E.T.もしくは、ふーさんとの出会い。
ふーさんです。ぼくが命名しました。(「がふ」という方から買ったので、ふーさんです。)可動部位が2箇所あります。古道具らしいです。ところどころに、ちっちゃな穴が空いています。もとは、マリオネットだったのかもしれません。
ふーさんは、昨日訪れた展示会にいました。古道具に陶器、彫刻もありました。「どうぞ、さわってください」とスタッフさんに言われたので、ぺたぺた触って巡りました。その中に、ふーさんがいました。爪とおぼしきところに塗ってある赤色が、なんだかかわいらしく、なにより手や肩(とおぼしきところ)が可動するので、ぼくはすっかり惹かれてしまいました。
レジに持って行ったとき、ふーさんは古道具の一つだと聞きました。つまるところ、この展示会に合わせて作られたものではないのです。最初に言った通り、ところどころ穴も空いており、なにかの一部だったと思わせる様子です。
ふーさんの他の部分は、その場にはありませんでした。でも、それでよかったです。ぼくがふーさんと名前を付けたのは、ふーさんだったもともとのなにかではありません。ぼくが出会った部位が、ふーさんの全てです。ぼくは、自分の腕の一部のように、ふーさんを持ち帰りました。帰宅すると、うちで生活しているぬいぐるみ達に挨拶しました。
その夜は、通っている古本屋で、詩歌句を詠む催しがありました。ぼくは、パートナーと一緒に参加する予定でした。ですが、せっかくなので、ふーさんも連れて行くことにしました。
自己紹介のときに、ふーさんのことも紹介しました。ぼくがふーさんをあんまり握っているので、他の参加者さんはふーさんに握手を求めてくれました。帰り際も、みなさん握手してくれました。顔のないふーさんは、なんだかとても満足しているように見えました。
ふーさんが何者なのか(何者だったのか)それは、どうでもいいことです。それよりも、ふーさんに出会えたことの方が大切です。昨日のように、ぼくはこれから、ふーさんをいろんなところへ連れて行くことになるでしょう。
展示会に行かなければ、なかった出会い。たくさんの偶然の産物に、ぼくは支えられています。物も、人も。大切な人達がいます。大切な物達がいます。ふーさんを抱えながら、そんな幸福を考えました。
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