見出し画像

「おめめさっぱり」の朝のため、(今朝は、オレンジジュース)

3/24。

6:00起床。

天気は曇り。


――おはよう。

――……。

――どうしたの、アルネ。

――今朝は、早起きさんなのね。

――毎朝早起きだよ?

――そうだけど……。

はて、とアルネは首をかしげた。


ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。

――なんていうか……眠くなさそうなのよ。

――そんなに、普段眠そうな顔してるかな。

――してる。

――……今朝は何がいい? お嬢さん。

――オレンジジュース。おめめさっぱり。

――フレッシュじゃないけど、いい?

――うん。

ぼくは、冷蔵庫からオレンジジュースのパックを取り出した。もちろん、100%だ。


とはいえ、搾りたてのものと、パックのものじゃ、全然違うからな。


今度、オレンジを買って来てあげよう。

――はい、どうぞ。

――……すっぱい。

――100%だからね。……フレッシュジュースも飲んでみたい? アルネ。

――飲ませてくれるの?

――ぼくも飲んでみたいしね。それに、搾りたての方がもっと「おめめさっぱり」しそうだし。

そこでアルネは、ぼくの顔をじっと見つめた。


そんなに、ぼくが「おめめさっぱり」していることが、めずらしいかな。

――よく眠れた?

アルネは訊いた。

――よく眠れたよ。

――良い夢は見た?

――覚えていないな……。でも、悪くなかったんじゃないかな。

――ふうん。

――もしかして、心配していたの?

――……。

――ごめんね。でも、今朝は大丈夫だよ。というより、ここ数日は。

アルネは、顔色をうかがうように、ぼくの顔をのぞき込んだ。


アルネの頬は、いつもバラ色に滲んでいる。

――アルネは、毎朝健康的だね。

――何それ。

――元気そうで何より、ってことだよ。

何かを考えているのか、それとも照れているのか、アルネは俯いてしまった。


……あ。カップが空になっている。

――おかわり、いる?

――あと2杯。

――飲むねえ。……とりあえず、1杯ね。ぼくも飲もうかな。

――ねえ、

――何?

――次は、必ず搾りたて飲ませてね。

それは、もしかしたら照れ隠しだったのかもしれない。


でも、飲んでほしいと思ったのは本当だから、約束した。

――搾り器? だっけ? 買わなきゃね。

――レモネードも、飲めるようになる?

――それは、搾り器なくてもできるんじゃないかな。

ぼくらは、おかわりしたオレンジジュースを手に、「おめめさっぱり」な朝に乾杯した。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


この記事が参加している募集

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。