【後編-8 ジャイナ教:まさかの根菜類NG!】あなたの大切な人の「アイデンティティ」を守る「お食事の要件」
前回は、世界5大宗教のひとつ、シーク教には「お食事の要件」より、「肉食の要件」がポイントですよ~☆と、お話しました。
そして、日本にも東京と神戸のシーク教寺院には、国籍や宗教を問わず、誰でも無料でお食事を提供してくれる、優しさあふれるコミュニティがあることについても、ご紹介しました。
(そんなやさしいシーク教寺院はこちら↓)
さて、宗教全体から見ると、信仰する人の数こそ、多くはありませんが、ジャイナ教を信仰する人たちも、インドが圧倒的に多い宗教です。
インド国内でジャイナ教を振興する人は、約450万人で、インドの人口13億人から見ると、約0.3%と、超少数派のジャイナ教。
そんな超少数派のジャイナ教ですが、あなたがもし、インドの人とビジネスや、プライベートでお食事を招待する場合、ひょっとして、ひょっとしたらジャイナ教の人もいるかも知れない・・ということも、頭の片隅に置いていただけたら、と思います。
たとえばユダヤ教のように、これまでご紹介してきた宗教の「お食事の要件」も、かなり厳格な要件を持っていましたが、ジャイナ教は、さらに上をいく厳格さを持っています。
(乳製品とお肉を一緒に食べてはダメ!ユダヤ教のお作法はこちら↓)
細かな要件を覚えなくとも、どのくらい厳格なのか、を知っておくだけでも、この記事がお役に立てるときがくる・・かも知れないと信じています (^_−)−☆
ということで、今回は、ジャイナ教の「お食事の要件」を紹介します。
● 宗教や宗派は、あまりに多岐にわたるため、一般的な概要のみを、解説しています。
● 信仰の深さには個人差がありますので、必ずしもこちらの内容通りとは限りません。そのため、あなたのゲストの「お食事の要件」は、可能であればご本人や、ご本人と親しい人に、直接確認することをおススメします。
● それぞれの宗教・宗派がどういうものか、については、リンクから参照いただけますが、正確性を保証するものではありませんので、ご興味があれば、ご自身で調べてみてくださいね!
さて、しつこいくらいの繰り返しになりますが
宗教への信仰心は、
その人のアイデンティティを形づくるもの。
そんな宗教に求められる「お食事の要件」を知っておくことは、大切なエチケット。
【前編】では、このふたつの基本を、ご紹介していますので、あなたのお時間が許せば、こちらの記事も、ぜひ!
● 宗教にも「お食事の要件」があり、 それは宗教によって異なる
● 「クロス コンタミネーション」(交差汚染)にも注意!
(宗教でもクロス コンタミネーションには注意!「お食事の要件」【前編】はこちら↓)
ジャイナ教
ジャイナ教(Jainism)は、インドで発祥し、非暴力、そしてすべての生きるもの(生物)への敬意という2つの基本原則に従っています。
ジャイナ教の人たちは、自己を律し、世俗的な誘惑を断つことを実践しなければなりません。
すべての生きるものへの敬意は、ムハパッティ(Muhapatti)という、このようなマスクに表れています。(身につけるのは全員ではなく、個人の信条によるようです。)
ソーシャルディスタンスだからマスクをしているのではなくて、息をするときや、会話をするときに、「誤って」虫などの小さな生きものを吸い込んで殺してしまわないようにするためです。
さて、ジャイナ教を信仰する人は、インドでは450万人と紹介しましたが、2020年現在、世界規模では600万人から700万人いるといわれています。
グローバル化に伴い、インドだけではなく、近隣諸国のスリランカや、米国、フィジー、オーストラリアなど、にも見られるようになりましたが、トップ4は次の国々です。
1位:インド
2位:アメリカ合衆国
3位:ケニア
4位:イギリス
すべてを生命を守るために
上にご紹介した通り、ジャイナ教では非暴力を実践し、すべての生命を守るための厳格な要件があります。
ですので、ご想像の通り、肉、魚、卵は食べません。
そして、ここから先は、これまでご紹介した宗教の「お食事の要件」にはなかったこと。
さっそく、見ていきましょう。
■ 根菜類 ■
はい。
まさかの根菜類NGです。
じゃがいも、タマネギ、ニンニク、ニンジンなどの根菜類は、食べません。
根を掘り起こすことで、植物自体が死んでしまうことや、これらを引っ張り上げる時点で、根菜類に傷がつく可能性があるからです。
根菜類は、それそのものが、芽を出しますよね?
