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【溺れる君】悪魔の目

一番最初

 「海王星なんてどう? 若いんだから青は映えると思うわ」

「それでいうなら水星やろ。銀色の髪は目立つし」

「おじいさんみたいじゃないの」

「まぁ、そうも見えるか」

ポンポンとつづく会話にいいなとおもうぼく。

両親のナカがいいと、子どももジユウなのかな。

「きんせい、いいんじゃない? かみがきらきらしたらせいかくもあかるくなるかも」

「それなら、月もよろしいかと。わたくしらを静かに見守るという意味と太陽と対になるかと思うのでございます」

マットをよく見ると、いろんな色のまるがアカいのをまんなかにしてちらばっていた。

これがうちゅうなんだ。

まんなかにあるのが太陽
そのとなりにあるギン色が水星
そのとなりのキン色が金星
そのとなりのあおとミドリが地球
その2つとなりのオレンジ色が木星
その2つとなりのミドリ色が天王星
そのとなりのあお色が海王星
たしかに水金地火木土天海だ。

そして、はんたいの方にキラキラしているのが月なんだ。


 「……楽しいね」

ボソッと言ったようちゃんにうんと小さく言った。

 
 僕は朝日家の四男だから……カレらに見合うならどうなってもいい。

もしかしたら、ぜんぜんちがうジブンになるのかもしれない。
 

 "いつまでもそばにいたい"

"運命をかんじてるよ"

はずかしいくらいまっすぐなことばをあまくて低い声でうたうようちゃん。

ヒョウジョウがないからクールなインショウをうけるのに、ぼくの手をにぎる手は強くてやわらかいんだ。

 
 人生で一番おいしいごはんを食べたあと、ようちゃんとソトにでたぼく。

うすいあお色の空で太陽が見えなかったから、朝が早いんだとおもったんだ。

そうすると、ようちゃんもたいへんだし、髪をきる人にもメイワクだっておもっているんだけど。

でも、ようちゃんはキゲンよさそうにうたっているから、言えないし。


 「そんなに見つめられたら、穴開いちゃうよ」

ふふっと笑う声が聞こえて、ぼくはハッとする。

口のはしを上げるようちゃんが目をほそめていたから、カッコよすぎでドキドキが止まらなくなった。

「なんでそんな蕩けた顔をしているの? 普通に見てるだけだよ?」

あまく低い声で言いながら手をすべらせるから、へんな気持ちも上がってくる。

「感度良すぎ……アレしなくてもいいね」

「アレって……?」

ぼくはわからなくて、あつい息をはくように言うと、ようちゃんは左手を左の目に当ててすぐにはなした。

すると、ちゃいろだった目がアカくなっていた。

それはぼくがイシキがなくなるまえに見たものといっしょだったんだ。

「悪魔の目……人間なら3秒見つめるだけで心臓発作で死に至らせるほどの最強最悪の代物さ」

そう言ってちゃいろい左の目といっしょにほそめるようちゃん。

でももし、どっちの目もアカくて3秒見つめられていたら、もう死んでるんだなぁってのんきに考えるぼく。

「全然怖くないよ、僕は」

ぼくはむしろアカい目が好きだから手をのばすと、ようちゃんはその手の甲にキスしてくれた。

「俺の方が殺されそう……ゆーたんのかわいさ、殺人級だから」

ヤバいよ、ゆーたん……なんていつの間にかちゃいろにもどった右の目をパチンとしてつぶやくから、ぼくはくすぐったくなる。

だれもいないときでよかったって、おもえたんだ。


 「実は今、お昼なんだよ」

ぼくはびっくりして目を大きくひらくと、ようちゃんはむふっと笑う。

「ここはゆーたんがいた所から8時間の時差があるから、寝過ぎではないよ」

あとはここ、今の時期は極夜(きょくや)だし……というようちゃんのことばのイミがわからず、くびをかしげた。

「太陽が沈むから日中でも薄暗いっていう現象のこと。冬至っていう日の前後2ヶ月に起こるんだ」

これから勉強しようねとやさしく言ってくれるようちゃん。

ぼくのことをぜんぜんバカにしないんだ。

「でも気温はちょうどいいし、ルールもないし……自由な街なんだよ、文潟(もんがた)は」

きれいなほほえみを見せてぼくを見るようちゃん。


   きみのおかげでぼくはジユウだよ

そうおもって、ぼくもほほえんだんだ。

続き




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