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カフェラテと就活。

緑色の小さなトレイの上に、少しクシャッとなったレシート。PRONTOのカフェラテをいただく。Mサイズ374円。
絶対に書かなければいけないエントリーシートがあるのだが、iPadの画面は真っ暗。エントリーシートを書く気になれず、iPhoneに手を伸ばした。

高架下のカフェなので、時々テーブルが震えている。

先程、面接を受けてきた。オンライン面接の経験は何度かあるが、対面での面接は初めてだった。コロナ対策のために十分な距離が取られていて、アクリル板が間にあった。
遠くにいるフィルター越しの面接官は、“リアルZOOM”という言葉がピッタリだった。
物理的距離は、心理的距離を生みやすい。
気がつけば身振り手振り多めで話していた。

就活が“全て”であるわけもなく、時代の変化を考えると働き方が多様化しているのは言うまでもない。
独立している友人や、独立予定の先輩の話を聞いていると、色々考えさせられて面白い。
“面白い”の方向へ思いっきり舵を取った時に、どんな景色が見えるのか自分でも試したくなったりする。たぶんこの悩みは続く。

顔を上げると、壁にお酒のメニューが貼られていた。
ここのカフェはお酒も頼めるのか。
コーヒーとお酒って僕が思うに、真逆の存在だ。
スヌーピーと鬼滅の刃くらい真逆。
相槌を打つように、またテーブルが震えた。

「75歳くらいまでみんなが働いている世の中になる。」
少し前、誰かがそんなことを言っていた。
平均寿命は順調に伸びていて、人生100年時代だ。僕らの世代は本当にそうなると思う。
そこで僕の出した結論が前々回のエッセイだったりする。

カフェラテを半分くらい飲んだ。
薄暗い店内は、カフェなのかバーなのか分からないような雰囲気だ。
目の前に貼られているお酒のメニューを見ると、誰かを誘って飲みに行きたくなったが、面接の疲れを今日は家でゆっくり取ることにしよう。
「明日、晩ご飯行こう。」
気がつけば友人にLINEを送っていた。

絶対に書かなければいけないエントリーシートは後回しにすることにした。というか、絶対に書かなければいけないエントリーシートって何だよ。
緑色の小さなトレイが、また震えている。
真っ暗なiPadに映った自分と目が合った。
白シャツにネクタイをしっかり締めて、黒ジャケット。「The 就活生」がそこにはいた。

先程、“リアルZOOM”を終えてから控え室に戻った時、人事部の人に「顔が赤いですよ、緊張しましたか?」と言われた。
こそっとiPhoneに映る自分を見ると、たしかに少しだけお酒を飲んだような赤さだった。
自分の想いを語るのは、どんな時でも気恥ずさしさがある。
面接を本音で受けていると「あ、伝わってるな」と思う瞬間がある。その時に僕は嬉しくなる。
今日の面接もそうだったけれど、30分くらいの個人面接の方が僕は好きだ。
そんなこんなで、就活を続ける。
またテーブルが震えたが、もう気にならなくなった。
カフェラテがぬるくなっている。


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