『はちみつ』、もしくは『はちみち』戦争
1/24。
6:00起床。
天気は曇り。
*
『はちみつ』と打とうとしたら、『はちみち』になってしまった。
それは、どうでもいいんだけど。
『はちみつ』のキャンディを舐めている今現在。
だんだん、腹具合が悪くなってきた。
なぜだ。
『はちみつ』って、腹に優しいものじゃないのか。
しかも、毎朝365日舐めているじゃないか。
『はちみつ』のキャンディと白湯が、日記を書くときのマストアイテムだというのに。
口の中で溶け切ってしまった『はちみつ』を、白湯で洗い流す。
一体なぜ……。
そこで、はたと気が付く。
そうだ、『はちみつ』で腹を壊すはずがない。
先ほど体内に取り込んだのは、『はちみち』だったに違いない。
包みから取り出したときは、たしかに『はちみつ』だった。
しかし日記の冒頭で、僕は『はちみつ』を『はちみち』と打ち間違えた。
その瞬間、実物の『はちみつ』も『はちみち』と化してしまったんだろう。
すなわち、自業自得。
「もの書きにとって、誤字(もしくは脱字)がいかに危ういものか、これでわかってもらえただろう」
と、『はちみち』は申し上げており。
この野郎、腹具合と引き換えに、余計なことをしやがって。
と、僕は拳を振り上げたいところだが、腹をあんまり刺激したくないので、しぶしぶ大人しくしている。
白湯で胃液もだいぶ薄まってくれたと思うんだが。胃液をどうこうすれば……とか、そういう問題じゃないのか。
『はちみつ』と『はちみち』。
たかが一文字、されど一文字。
その一文字は、死より重く……いや、重くないな。腹具合で済んでいるんだから。
「刑は軽くしておきました」
うるせえ。
『はちみち』が、まったく黙ってくれない。
僕は泣く泣く、日記の締めくくりを考える。
『はちみち』に、さっさと別れを告げなければいけない。
『はちみち』と打ち過ぎて、予測変換に『はちみち』が出現しているんだから。(しかも、『はちみつ』より上の方に。)
「もう二度とお目にかかることはないでしょう……だと、いいですね」
ええ、本当に。
平穏を取り戻しつつある腹を撫でながら、僕は『はちみち』を睨む。
「そんな顔しないでください。そもそもこの事態は、あなたが誤字をしたからで……」
そうかい、そうかい。
では、もう二度とお目にかかりません。
僕は、残りの白湯を飲み干した。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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