【後編-5 ヒンドゥー教:理想の食材は”サトヴィック”】あなたの大切な人の「アイデンティティ」を守る「お食事の要件」
前回は、イスラム教を信仰する同僚が、そうとは知らずに豚肉を食べてしまい、本人が豚肉だと気づかないよう、周囲があれこれ気を遣いながらも温かく見守るお話をさせていただきました。
(そんな気遣いも、一瞬にして水の泡になった理由はこちら↓)
今回から、再び宗教のダイエタリー リクワイアメント、つまり「お食事の要件」のお話に戻ります。
これまで、これらの宗教ごとの「お食事の要件」を、紹介してきました。
その1:仏教・キリスト教
その2:ユダヤ教
その3:イスラム教
それぞれの宗教の「お食事の要件」、これでも、簡易的にお伝えしてはいるのですが、外せないポイントは、しっかりご紹介したいので、どうしても長くなってしまいますこと、ご容赦ください。
その代わり、できるだけ読みやすいように、心がけています。
それでも、もし分かりづらかったら、コメント欄から、ご質問ください。
今回は、ヒンドゥー教の「お食事の要件」のお話です。
● 宗教や宗派は、あまりに多岐にわたるため、一般的な概要のみを、解説しています。
● 信仰の深さには個人差がありますので、必ずしもこちらの内容通りとは限りません。そのため、あなたのゲストの「お食事の要件」は、可能であればご本人や、ご本人と親しい人に、直接確認することをおススメします。
● それぞれの宗教・宗派がどういうものか、については、リンクから参照いただけますが、正確性を保証するものではありませんので、ご興味があれば、ご自身で調べてみてくださいね!
いまは、ヒンドゥー教を信仰している人たちと関わりのないあなたも、いつかは、ヒンドゥー教を信仰する人たちと、ご飯を食べながらボリウッド映画の話で盛り上がるかも、もしかしたら、その人と恋に落ちるかも!など、楽しい妄想をしながら、読み進めていただければ、嬉しいです。
※雑談ネタとしても、どうぞ (^_-)-☆
さて、繰り返しになりますが
宗教への信仰心は、
その人のアイデンティティを形づくるもの。
そんな宗教に求められる「お食事の要件」を知っておくことは、大切なエチケット。【前編】では、このふたつの基本を、ご紹介していますので、あなたのお時間が許せば、こちらの記事も、ぜひ!
● 宗教にも「お食事の要件」があり、 それは宗教によって異なる
● 「クロス コンタミネーション」(交差汚染)にも注意!
(宗教でもクロス コンタミネーションには注意!「お食事の要件」【前編】はこちら↓)
ヒンドゥー教
米国ワシントンのシンクタンクである、ピュー研究所によると、世界のヒンドゥー教徒のほとんどがインドに住んでおり、インド国内のヒンドゥー教徒は約8割を超えるそうです。
ヒンドゥー教では、神の創造したものは、人間であろうと動物であろうと、尊敬と思いやりに値するものであると信じていることから、ベジタリアン(菜食主義)であり、動物の肉を食べないことを奨励しています。
とはいえ、すべてのヒンドゥー教の人たちが、ベジタリアンであるわけではなく、宗派に応じた「お食事の要件」があるようです。
たとえば、ヒンドゥー教の食事規定で厳しく禁止されている、牛肉や豚肉は食べないけれど、ほかの動物の肉は食べる、などです。
ヒンドゥー教では、適切な食事は、自然で健康的な生活を送り、精神的な発展のため、不可欠と考えられており、食べものが身体や精神に与える影響に基づいて、要件を3つに分けていますので、まずは、これらを紹介します。
ちょっと複雑ですが、マイペースでおつきあいください。
3つのお食事の要件
■ タマシック(Tamasic)■
タマシックとは、食べ残し、新鮮でないもの、腐りかけた(腐った)もの、熟しすぎたもの、その他の不純な食べもののことで、怒り、嫉妬、強欲などの、負の感情を生み出すと考えられています。
◆ タマシックな食べもの(一部)◆
生きもの:動物の肉、魚
穀類:精白された穀類
臭うもの:タマネギ、ニンニク、ネギ、ニラ、ドリアン
暗所・地下で育つもの:きのこ、ナス、イモ
何らしかの方法で保存されているもの:缶詰、冷凍食品、チーズ
アルコール:ウィスキーやラムなどの強いお酒
飲みもの:冷たすぎる飲みもの
その他:糖質やお菓子の過剰摂取、お酢、精白された砂糖、ひと晩以上置いた食べもの
■ ラジャシック(Rajasic)■
ラジャシックとは、心の中に強い感情や情熱、落ち着きのなさを生み出し、瞑想の妨げになる、と考えられている食べもののことです。
ラジャシックな食べものには、辛味、苦味、酸味のあるものが含まれています。
日常的に食べるのではなく、ときどきに抑えましょう、とされています。
◆ ラジャシックな食べもの(一部)◆
生きもの:赤身の肉、魚
消化しづらい豆:赤レンズ豆(ほかの豆に比べて消化しづらい)
辛みのある野菜:タマネギ、ニンニク、ネギ
スパイス:唐辛子、黒コショウ
酢っぱいもの:お酢、すっぱいリンゴ、ピクルス
カフェイン入りの飲みもの:コーヒー、紅茶、ソーダ、コーラ、エナジードリンクなど
アルコール:ワイン、アルコール飲料
その他:ブロッコリー、カリフラワー、ほうれん草などの野菜の過剰摂取、タバコ、チョコレート、ジャム
