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2022年3月の記事一覧
滑る指先、滑ることば(湖とファルセット/田村穂隆)
水草が川面を覆う 忘れなさいあの日あふれた言葉のことは(p108)
たまりの水は腐る。流れる水は腐らない。と、いつかどこかで読んだ。たしかに、海なり湖なり腐るのは見たことがない。(赤潮とか、あれは腐っているわけじゃないか。)
海も湖も、あと池も、とどまっているようで、どこへでも行く。理由は他にもあるだろうけど、理由らしい理由はそれだろうか。ぼくが、水場を好きな理由。蛇口から水が流れる様を見るの
知らない、知らない(なにごともなく、晴天。/吉田篤弘)
まずいコーヒーのことなら、いくらでも話していられる。
――本文より引用
で、始まる小説を、まさしくまずいコーヒーをすすりながら再読していた。「まずいコーヒー」は、どこかの誰かを悪く言っているわけじゃなく、いや、どこかの誰かではあるのか。他ならぬ自分自身。
焙煎に失敗した豆を、試飲していた。まずいというか、クセがひどいというか。とにかく、飲み進めることができない。そういえば、同氏の小説には、「