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ぼくの記憶は、本に紐付いている。

檸檬の匂いのするお冷だった。たまにある。ぼくは、大学構内にあった生協のカフェを思い出す。お冷のピッチャーに、くし形に切られた檸檬が入っていた。昨日行った喫茶には、ピッチャーはなかったし、檸檬からこぼれた種も入っていなかったけど。檸檬の匂いがすると、いつも、そんなお冷を思い出す。


初めて行く喫茶だった。存在自体は、大学のころから知っていた。でもあのころは、まだコーヒーが飲めなかったから、憧れだけがあった。(なんなら、一年前の今日も飲めなかった。)何年ごしに飲んだコーヒーは、酸味が強かった。檸檬の匂い付きお冷をチェイサーに飲むと、形容しがたい気分になった。良いとも悪いとも言えない、「形容しがたい」としか言いようのない。


ぼくは、ジャネット・ウィンターソンの『灯台守の話』を読んでいた。

この本は、以前訪れた古本屋で買ったもの。ではなく、教えてもらったもの。そこの主人と話をしていたとき、彼女がお客さんから借りた本の話になった。「灯台守の一日のスケジュールが、とても魅力的で……」と彼女は語った。ぼくも同感だった。そして、とてもおもしろそうだったので、後日、ぼくはすぐさま書店で注文したのだった。


昨日読んだ章のタイトルは、「暗闇のなかの確かな点」。それはおそらく、灯台だろうけど。ぼくは、「暗く青い点」を連想した。


「暗く青い点」もしくは、「Pale blue dot」。いや、米津玄師ではなく。1990年にボイジャー1号が撮影した地球の写真のことだ。『星の王子さまの天文ノート』に載っていた。ちなみに、この本との出会いは、地元のプラネタリウムだ。ぼくは、好みの本を吸い寄せる性質なんだろうか。

(ぼくは持っていないけど、改訂版が出てるよ。)


だいぶ話は逸れたけど、とにかく「暗闇のなかの確かな点」を丁度読み終えたくらいだった。正面に座っているパートナーが、読んでいたスヌーピーのマンガをこちらに向け、「見て見て」と言ってきた。見てみると、それはこんなオチだった。

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アンドリュー・ワイエスは、ぼくの敬愛するアーティストの一人だ。パートナーはそれを覚えていて、この頁を見せてくれた。スヌーピー、君も彼の作品が好きなのかい。というか、持っているのかい。ぼくは嬉しくて、パートナーにお礼を言った。

ここまでで、約1時間。長かったような、短かったような。よくわからないのは、本がやたら出てきたからだろうか。「ぼくの記憶は、本に紐付いている」案外、過言じゃないかもね。そう思った。

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