10秒間の魔法
とあるドラマにハマった。
数年前に流行ったことは知っていて私の周りの友人達に好評だったがなんとな手を出さずにいた。
ふと気が向いて観てみるとまんまと好きな作品になった。
その作中で好意を向けている相手と電話中にばったり会い、一緒に星空を見るシーンがあった。
そのシーンを見てふと思い出した。
「目を閉じて。そのまま真下を向いて、10秒数えて。顔を上げて目を開けてみて?そのまま普通に見上げても綺麗だけどもっと綺麗に見えるでしょ。
いつも光の中にいるから目が灯りに慣れてしまっているんだよ。だから下を向いてから見上げるともっと綺麗に見えるの」
長野に当時の恋人と星空を見に行った時に教えてもらったことだ。
そんなことを得意げに言っていた彼の顔も星空も本当に綺麗できっと一生忘れられない瞬間なんだろうななんて思っていた。
彼は昔学んだことを言っただけだったらしいが、なんだか私には人生のことを言っているみたいだなとも思った。
魔法みたいだ。泣いてばかりだった私に顔を上げさせる事ができる彼は私にとって紛れもなく魔法使いだった。
私の人生にはもう彼と一緒に星空を見る瞬間はきっとないだろうけど、今でも私は星空を見ると目を瞑り10秒間下を向く。例えそれが綺麗とは言い難い曇り空だとしても、なんだかその間に魔法がかかる感覚がして目を瞑り下を向く前の私より前向きになれる気がする。
その10秒間で考えることはきっとこれから先もあの時間のことなのだろう。
いつか私も10秒間の魔法を誰かにかけてあげたい。
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