見出し画像

連載「カナルタ コトハジメ」#10 アートと学問の垣根を越える:マンチェスター大学映像人類学部の「不可能な挑戦」

*2021年10月2日(土)より全国のミニシアターで劇場公開されるドキュメンタリー映画『カナルタ 螺旋状の夢』。僕自身がひとりでアマゾン熱帯雨林に飛び込み、かつて「首狩り族」として恐れられていたシュアール族と呼ばれる人々の村に1年間住み込んで撮った映画です。この連載では、『カナルタ』をより深く味わってもらえるように、自分の言葉でこの映画にまつわる様々なエピソードや製作の裏側にあるアイデアなどを綴っていきます*

_______________________________

前回記事:https://note.com/akimiota/n/nd6ef56865bb8

ここ数年、「アートと学問の垣根を越える」というフレーズをそこかしこで耳にする。特に日本でその傾向が強い気がするけれど、世界的に見てもそのニーズは高まっている。それには様々な要因があると思うが、僕の中ではおそらく2つの大きな流れが関係している。アートが即物的なものからよりコンセプチュアルになってきていることと、学問がより「社会への還元」を求められていることだ。「映像人類学」という学問は、まさにこのニーズが合流するところに生まれた、はずだ。それが僕の理解だ。つまり、一方では誕生以来「ポピュラーアート」あるいは「エンターテインメント」として機能してきた「映画」というアートがよりコンセプチュアルかつ実験的になった結果であり、もう一方では「人類学」という学問が積み上げてきた知見をより多くの人に敷居を低くして届ける、というモチベーションの産物でもある。映像人類学という分野を見つけ、自分なりに調べていくにつれて、僕はその融合にとてつもない可能性を感じた。

ここから先は

5,036字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?