体験

私が株式会社イグジィットを解散するわけ のおまけ

来てくれたGoogle社員に「Google対策ですから」と

合気道の道場を始めてすぐに、いつの間にかGoogleの社員になっていた人がお祝いに来てくれた。いろんな武道をやっている人だ。私以上に武道オタクで長い付き合いだけど、この人のキャリアコースにはいつも驚かされる。

稽古が終わってから居酒屋に行って、開口一番「スマホ用を重要視してるというだけあって、読みやすくて面白かったです。“合気道の道場を開くには”を電車の中で一気に読みましたよ」とおっしゃった。

「あー、あれはGoogle対策です。だってあなたみたいな人はターゲットじゃないですから(笑)」と返事した。

そう、私にとってはSEOというよりGoogle対策。Googleマイビジネス(うちは単独使用ではないのでマイビジネスに登録できませんが)やGoogleマップなどを含めての対応を、私はGoogle対策と呼んでいる。ウェブサイトを作るときに、アクセスを急増させるにはどうしたらいいか。アドワーズ(広告)も考えたけれども、超ニッチだし、キーワードが考えられない。

Googleトレンドでキーワードの人気度を調べると、代表的な武道では剣道と柔道がほぼ同じ。空手は2020年東京オリンピックに採用で盛り上がっているものの、剣道柔道を10とすると空手は7。合気道は1でしかない。

それはオリンピックなど大きなトピックがないのだから、当然のこと。


ニッチの中でエリア限定のターゲットをどう集めるか

合気道を始めたい人をサイトに集めなきゃいけない。しかも渋谷周辺で仕事をしているか、住んでいる人を。そこがメインターゲットだけど、そんな人たちはまあ広告でもSEOでも集められないだろう。そもそも合気道を知っている人がどれぐらいいるのか。

それよりもターゲットにはなり得ないけれども、合気道や他の武道を長年やっていて、道場を出したいとか、出すにはどういうことが必要なんだろうとムズムズし始めた人たちが読みたくなるようなコンテンツを考えたらいいんじゃないか。Googleが公開しなくなったページランクを上げるにも、いいんじゃないか。

“合気道の道場を開くには”というブログなら、私はいくらでも書ける。他で誰も書いていない内容だって書ける。そういう人たちは、道場のサイトを運営していたりするし。という発想なんですけど、まあまあ当たりました。Googleアナリティクスでチェックすると、1時間以上読んでいる人も少なくないし、リピートもされています。


完成度も実態すらも関係のない検索順位

Googleの社員に「Google対策ですから」というのは、どうかと思うけれども、批判してるわけじゃない。以前には、ブログに書いた「DeNAキュレーションメディアの問題は、Googleの敗北でもあるんじゃないのと」というタイトルの記事をお知らせして、すいませんね、またこんなこと書いちゃってと謝りました。

これも批判じゃなくて、頼んますよという気持ちです。

ともあれターゲットじゃない人たちを集めても、サイトに関連する記事で、しかも想定している人たちには何らかの役に立つだろうからいいでしょ。関係ない記事を量産してるわけじゃないし。という気持ちながら、Google検索のアルゴリズムを考えないと、コンテンツを作っても意味がないというのはどうなんだろう。

逆に何の実態がなくても、アルゴリズムにさえ対応していれば順位が上がっていくから、悪用しようと思えばいくらでも悪用できる。

古くは自動生成された、意味が支離滅裂なワードサラダ。そして最近はクラウドソーシングなどで大量生産された薄いテキスト。この先はAIによるテキストコンテンツが大量投入されるのは間違いないでしょう。どれだけGoogleが良質なサイトを作ってくださいと啓蒙したり、低品質なサイトはこれだと公開していても裏をかかれているのですから、Googleは敗北し続けています。

Googleの苦悩を推測できるような変化がありました。英語表記のみで、新機能「症状検索」を提供し始めたようです。医療情報のスパムがあまりに多いので、ハーバード大学医学大学院や有名クリニックを連携して、通常の検索結果の上に症状検索カードを表示するというのです。

医療情報のスパムは深刻ですが、遅かれ早かれすべてのジャンルである種、権威の裏付けを求めるようになるかもしれません。


スマホからの流入は最終成果に結びつかなかった

「スマホ用を重要視してるというだけあって」とGoogle社社員の知人が言ったのは、それまでのメールなどのやりとりで「もうスマホ用サイトだけでいいですよ」、みたいなことを私が書いていたから。

確かに当初はスマホファーストのつもり、で作っていました。

養神館合気道 精晟会渋谷

いやしかし、不備はいっぱいあるし、それほどスマホファーストではなかったのです。写真やデザインのクオリティとかテキストの誤字脱字さえも、サイトにアクセス →体験 →入会 というフローとは、ほとんど関係がなかったのです。

