金メダルを獲った「ゴールボール」男子。一人の選手が、出場するまでの道のり。
今日は、翼祈(たすき)です。
この記事のテーマは「ゴールボール」なのですが、まずその説明をしたいと思います。
「ゴールボール」とは、視覚に障害を抱えている人を対象に考えられた球技で、パラリンピック特有の種目です。
1チーム3人の選手が、鈴の入ったボールを転がす様に投げ合い、味方ゴールを守りながら、相手ゴールにボールを入れて得点を競う競技となります。
ボールがゴールに入ると1点が入ります。最後に得点の多い方が勝利です。選手全員が視力や視野といった障害の程度の差が出ないようにアイシェード(目隠し)を着けます。
試合時間は、前半・後半各12分間。守備側の選手がボールに触れてから、10秒以内に投げ返し、センターラインを越えなければ反則になります。
「ゴールボール」は、攻撃では起き上がって投球し、守備では時速50kmにもなるボールを寝っ転がって万歳の格好でゴールを阻みます。寝て起きてを繰り返し、全身にボクシングのパンチを受けることにも似ていることで、「静寂の中の格闘技」とも呼ばれるほどです。
という様なルールがあるわけです。この記事では、パラリンピックに選ばれた、「ゴールボール」の一人の選手についての記事となります。
目の難病で甲子園の夢を断たれた元高校球児が、2024年8月28日から開幕するパリパラリンピックで世界一を目指します。「ゴールボール」で初出場する鳥居陽生選手は、大舞台を目前に控え、「限界を超えるくらいの全力投球を見せたいです」と張り切っていました。
今回は、パリパランピックで世界一になりましたが、「ゴールボール」の裏話として、この話題をお届けします。
鳥居選手が、「ゴールボール」を始めたきっかけ
鳥居選手は、神奈川県小田原市出身で、幼稚園に通う時には野球を始め、小学6年生で110kmの速球を投げ、周りの人を驚かせました。中学を卒業した後は志望通り、地元の強豪・相洋高校に進学しました。
入学した2020年の夏、甲子園大会はコロナ禍で中止となりましたが、相洋高校は神奈川県の独自大会で準優勝しました。2020年秋に新しいチームが発足すると、鳥居選手も期待の投手として、背番号「22」を与えられました。
鳥居選手の目の異変はその後すぐに起きました。捕手のサインがぼやけ、キャッチボールの球が見えにくくなりました。2021年1月、医師から告げられた病名は、視野欠損などを起こす「レーベル遺伝性視神経症」で、国指定の難病でした。
数日後、野球部の監督室を訪れ、退部届けを出そうとしましたが、監督の男性は意外な答えでした。「鳥居が頑張っている姿にチームは勇気付けられます。3年間、共に頑張りましょう」。チームに残れることが嬉しく、ボール拾いやグラウンド整備など、率先して裏方仕事に励みました。
転機は2年の夏。野球部のトレーナーから、「ゴールボール」という視覚に障害を抱えている人たちの競技があることを教わりました。体験会に参加してみると、声を掛け合いながら、ダイナミックな投球に心を1つにしてプレーする選手たちの姿に心惹かれました。
「やるからには日本代表に入り、パラリンピックに出場を」と「ゴールボール」の猛練習を開始し、野球部のウェートトレーニングで、重いボールを自在に扱える様に体幹を鍛えました。
投手時代の経験は「ゴールボール」にも役立ち、体を速くひねって、力強い球を投げられる様になりました。高校を卒業した後も、鍼灸などの資格を目指し、国立障害者リハビリテーションセンターで学びながら「ゴールボール」の練習を積み重ね、2023年秋、日本代表に選ばれました。
参考:難病で「甲子園」断たれた元球児、パリパラリンピック「金」目指す…「ゴールボールで全力投球」 読売新聞(2024年)
「ゴールボール」の男子日本代表は、前回の2021年東京大会に開催国枠で初出場し、5位と健闘しました。パリ大会ではメダル獲得が目標です。
鳥居さんが入部していた野球部の2学年下の後輩で、2024年夏の県大会でエースナンバーを背負った投手の男の子は、「どんな状況でも諦めない鳥居さんの姿を今も励みにしています。世界の舞台で活躍して頂きたいです」とエールを送りました。
「野球部の恩師や仲間のお陰で前を向けました。恩返しは、金メダルを獲ること以外にありません」。磨き上げてきた攻めの投球で、世界を驚かせたいと闘志を燃やしています。
改めて、
2024年9月6日に行われたパリパラリンピックの「ゴールボール」の男子決勝で、日本は延長の末、4対3でウクライナに競り勝ち、この種目で初めてのメダルとなる金メダルを獲得しました。
開催国枠で初出場した東京パラリンピックから僅か3年で、「ゴールボール」男子の“初のメダルは金メダル”で、世界頂点になりました。
パリパラリンピックでの大躍進を支えたのは、筋力強化と相手国の徹底したデータ分析でした。
決勝ではディフェンスの堅いウクライナを相手に筋力トレーニングで培った、鋭いボールを次々と繰り出して宮食選手と金子選手が得点を重ねました。
延長戦にもつれ込んだ試合は、前半1分半ほどで佐野優人選手が決勝打となるゴールを決めました。
「ゴールボール」男子は、東京パラリンピックでは、開催国枠で初出場ながら予選リーグをグループ首位で通過し、決勝トーナメント進出し、準々決勝で敗退しました。
そのことで、今回の金メダルは悲願のメダルでした。
詳しい内容は、下記の記事を読んで頂きたいと思います。↓
パリパラ ゴールボール男子 日本が金 この種目で初のメダル NHK NEWS WEB(2024年)
確か東京パラリンピックの前だったと思いますが、開催前の特番で、アイシェード(目隠し)を着けた出演者が、鈴の音に合わせて、動かないといけないことで、耳を研ぎ積ませても、かなり難しいと体験している話がありました。
私は音に敏感ではありますが、かなりトロいので、自転車が前から来ている時、自転車が避けようとしていう方向に、同じ動きをして、同じ位置に動く癖があります。
前回のパラリンピックが初出場で、次の大会のパリで初のメダル、しかも金メダルを獲得したのは、相当選手の皆さんが努力されたでしょうし、元々実力もかなりあったと思います。
改めて、「ゴールボール」の選手の皆さん、金メダル、おめでとうございます。
参考サイト
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