれば、教えてください。

第一印象で勝負を決めたい営業職の方や経営者の方、自分では目に見えない、後ろ姿までこだわりたい方。ジャケパンなどオシャレを楽しみたい方、週末の遊びに羽織るジャケットが欲しい方などがいれば、お声がけいただきたいですね。基本的に関東がメインではあるんですけど、ご相談いただけるのであれば、全国どこでも対応します(※別途、出張費が必要)。


ーー今後の事業展開について教えてください。

今後は、メンズ限定のネイルサロンや脱毛サロンなど、スーツと絡めた事業展開をしていきたいです。目に見えない部分に気を使う人って、目に見える部分にも気をつけると思うので、トータルでお力になれたら嬉しいです。もし一緒に事業展開をしたいという方がいらっしゃれば、気軽にご連絡ください。



自分と深く関わる人のためにスーツを作りたい

ーー現段階で目標はありますか?

今の事業を通して、自分の結婚式とお葬式のドレスコードを作りたいんですよね。僕が結婚式をする時、参加者が【Tailor F.】のスーツを着ていたら、カコイイと思うんです。お葬式の時にも全員、僕が作ったスーツを着て参列してくれる。その時にもし子供がいたら、「お父さんすごいな」と感じてくれるはず。仕事を越えて、結婚式やお葬式に来てくれる人が増えるように頑張りたいなと思っています。




編集後記

お金や地位を捨ててまで取り組むことができる、黄さんの執念とスーツへの愛を感じました。大量生産されるものではなく、世界に一つの自分だけのオーダースーツ。せっかく作るのであれば、黄さんのように熱い思いを持った方にお願いしたいですね。事業はもちろんのこと、人としてのあり方にこだわる素敵なお話が聞けて、素晴らしい時間でした。

黄さんと繋がりたい方はInstagramのDMもしくは、小幡までご連絡ください。黄さんのInstagramはこちら。


■事業紹介動画




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