結論からいうと、結果から逆引きすると、スマホからの流入は役立たないということがハッキリしました。

もちろん商品やサービスを売るという広い、一般的な話なら関係はあります。でも、詳しくは書けませんが、こと合気道の道場に入会してもらうという直接的なプロセスにはマイナスでしかありませんでした。

実際に入会してくれた人たちは、Googleアナリティクスで追うと、それ以前のアクセスは様々ですが、体験を申し込んだときのアクセス時間は、ほぼ2分以内。そして体験に来られたときに、入会を即決しています。

どれだけ練った文章を長々と書こうとも、凝って写真や動画を作ろうとも、意思決定には関係がない。入会された人たちに聞くと、サイトの写真や文章を読んで「なんとなく、良さそうかな」でした。サイトにアクセスして、ほぼ直感で体験を申し込まれています。体験してみて、先生が怖かったりするとアウト。でも面白そうで続けられそうだから、入会したという理由ばかりです。

私がしつこく入会に誘導したとか、クロージングの技術を発揮したなんてことはありません。そもそも技術はないです(笑)

こういう結果、マーケティングをやっている人なら戸惑いませんか?

何時間も読んでいたり、何度もアクセスしている人たちは、たぶん合気道や他の武道の道場をやっている人たち。あるいはそのサイトを運営している幹部の人たちが、なにかしら調べたり参考にしようと見ているだけなのです。


イメージで、ざっくりとした好き嫌いを判断?

ひとり会社になってから、会社のウェブサイトをWixで作り替えました。Wixは世界的なホームページ制作ツール。制作会社としては、Wixを使うなんて致命的にダメな行為かもしれません。でも私は遅かれ早かれ、こういうサービスを多くの会社が使うだろうと考えています。

しかし、この手のツールには欠陥も多くあります。

他にもJimdoというツールがあります。Jimdoは日本ではKDDIが提供しているのでサポートが安心だという声もありますが、スマホでのユーザビリティが貧弱すぎます。

Wixを使ったのは、相対的にスマホでのユーザビリティが優れているというだけです。合気道の教室 養神館合気道 精晟会渋谷 のウェブサイトもWixで作りました。Htmlの知識も不要で、さまざまなアプリを無料の範囲でも多く使うことができます。

独自ドメインで有料のプランを使っていますが、アプリ等は無料の範囲でだけ使っています。その範囲で、思いついたことを実行して結果を見ています。自分で考えて、自分で決めて実行し、結果を得ているのですから、PDCAはかなり速いのです。

速いのですが、そのときに多くのミスを犯します。Wixのバグもありますが、エレメントをまとめて動かしたつもりが、動いていないところがあったりします。そうすると特殊な作りをしているので、大きな画像が上下に割れていたり間隔が詰まっていたりします。

基本的にパソコン版で編集すると、モバイル版でも最適化して作られるということなのですが、これがそうではありません。

こういう仕組みはレスポンシブデザインといって、アクセス者の端末によってサイトの表示方法を替えてくれるので便利です。Wixはモバイル版で表示させない要素を選択することもできるので優れていますが、やはり不具合はあります。

更新した後、すべてのページをチェックし直せば、おかしなところを潰していけますが、かなりの手間です。ところが誰も気にしていなくて、今のところ成果に関係はなさそうです。

これ、デジタルじゃなくてもマーケティングをやって来た人、クリエイティブ関係の人は戸惑いませんか?

私は戸惑いました。前に書いた「クリエイティブとかデザインとか、そんなものは最終的な成果とほとんど関係がない。そんな空気はありましたが、自分自身でトライアンドエラーしてみてハッキリしました」というところです。

衝動的に刹那的にクリックさせて販売する。そういうこととは対照的に、完成度はともかく、自分自身でしっかりコンテンツも作ってやったことが、こういう結果だったのです。

「SNSの仕事をするようになって、その質というかデザイン力とか写真や動画のクオリティ、テキストの日本語としての正確さみたいなところを含めて、ほとんど関係ないじゃんと思い知った。というか積極的に崩しました(笑)」とも書きましたが、SNSについても同様です。


SNSを運用してどんな効果があったのか

知名度のない、出来たばかりの団体が知名度を素早く上げるには、SNSではTwitterしかありません。毎回けっこうなインプレッション、エンゲージメントをマークしていますが、エンゲージメントにつながっているのは、ほとんどがやっている人たちなのです。道場を主宰している人たちも多いです。

