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アルセーヌ・ルパン『八点鐘』「水びん」-証拠隠滅トリックと心理作戦が見事な作品-

(Spoiler Alert!ネタバレ注意です!)

パリにあるブローニュの森のレストラン「アンペリアル」で、ルパンとオルタンスが食事をしているところから、物語が始まります。

このアンペリアルというレストランですが、「Dictionnaire Arsene Lupin」によると、今は「Pavillon Royal」という名前で、現在もブローニュの森にあります。

私は、こちらのレストランのインスタをフォローしていますが、まさに「水びん」で登場する風景そのもののレストランだなと思っています。
描かれている通りのテラスとお庭もあります。

同じブローニュの森にあるレストラン「カスカード」(過去記事参照、ハートの7)とあわせて行ってみたいレストランです。

Pavillon Royalのインスタアカウント
@pavillonroyal

ルパンとオルタンスは、このレストランで、ひどく取り乱した青年に出会います。

青年の友人が死刑宣告を受けて慌てていたんですね。

ルパンは、オルタンス、その青年と3人で、友人の奥さんの家(ルール通り23番地の2)へ一緒に行くことになり、ブローニュの森のサブロン門から出てルール通りへ向かいます。

赤丸がブローニュの森のサブロン門

被害者は、シュレンヌに住んでいたらしい。シュレンヌは、ブローニュの森の西にある地区。
殺人犯は、サン・クルーでオートバイを乗り捨てていた。

サン・クルーは、『813』にも出てくるブローニュの森の南に位置する地区です。

今回の「水びん」の事件は、ブローニュの森近辺で起こってますね。

そのオートバイのタイヤの跡やピストルがその友人のものだったことから、友人が犯人として疑われます。

その後、ルパン、オルタンス、青年の3人は、テルヌ広場にあるこじんまりとしたレストラン「リュテティア」に場所を移します(青年の住居がテルヌ広場のアパルトマンのため)。

このテルヌ広場や「水びん」の事件については、拙著で紹介しているので、興味のある方はご一読頂けると嬉しいです。

このテルヌ広場は、ルパンシリーズに何度も登場します。

リュテティアに警察官が来て、この6Fの部屋(つまり青年の部屋)が犯人の部屋だということをルパンが明らかにします。

ルパンはこの部屋の中に札束が隠されていると言う。

犯人は、友人の妻とその母と一緒に映画を見に行っていて、その間に自分は映画館を抜け出して犯行に及んでいた。

いわゆるアリバイ作りですね。

ルパンに自白を求められている最中に、犯人は密かにこの札束を消してしまおうと試みる。

離れたところから札束を消すためにあるトリックを使うのでが・・・。

この太陽光線のトリック、小学生のときにはじめて読んだときもすごい!と思いましたが、とっさにこれを思いつくのは未だにすごいと思いますね。

犯人は、ルパン、オルタンス、警察官達の目の前でどうやって札束を消したのか?

いや、もっとすごいのは、この後のルパンの心理作戦です。
犯人から自供を引き出すように、心理的な圧力をかけます(はったりも入っていますが)。

「水びん」は、『証拠隠滅のトリック』と『犯人を自供に追い込む心理作戦』が堪能できる作品で、短編でさらっと読めますし、お勧めです。


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