その時点でこの根菜類そのものを「生命体」とみなします。
生命体なので、食べてはいけないのです。
■ 表面がビロード状の野菜 ■
カリフラワーやブロッコリーなど、表面がビロード状になっているものは、非常に小さな虫が、表面に付着している、と考えており、丁寧に洗っても完全に取り除けないため、食べません。
■ きのこ■
不衛生な環境で生育していると考えられるため、食べません。
■ 多種子 ■
イチジクやナスなどの多種子の野菜や果物も、種を殺すことになるため、食べません。
※ナスを切って少し経ったら浮き上がる、黒い点々、アレがナスの種です。
■ はちみつ ■
ミツバチを労働させている(つまり、労働させるいう暴力をふるっている)という考えのため、はちみつも食べません。
■ 発酵食品 ■
ひと晩保存された食品や発酵食品は、その日のうちに調理して食べる食品に比べ、菌や酵母などの微生物の濃度が高くなるため、食べません。
ヨーグルトは、その日に作ったホヤホヤな場合のみ食べます。
■ パン ■
パンを作るときには、イースト菌を使いますよね?
ジャイナ教では、パンはイースト菌を殺すと考えられているため、イースト菌などの酵母を使わないパンのみを食べます。
■ アルコール ■
アルコールは、判断力を鈍らせ、暴力につながると考えられているため、口にしません。
アルコールを摂取しない、もうひとつの理由はビール、ワインなど、アルコール類の多くは、発酵過程で発生する酵母や微生物を死滅させないためです。
ですので、日本酒も残念ながらNGです。
このように、すべての生物の非暴力の徹底は、ジャイナ教の最も重要なアイデンティティです。
厳格なラクト・ベジタリアン
ジャイナ教では、ラクト・ベジタリアン(乳菜食主義)が必須です。
とはいえ、、乳製品の生産には、牛に対する大きな暴力が伴うと解釈し、乳製品を口にしない、完全菜食主義の人もいます。
■ 飲料水 ■
ろ過されていない水を飲むことは、禁止されています。
蛇口の水を、伝統的な方法でろ過するようですが、人によっては、市販のミネラルウォーターやボトル入りの飲料水でもろ過をするようです。
■ 地上に生えている野菜 ■
地上に生えている野菜を食べても、植物を殺すことにはならない、と考えられています。
野菜を採取しても、元の野菜は生きている、そして、植物なので枯れることはありますが、それは季節・天候が理由で枯れるだけで、「人が直接殺す」ことにはならないからです。
夜食事をしてはならない?
ジャイナ教では、不注意によって生命に与えた害は、意図的な行為による害と同様に非難されます。
そのため、食事の準備や食事をする過程で、小さな昆虫や、小さな動物を傷つけないよう、細心の注意を払います。
厳格なジャイナ教の人は、食事は日没前に摂ります。
夜になると、ランプや火に引き寄せられてやってきた虫を、死なせてしまう可能性があるからです。
断食
ジャイナ教では、Paryushan(すみません、発音を上手くカタカナにできず…)という8日間連続の断食の期間があります。
断食は、聖なる日や、誕生日など、「特別な日」に行うようです。
誕生日に断食・・は私たちから見たら、ちょっと寂しい気がしますね・・。
恐らくですが、自分がこの世に生まれたことを、神様に感謝するために、断食をするのではないかな・・と思います。
また、モンスーンを断食の時期としています。
このように、一応、断食の時期はありますが、たとえば何か過ちを犯したときに、自己管理の意味も含めて断食することもあるようです。
断食は、魂に蓄積された穢れを落とし、浄化することが目的です。
日常で厳しい「お食事の要件」があるジャイナ教の人たち、断食の間は、さらに厳しくなります。
断食の期間は、お湯以外は口にしないので、ほぼ絶食といっていいかもしれません。
豪華なお料理
こんなにも厳格な「お食事の要件」を持つ、ジャイナ教。
さぞかし、質素なお食事をしていると想像しているのではないですか?
だけど
意外や意外!
ジャイナ教の人たちは、食材が限られるからこそ、食材やスパイスや調理法などを工夫して、お料理を楽しんでいるんです☆
カバー写真もジャイナ教のお料理ですが、こちらの写真(↓)もジャイナ教のレシピによってつくられた、お料理の数々。
どれも、とっても美味しそう!
いかがでしたか?
現代社会において、ジャイナ教の戒律を完璧に守ることは、かなり厳しいのが実情ですが、僧侶の方などは、それでも実践されているようです。
僧侶でないジャイナ教を信仰している人たちは、たとえば根菜類は食べない、など守ることのできる範囲で実践しているようです。
お食事の要件が、た~っくさんあるジャイナ教。
万が一の「事故」も想定すると、こちらからお食事をご招待するのは、かなりハードルが高いかも・・。
だけど、それなら逆に、私たちからジャイナ教のお料理の世界に飛び込んでみる・・これならできそうです。
思い切って飛び込んでみたら、新たな気づきがあるかも知れません (^_-)-☆
次回は、「お食事の要件」で登場する最後の宗教です。
最終回は、とっておき☆
さらに厳しい(!)「要件」を持つ、ラスタファリアニズムについて、ご紹介します。
そして、あなたがゲストをおもてなしすることになったら、役に立つ・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめておきますね☆
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