■サトヴィック(Sattvic)■
サトヴィックとは、胃に刺激を与えず、心を浄化する食べもののことで、冷静さと高貴さを保つ、理想的な食べものとされています。
◆ サトヴィックな食べもの (一部)◆
水、精白していない穀物、豆類、タマシック・ラジャシックではない野菜、果物、ナッツ類、未殺菌のノンホモ牛乳・乳製品(バター、クリーム、カッテージチーズ、ヨーグルトなど)、生の蜂蜜など
この3つの要件は、基本の基ですが、細かく覚えなられなくても大丈夫☆
考え方だけを頭の隅っこに置いておいていただけたらと思います。
さて、それぞれの食材を、もう少し詳しく、見ていきましょう。
食材による要件
■ 肉類 ■
牛への敬意は、ヒンドゥー教の信仰の一部です。
牛は、「母性を与える動物」として扱われ、家族の一員として考えられていることから、牛を食べません。
豚も食べませんが、すべての肉を食べることを禁止している一部の宗派以外は、宗教上、禁止されているわけではないようです。
そして、ヒンドゥー教の人たちの中でも、肉を食べる人もいて、多くの場合、食べるのは、鶏肉と羊肉、そしてヤギ肉のようです。
特に、カーストや社会的地位の高い人ほど、肉食を避ける傾向が強くなると聞いたこともありますが、私の周りのヒンドゥー教の人たちは、社会的地位の高い人が大半を占めるものの、肉食の人もいらっしゃいましたので、やはり個人差があるようです。
ちなみに、動物の肉や骨を使ったエキスやブイヨン、ゼラチン、豚の脂肪であるラード、牛の脂肪であるヘットを使うことは避けましょう。
ソーセージなどの加工肉は、鶏肉を使うことが多いようです。
■ 魚介類 ■
おなじく、動物性の食べものである、魚介類も、食べない人がいます。
魚介類を食べないヒンドゥー教の人に対して、日本で特に注意する必要があるのは、和食の「出汁」です。
出汁は、かつお節や煮干しなどを使ったお料理がかなり多いですし、たとえば、おにぎりの具である「おかか」も、かつお節です。
和食など、出汁を使ったお料理で、おもてなしをする場合は、昆布出汁を使うように配慮しましょう。
昆布出汁以外に、しいたけからも出汁は取れますが、きのこは、タマシックな食べ物に分類されているので、避けるのが無難です。
■ 卵 ■
卵も動物性の食べものなので、食べない、と言われているようですが、こちらも宗派によって異なるようです。
また、有精卵は食べず、無精卵のみを食べるという人もいます。
■ ナマもの ■
ナマものを食べる習慣がないので、火を通したものを提供しましょう。
断食
ヒンドゥー教でも断食は行いますが、義務ではなく、個人の意思で自由に行っているようです。
そのため、断食の厳格さは、個人や家族、地域社会、宗派などによって異なり、さまざまな断食の形があります。
たとえば、1日のうち、1回の食事を控えることも断食というようですし、食べる量を制限せずに、特定の食物を別の食べものに置き換えるだけで十分な場合もあるようです。
断食の時期も人それぞれ。
一般的に行われている断食の時期は、新月から数えて11日目のエカダシ(Ekadashi)と呼ばれるものですが、満月のプルニマ(Purnima)や、自分の好きな神さまや女神さまによって、断食をする日もあるようです。
「お食事の要件」まとめ
私たちも、ヒンドゥー教の人たちのおもてなしをするときには、これらの「お食事の要件」の基本を押さえていれば、十分楽しむことができますよ!
● その人にとっての「お食事の要件」を確認する
● 要件には、タマシック、ラジャシック、サトヴィックの3つがあり、サトヴィックの食材が理想とされている。
● 牛肉と豚肉、魚介類は基本食べない
・調味料、食品添加物や酵素、日本の出汁の中には、食べられない食材が含まれていることがあるため、注意!
● ナマものは食べないため、火を通して提供する
● とはいえ、信仰の厚さには、個人差があるため、可能な限り本人または本人をよく知る人にどの程度の「要件」なのかを確認する
● 食事は右手で食べる
● もちろん、クロス コンタミネーション(交差汚染)にも注意しましょう
● 調理だけではなく、調理の準備、調理、盛り付けに使用する道具が肉、魚、卵に接触しないように注意しましょう。
2021年は丑年。
牛を食する私たちですが、ヒンドゥー教の人たちの、牛への敬意とは違った視点で、牛のことを知る良い機会かも知れません。
健康や環境の視点から考える、食をテーマにした記事を投稿されている、食彩アドコムさんの、牛に関するお話をぜひ。
いかがでしたか?
またまた、記事がなが~くなってしまったのですが、まだ書き足りないことが・・。
そう。
ヒンドゥー教の人たちの
お食事のお作法です。
こちらは、次回にお話します!
そして、あなたがいつか、ゲストをおもてなしするときに、もしかしたら役に立つ日がくる・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめておきますね☆
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