見出し画像

A型の大動脈解離には、ステントグラフト治療が有効!人工血管を入れて新たな治療法の確立へ。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

大動脈解離とは、老化や動脈硬化などが引き金で大動脈の内膜の機能が衰え、血圧の負荷や身体の動きで裂ける病気です。ある日突然、背中や胸などに身体中に激痛が走ります。ヒトの血管の構造は内膜、中膜、外膜の三層から成り、内膜に亀裂が入ってしまうと2つに血流が分かれ、全身に上手く血流が循環しなくなります。

その大動脈解離の1つである「A型解離」で、有効な治療法とされているのが、「ステントグラフト」です。

心臓から遠い場所で大動脈解離が発生した場合は、治療薬だけで治療するより、血管内に「ステントグラフト」という器具を入れて人工血管を補強する方が余命が長いことが明らかになりました。

2020年から診療ガイドラインでもこの「ステントグラフト」が推奨されており、専門医は「これから先の大動脈解離のリスクを下げる選択肢があることを理解しておいて欲しいです」と語ります。

今回は「A型解離」である大動脈解離の新たな治療法、「ステントグラフト」を特集します。

大動脈解離の新たな治療法、「ステントグラフト」とは?

「大動脈解離を発症してすぐの頃に男性に『ステントグラフト』を実施していれば、手術を2回することはなかったでしょう」。愛知県名古屋市にある名古屋大学病院の血管外科教授の男性は、4年前に大動脈を人工血管に置き換える再手術をした60代の大動脈解離の男性患者さんの診療記録を見返しながら、悔しさが滲みました。

40代後半で男性患者さんは大動脈解離を発症し、入院しました。血圧を下げる治療薬などを投与しましたが、段々と大動脈解離の症状は進行の意図を辿り、50代前半にも大動脈解離で人工血管を入れる手術を受けていました。再手術では胸腹部の大動脈の多くを人工血管に置き換える必要で、手術時間は11時間にも達しました。

さらに高齢なら身体が手術に耐えられなかった可能性もあるとし、愛知県名古屋市にある名古屋大学病院の血管外科教授の男性は「難手術になる前に大動脈解離を予防することが大事です」と主張します。

心臓を出てすぐの上行(じょうこう)大動脈で発症してしまう「A型解離」のケースでは、48時間以内に血管が破裂してしまうことが最多で、緊急の開胸手術が必要となります。

その反面、心臓から少し離れたところにある下行(かこう)大動脈で発症してしまう「B型解離」では、すぐさま患部が破裂することはほとんどなく、血行障害などの合併症がなければ、痛み止めや降圧薬を投与して経過観察をすることがほとんどです。ですが、数ヵ月から数年かけて患部がどんどん瘤化ささ、大きな手術が必要になるケースも多いといいます。

その大動脈解離の予防にも有効な手段とされるのが「ステントグラフト」内挿術です。化学繊維で作られた人工血管に金属製のバネの様な骨組みを縫い付けた器具を、カテーテルを使用して血管の中に入れ、患部に埋め込みます。脚の付け根を数cm切開すれば「ステントグラフト」を実施することで、身体への負担が少ないといいます。

愛知県名古屋市にある名古屋大学病院の血管外科教授の男性は「大動脈解離を発症してから2週間後から1年以内に『ステントグラフト』を実施すれば、その後の大動脈解離の進行をかなリ抑制できます」と述べました。

参考:ステントグラフト治療 人工血管を挿入 患部を補強 大動脈解離の予後改善も 東京新聞(2023年)

ここ数年、その「ステントグラフト」の有効性を裏付ける報告が相次いでされています。中でも大きな報告が、2013年に国際学術誌で掲載されたヨーロッパからの研究結果です。2003〜2005年に「B型解離」を発症した患者さん140人の予後を調査したもので、治療薬のみで大動脈解離を治療した人の発症して5年後の亡くなった確率は19%でしたが、「ステントグラフト」を実施した人では6.9%に留まりました。

この報告を受けて日本の診療ガイドラインも改定され、悪化が予見できる大動脈解離は早期に「ステントグラフト」を入れることが推奨される様になりました。

「A型解離」には有効。では「B型解離」にはどれ位該当?

ですが、「B型解離」を発症する人は毎年10万人に4〜6人の割合で、「ステントグラフト」手術を実施できる心臓外科や血管外科も少ないです。患部の瘤化や合併症がないケースでは「ステントグラフト」の対象と認識されづらい場合もあって、投薬治療を続ける患者さんが少なくないといいます。

「『ステントグラフト』がなかなか大動脈解離の治療法の選択肢に入らないのが現在の状況です」と愛知県名古屋市にある名古屋大学病院の血管外科教授の男性は話し、「大動脈解離で大変な状況になる人を1人でも少なくするためには、まず新たな治療法『ステントグラフト』を広く認知して頂くことが必要となります。もし大動脈解離を発症してしまった場合は、主治医にひと言、『自分にはステントグラフトの手術が合うか』と質問する意識を持って頂きたいです」と強調しています。

「A型解離」には確かな有効性がありましたが、「B型解離」にはまだまだ難しいと分かりました。

それでもとても大変な大動脈解離という病気に、有効性のある治療法があるということは良いことだと思います。幅広く「ステントグラフト」の浸透が、求められますね。


この記事が参加している募集

#ライターの仕事

7,354件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?