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まともじゃないぼくは、もしかしたら、いつか

妙な夢を見た。存在しない恩師が、ぼくのせいで死んでしまうところだった。ぼくはうちに帰りたいのに(そして、まだ明るいのに)バスも電車もなくなり、帰る手段を失い、それでもなお、なにか忘れ物がある気がして、その場から動けないのだった。


体がべたべたする。寒い。昨日。昨日は。なにも思い出したくない。嫌なことは一つもなかった。そのはずだ。でも、ぼくは。いい子のフリをするのに疲れたぼくは。義理の両親の前で、にこにこ愛想を振りまいて。実の両親の話を振られれば、「ちゃんと仲良くしている」とまったくのウソをついて。あたたかな義実家を訪れる度、実家が、ぼくが、まともじゃなかったことを思い知る。嫌だ嫌だ嫌だ。


ぼくは、まともじゃない。ことを、お義父さんもお義母さんも知らない。障害のことは知っている。らしい。今は仕事をしていないことも。(パートナーがぼくに無許可で教えたので、そのときはちょっと揉めた。)もしも。ぼくが実の両親とほぼ絶縁していることを知ったら、どう思うんだろう。いつも快活に笑っている二人でも、一気に顔を歪めるだろうか。二人とも、ぼくの両親の「良いところ」しか見てないもんな。特に父親は、外面はいいから。


ごまかし続けて、もうすぐ半年になる。つまり、両親と一切連絡を取らなくなって半年。不和になったのは、さらに前。もう、なにも考えたくない。そろそろ、ごまかしはきかなくなるだろう。親同士は時々連絡を取り合っているみたいだから。絶縁状態にあることは知らされていないみたいだけど。もし明らかになったら、ぼくだけじゃなく、うちの両親も招集される事態に発展するんだろうか。二度と会いたくないのに。そんなことになれば。ぼくは。


ぼくが夢の中でころしてしまった存在しない恩師(感じのいいおばあさんだった)は、誰なんだろう。あの人は、現実では誰なの? ぼくは、その人をいつかころしてしまうの? いや、いや。さすがにそんなことは。と、はっきり言えないぼくだ。夢の中では、そのおばあさんには好感を持っていた。でも、死なせてしまった。頭がおかしくなりそうだった。ぼくは、やっぱりまともじゃない。生まれつきなのか。環境のせいなのか。両方なのか。もう何もわからない。

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