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イールバース

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#土用の丑の日

AGE OF POSTUNAGI

AGE OF POSTUNAGI

 成田空港第一ターミナル。10分前に到着したブラジリア国際空港からの便を降りた旅客で入国審査ゲートが賑わっている。

 その中、JAPANESE ONLY(日本人のみ)の自動ゲートに並んでいる一人の少女がいた。浅黒い肌、後ろに束ねた黒髪。高い頬骨と鼻梁、広い鼻翼。アジアンに似ているがどこが違う容貌。無地の白いTシャツにデニムパンチといった素朴の服装がかえって前腕と首周りを這うヘビのようなタトゥー、

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過激環境保護団体『オーシャン・クラフター』闘士へのインタビュー

過激環境保護団体『オーシャン・クラフター』闘士へのインタビュー

『実家はね、養鰻でしたよ。毎年のシラスウナギシーズンになると、家の手伝いをやらされたんだ。よるの川口で、凍るような風に耐えながら、黒い川水をライトで照らして、目を凝らしてウナギを掬いあげてた』

 とソファに座っている男、オーシャン・クラフター(OC)成員のY氏が語った。顔はモザイクで隠しており、声もボイスチェンジャーによって変えられていながら、物々しくタコとクラゲのタトゥーを彫り入れた両腕を胸の

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鰻園追放

鰻園追放

読んでおくことを勧める記事はこちらです。

「ヒィヤッ!ヒィヤッ!」

 夏のラベンダーが咲き乱れる草原を、一人の騎手が駆け抜ける。すぐそこに「Eden」の鉄細工を施した美しいアーチゲートが見えてくる。男は高揚感に駆けられ、馬に拍車をかけた。

「カモン、ガール!もうすぐ家だぞ!」

 馬はプーフ!と声を立てて息を吐き、足の動きを速めた。

 家から出かけてからもう5日。南の爬虫人の集落に行き、リ

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やはり旅は一人に限る【DAY2】【暗黒イール真実】

やはり旅は一人に限る【DAY2】【暗黒イール真実】

【DAY1】

二日目、朝8時30分。我々はパシフィコ横浜にいた。

一部のnoteユーザーの間はミーム汚染によって堕天使の根城だと認識している。詳しくはお望月さんへどうぞ。

さて今日はなにしに来たのかていうと、法王ダライ・ラマが今日から3日間、ここで説法を行うからだ。こん回はこれがあったから日本に来れたと言っても過言ではない。

開演はまだ半時間あるが、既にいっぱい並んでいた。ライブなど大型活

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蛇魚の神

「ウナギを食うなーッ!」「自然に返してやれよ!」「ウナギを焼けーッ!」「最後まで食い尽くせ!」「伝統を守るんだ!」

 土用の丑の日、午後。大勢の人間がそれぞれの目的をもって日比谷公園の芝生広場に集まっている。ニホンウナギの最後の一匹が間もなく、琵琶湖の養殖場より自衛隊のヘリによって運搬される。このあとは夜文化庁で行う蛇魚ノカミ天に登レシの儀式で捌かれ、蒲焼にして首相と客として招かれた孤児たちが召

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うなぎ絶滅キャンペーンは中世からあった

うなぎ絶滅キャンペーンは中世からあった

 我々考察班は遂にうなぎ絶滅キャンペーンに関する最古の史料を見つけたのです。

 12世紀、現在のポーランドとチェコの地域で活動していた吟遊詩人エイク・アジュエム=スカンバが残した手記から、このような記述がありました。

~ ~ ~

 今日は妙な一行が村に来た。ローブを纏った牧師風の男、同じローブを纏い、バスケットを背負った青年、布鎧を着込んでハルバードを持った二人の戦士。巡回牧師の一団かとわた

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