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抗うつ剤服用者に贈る『禁煙体験記』

<目次>
【はじめに】
【愛煙家になるまで】
【抗うつ剤の副作用と離脱症状】
【おわりに】
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【はじめに】
 これは適応障害を患っている時に禁煙にあっさり成功してしまった実体験を綴ったnoteである。再現性は甚だ怪しい体験であり、相応の自分を律する心を持っていないと同じことをするのは困難な可能性が高い。だが心療内科の待合室がいつ行っても混み合っている昨今、当時の私と同じまたは近しい状況に置かれている喫煙者(又は愛煙家)の方は必ずいるものという確信もある。これはそんな心療内科に通い、抗うつ剤の副作用と戦っている喫煙者諸君に送る体験記である。

【愛煙家になるまで】
 禁煙を思いついたのはほとんど思い付きに近かった。当時の私は、心理カウンセラーの先生から禁煙をずっと勧められていた。しかしアルコールとニコチンとカフェインがガソリンという会社員である。カウンセラーの先生の指導に従わないどころか喫煙者ではなく愛煙家を名乗っていた程だ。
 といっても20代の時のようにPEACEを一日二箱のペースで吸えるわけでもなく、KENT1mgショートを一日一箱、お酒を飲んだ日は一箱半〜二箱吸うくらいの喫煙者だった。

 タバコは26歳から吸い始めた。きっかけは今では考えられないくらいの当時の長時間労働の中で、一日の集中力の保ち方がうまくできずタバコに頼ったところからだった。
 20代中盤の頃はメンソールのタバコを吸っていた。しかし、30代に入ってからはスモーキーなウィスキーを覚えた。お酒の風味の邪魔になるメンソールなどもっての他だといって好きなウィスキーの銘柄に合わせてタバコの銘柄を変えていた程にタバコが好きだった。あくまでお酒と共に合わせることを第一義とした「愛煙家」を自称していた。

 30代前半で一時期”願掛け”目的で10ヶ月ほどタバコをやめていた時期がある。甘い物断ちと同じで一番好きなものとしてニコチンを断っていた。10ヶ月というのは願掛けの目標が達成できてタバコを吸わない理由がなくなったことによって再開したタイミングにあたる。
 ニコチン断ちが開けると以前のように重いタバコが吸えなくなっていた。その頃から軽い1mgの銘柄を吸うようになる。

【抗うつ剤の副作用と離脱症状】
 時は断ち、アラフォーと呼ばれる歳にもなって仕事の責任も重くなる年齢となった時、適応障害の診断を受ける体の壊し方をした。その時通っていた心療内科があまり良くないところであった。処方されている薬の副作用が激しく、仕事の最中に副作用からくる吐き気でトイレに駆け込んでしまうことも度々といった酷さだ。これは後に全く的外れな処方だったことが半年以上経ってから判明するのだが、服用当時はそんなことは露知らず、担当医を信じて副作用と戦いながら服用を続けていた。
 当時のメモをみると出ている副作用が次ように記されている。「発汗・脱力・悪感・震え・吐き気・不安感・強迫観念・自殺願望」もはや使用している抗うつ剤の説明書の副作用の表記欄に書かれている項目の半分以上を網羅しているかのごとくといった副作用のフルコースである。これらの副作用と戦いながらも周囲に悟られないようにと平然を装いながら仕事を続けていた。

 そのような日々の副作用との戦いの中で自分の体調を少しでもコントロール下に取り戻すには生活習慣の改善が必要である、という考えに至るのは最早自然の流れだった。タバコの他にも、アルコールと糖質が特に酷かった。
 週5〜6日の飲酒、深夜までの深酒も度々。それに加えて糖質過多な食習慣は一日に缶コーヒー5、6本と清涼飲料水のペットボトルを2、3本は飲んでいた。タバコと同時にその二つの生活習慣にも同時に着手した。

 生活習慣の改善をしようと思いついた日、これを最後のタバコに…とすら言わず持っていたタバコは全て残っている分も捨てた。
 思い立ってからは最後の1本すら吸わないで全て手元のタバコを処分するのはひとつのコツかもしれない。何事も思いついてから行動するまでの時間は短いほど実現性は高まる。最後の1本すらカットすれば行動までの時間は極論0秒まで縮められるというものだ。

 当然ながらニコチンの離脱症状はネットに書いてあるペースで定期的にやってきた。人並みの生理反応である。ではなぜ、禁煙外来も使わずに思いついた瞬間から一度もタバコを吸わずに禁煙を成功してしまったのか?その鍵はきっかけにもなった抗うつ剤の副作用との戦いにあった。

 抗うつ剤の副作用はとにかく想像を絶するものだ。副作用がフルコースでこれでもかと出ていてそれと戦っているときのニコチンの離脱症状はもはや誤差でしかなかったのだ。ニコチンの離脱症状なぞRPGゲームに例えるならドラゴン的なボス敵と戦っている時に戦場に迷い込んできたスライム程度の敵だった。そもそもニコチンの離脱期に現れる身体の変化が薬の副作用としてでっぱなしなのだ。今出ている脂汗はニコチンから来るものなのか抗うつ剤からくるものなのかなんてわかったもんじゃない。

 つまり、薬の副作用と戦っているついでにニコチンの離脱症状の発症を被せてあっさり有耶無耶にしながら禁煙を成功させてしまったのだ。結局副作用との戦いが終わる頃には離脱症状も末期で、十分自分で制御可能な度合いにまで緩和されてしまっていた。

 以来2年間、1本のタバコも吸ってはいない。年に一度の頻度でタバコを吸っている夢を見るがせいぜいその程度だ。例外としてジブリ映画の風立ちぬを見た後は少しタバコを吸いたくなったが、それ以外の日常生活では一緒に飲んでいる友人が横でタバコをいくら吸っていようと微塵も吸いたい気持ちは湧き上がってこない。
 余談だが同時に緩くだが飲酒制限、糖質制限も行っていたため、禁煙による体重の増加は3kgに留まった。禁煙・飲酒制限・糖質制限は3ヶ月後の血液検査に数値でも改善が現れ、体感でもかなり体が軽くなり疲れやすかったり、眠気やだるさに常に襲われていたのが嘘だったように日頃の体調がスッキリするような変化が起きた。

【さいごに】
 と、まあ、このような禁煙成功体験談である。禁煙がしたい!という方には全く再現性に欠ける役に立たない話で大変申し訳ない。タバコを止めるために何らかの副作用が激しい薬を服用するわけにもいかないであろう。万人に真似できるわけではない禁煙体験である。

 しかし、世の中に、noteの読者に、何人いるかわからないが、少なからずいるであろう抗うつ剤の副作用と戦っている喫煙者諸君には是非今がチャンスだと伝えたい。私がそうであったように、皆さんが今戦っている相手に比べたらニコチンの離脱症状などそれこそスライムだ。皆さんは薬の副作用と戦っている時点でスライムなど一蹴してしまうだけのレベルの戦士であることは間違いない。今なら、禁煙の苦労というものを全く意識することなくタバコをやめられる可能性が非常に高い。サンプルは私自身である。是非ともこの機会を禁煙のチャンスと受け取って活かしてみることをお勧めしたい。

 座右の銘「転んでもただでは起きない」という筆者からの皆さんへのメッセージは以上である。同じ苦境を戦い抜いている同志諸君の健闘を祈る。

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