当然、入会してくれるような対象ではありませんが、アナリティクスを見ながら反応を得ようとすれば、そこに合わせる必要があります。

Instagramでは海外で合気道や他の武道をやっている外国人たちが、多くフォローしてくれています。もちろん対象ではありません。中には「こんど昇級審査を受けるんだけど、この技をやってみせてくれ」とコメントしてくる厚かましい人もいます。私は「流派が違うので審査の参考になりませんよ」と返したりします。

同じ団体の人たちから、インスタをやって効果があるのかと聞かれることがあります。「直接的な効果はないけれども、ひとりインスタ経由で入りましたよ。なにかSNSをやるのなら、インスタを加えたって損はないし、それほどの手間ではないでしょう」と返事します。

人から聞かれて、確実に効果がないと言っているのはFacebookです。中高年がアグレッシブに使っているので、普通の企業でもFacebookページを使うのが当たり前になっていますが、前提として中高年にしか届きません。

少し前までFacebookは動画を優遇していたので、Facebookページに動画を投稿すると個人のニュースフィードに表示されやすかったのですが、いまやオーガニック投稿では、ほぼ表示されません。


プロセスはさまざまだから、素早くやってみるしかない

SNSは全般的にECサイトへの誘導でもない限り、直接的な効果は少ないのです。簡単にいえば、それぞれのプラットフォームでの存在感のためにやっていて、結果に結びつけば儲けものという程度の気持ちでやるのがいいのだと思います。

Twitterをやっていなければ、Twitterしかやっていないような人たちには見えない存在。Instagramは外国人にフォローされてもしょうがないと思うのではなく、いいね!されたり見てもらえる人数が増えれば、個別のハッシュタグで[人気の投稿]になり、さらにフォロワーやいいね!が増えたりします。


実はいまだに「入会してくれそうな人に届いて、反応してくれるためにはどんな投稿がいいか」ということは分かっていません。

入会してくれた人の中で、「合気道を始めたというと、合気道をやっている人からはどこの流派か聞かれる」「養神館だと答えると、武闘派ですねと言われた」人がふたりいます。武闘派ってことはないですが、武道としてきっちりしていることは確かです。それでも初心者のうちは、ほとんど関係がない。型を繰り返しやれば、だんだん効く技になってくるという仕組みです。

だから怖そうに見えないように注意はしていますが、毎回の稽古の中で撮影したものの中で、反応の良かったところを意識しながら、動画を編集しています。私は細部も見えるようにしたり、理屈も詳しく説明しています。手間だし面倒くさいですが、会員にわかりやすく説明するのと同様に、見てくれた“やっている人たち”を納得させ反応してもらうためには、必要だと思っています。

結果に結びつくプロセスがわからないなら、いろいろと素早くやってみるしかないのです。


SNSにしろ、Google対策やSEOにしろ、そして素材を作ることにせよ、ぜんぶ自分でやっているからこそ、PDCAを速く回すことができる。試みて結果を知り、修正することが速い。

二人三人でやれば、それだけコストもかかるし、遅くなる。

コンテンツマーケティングであれSNSの運用であれ、あるいはクリエイティブであれ、請け負って仕事をするなら、やはりひとりか、ミニマムなユニットかなという実感です。

いわゆる完成度、きっちりした計算も作業も、結果にはほぼ関係がないということは、はっきりしました。


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とはいえ、どうやって生活費を稼いで、家に入れていくかは大切です。私の奥さんは鷹揚なのか信用してくれているのか、会社を辞めて会社を作るときにも、道場を始めるときにも「いいんじゃない」と言うだけです。

今回、会社を解散しようと思うと言ったときにも「いいんじゃない」だけで、「これからどうするの?」とは聞かれませんでした。

私は自分自身のスキルはいろいろあると思っていますが、デジタルマーケティングは仕組みが中心で、その周辺は私の価値観からすればスパムだらけです。価値観が古すぎるのなら、どこかに勤めて修正するしかないじゃんと思っています。ところが会社はまだ清算会社として存続中で、しばらくは経理的なことや役所への対応があります。合気道をやっている日は、残業もできません。

だからアルバイトしようと考えています。実は昨年末からSNS運用のできるアルバイト先を探していました。これが大変そうです。SNS運用のバイト募集を出しているのは、ほとんど20代が想定されているようです。条件が悪すぎます。

履歴書を書いていて自分自身の市場性を考えると、57歳で大学中退のハゲたおっさん。しかも27年社長をやっていたなんて、使いにくそう。そんな人がアルバイトで応募して来たら、私が採用する側でも、えっ!? となります(笑)

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「私が株式会社イグジィットを解散するわけ」はこれで終了ですが、需要があれば「役には立たないけれど、赤裸々な57歳からの就活記」と「ほとんど出ていない会社解散実務の実情」を書く予定です。


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