【後編-7 シーク教:お作法は"お肉"にあり!】あなたの大切な人の「アイデンティティ」を守る「お食事の要件」
前回お話した、ヒンドゥー教の「お食事の要件」。
ヒンドゥー教の人たちの約8割がインドの人であることも紹介しましたが、インドで多いのは、ヒンドゥー教だけではありません。
シーク教は、世界第5位の宗教、そして信仰する人たちは、インドが圧倒的に多いのです。
今回は、そんなシーク教(シク教)をご紹介します。
シーク教は、これまで紹介してきた、ユダヤ教やイスラム教、ヒンドゥー教などと比べると、要件はシンプルです。
※それでも、私たち日本人からみたら、多くのお食事の要件はあります(汗)
ただ、肉の要件については、ちょっとだけややこしいかも知れません。
● 宗教や宗派は、あまりに多岐にわたるため、一般的な概要のみを、解説しています。
● 信仰の深さには個人差がありますので、必ずしもこちらの内容通りとは限りません。そのため、あなたのゲストの「お食事の要件」は、可能であればご本人や、ご本人と親しい人に、直接確認することをおススメします。
● それぞれの宗教・宗派がどういうものか、については、リンクから参照いただけますが、正確性を保証するものではありませんので、ご興味があれば、ご自身で調べてみてくださいね!
さて、いつもの言葉ですが
宗教への信仰心は、
その人のアイデンティティを形づくるもの。
そんな宗教に求められる「お食事の要件」を知っておくことは、大切なエチケット。【前編】では、このふたつの基本を、ご紹介していますので、あなたのお時間が許せば、こちらの記事も、ぜひ!
● 宗教にも「お食事の要件」があり、 それは宗教によって異なる
● 「クロス コンタミネーション」(交差汚染)にも注意!
(宗教でもクロス コンタミネーションには注意!「お食事の要件」【前編】はこちら↓)
シーク教
シーク教(Sikhism)は、ヒンドゥー教とイスラム教を調和させようという試みのもと、15世紀に北インドで創始されました。
世界のシーク教徒の人口は、2020年で3,000万人で、2050年には4,200万人に達すると推定されており、現在世界第5位の宗教です。
シーク教徒がもっとも多いのは、インド、次にカナダとイギリスです。
洗礼を受けたシーク教徒は、髪を切らず、特に男性はターバンで覆います。
洗礼を受ける年齢に決まりはないので、本人が「準備ができたら」受けることになるのですが、大体は家長が、自分の子がふさわしい年齢に達しているのかどうかで判断するようです。
洗礼を受けると、5Kと言われる、Kで始まる5つのものを身につけなければならず、そのひとつが髪(切ってはならない、男性はターバンを巻く)ことになります。
この辺は、次回紹介しますね!
そして、ターバンは、最高の敬意をもって扱われます。
そのため、ターバンを外すことには、非常に慎重なのです。
このターバン、どうやらインドの人は多くの人が身に着けているというイメージがあるようですが、宗教上の理由でターバンを身に着けるのは、シーク教の人たちだけです。
ベジタリアン
シーク教の人たちは、身体を「魂の入れもの」として、大切にすることが、義務だと考えています。
そのため、身体に一時的であっても、ダメージを与えるとみなされる食べものを、避けるようです。
洗礼を受けたシーク教徒は、ベジタリアン(菜食主義)です。
ただし、野菜や果物の「お食事の要件」は、特にありません。
卵、魚、動物由来の食材や動物性脂肪を使った調理済みの食材は、食べません。
乳製品は、動物性脂肪を含まないもの(つまり植物性)であれば、許容されます。
アルコール、タバコ、麻薬なども禁止されています。
洗礼を受けたシーク教徒がこれらの食べものや嗜好品を摂取したことが発覚した場合、コミュニティ全体の前で懺悔をしなければならないだけでなく、罪を洗い流すため、もう一度洗礼を受けなければならない、という恥辱が与えられます。
お肉のお作法
肉食の許容・禁止については、いまでも議論がされているようですが、一般的に洗礼前のシーク教徒の牛以外の肉食については、個人の選択が認められているようです。(牛は食べません。)
お肉に関する独自の要件はここからです。
■ クッタ肉 ■
シーク教では、イスラム教のハラルや、ユダヤ教のコーシャなど、宗教的儀式により屠殺された肉を食べてはいけません。
また、ゆっくり出血して(即死ではなく)屠殺された肉も食べてはいけません。
これら宗教的儀式で屠殺された肉や、素早く屠殺されずに提供される肉をクッタ肉(Kutha meat)といいます。
そのため、シーク教では、ハラル認証やコーシャ認証の肉を食べることが、禁止されているのです、
■ ジャッカ肉 ■
シーク教では、宗教的な儀式なしに、素早く殺した動物の肉、つまり、斧や剣などの一撃で、瞬時に頭を切り落として殺された動物の肉、つまり動物に対して、恐怖・苦痛と痛みを与えない肉を食べるのです。
イスラム教では、血を抜くための処理という意味と、頭を切り落とすことは残酷と考えることから、屠殺する動物の頭を切り落としてはいけませんが、シーク教では、逆にこれを残酷と考え、頭を落とさなければいけません。
屠殺方法ひとつとっても、そして動物への敬意の表し方ひとつとっても、宗教による見解の違いがあるのは、興味深いことです。
これをジャッカ肉(Jhatka meat)いいます。
そうはいっても、一般の人たちは、クッタ肉とジャッカ肉を見分けるのは、ほぼ不可能ですよね?
インド国内やイギリスでは、ジャッカ肉を提供するレストラン情報を提供するサイトや、ジャッカ肉のオンラインストアなどがあるようです。
私は、これまでシーク教の人たちと、海外ではご一緒したことはありますが、日本ではご一緒したことがないので、日本で、おもてなしをすることになった場合、どのように対応すると良いのか、まだ経験がありません。
だけど、こんな情報を見つけました!
日本に2つあるシーク教寺院
日本には約2,000人のシーク教の人たちが住んでいらっしゃるようで、日本にも2つだけですが、東京と神戸にシーク教寺院があります。
東京・文京区の寺院では、その人の国籍や信仰する宗教には関係なく、訪れた人に対して、お食事を無料(!)で提供してくださるようです。
いつな、あなたが日本でシーク教の人をおもてなしすることになった場合、(お近くであれば)こちらの寺院にお連れし、一緒に無料のお食事をいただきながら、ほかのシーク教の人たちとの交流も楽しむ☆な〜んてことも選択肢に入れてみてはいかがでしょう?
いかがでしたか?
お食事の要件というより、肉食の要件が、注意ポイントのシーク教。
そして、日本にある、誰にでも優しいシーク教寺院。
あなたも機会があれば、足を運んでみては、いかがでしょう?
ところで。
冒頭でも少し触れましたが、日本では
インドの人といえば、ターバン!
というイメージがあるようです。
シーク教に触れるせっかくの機会なので、次回は、ターバンについて、ご紹介しますね。
そして、あなたがゲストをおもてなしすることになったら、役に立つ・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめておきますね☆
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