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目目、耳耳

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2019年3月の記事一覧

知らない(ガラスの街/ポール・オースター)

僕はピーター・スティルマン。
それは僕の本当の名前ではありません。
本当にありがとうございます。
――ポール・オースター(2013)『ガラスの街』柴田元幸訳,新潮社.46頁

僕は相地。
それは僕の本当の名前ではありません。
これは、残念ながらうそではありません。

なまえ【名前】
人については、
狭義ではその家族に属する一人ひとりを区別して表す呼び方。
広義では名字をも含んだり、単に名字を指した

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つっつく(hibari/坂本龍一)

最近まで忘れていたけど、
少し前まで、音楽をかけたまま寝ていた。

今は、静かな方がよく眠れるけど、
そのころは、何かを聞いていないと、なかなか眠れなかった。

選曲は、すごく偏っていた。
人の声が入っていると、耳がそれに吸いよせられるから、
いつもインストゥルメンタルだった。

そして、たいてい同じものばかり聞いていた。
CDに収録されている全曲を再生するのか、
ただ1曲だけを再生するのかは、そ

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そして、いなくなる(僕には世界がふたつある/ニール・シャスタマン)

ずっと、夢の内側にいるような気がする。
夢といっても、「将来の」が頭に付くアレじゃなくて、夜に見る方のソレ。

今に始まったことじゃないけど、夢で起こったことと現実に起こったこと、
どっちがどっちだったのか、わからないことがある。
もともと、もの覚えがいい方ではないけど、
夢がよほどのファンタジーじゃなかった限りは、そうなってしまう。

たぶん主な原因は、睡眠が断続的であること。
要は、夜から朝ま

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光る、引かれる(Light Dance/小瀬村晶)

僕はたいてい、なにかしらをPCに打ちこむとき、なにかしらを聞いている。
小説とかエッセイ、打ちこむのが文であれば、なんでも。

最近は、ピアノが主役を務めているものを聞くことが多い。
僕の場合は、小瀬村晶氏とharuka nakamura氏。

小瀬村晶氏の「Light Dance」は、よく再生しているものの一つだ。
「Light Dance」は、氏のアルバム「Tiny Musical」「How

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うわつく(ライフタイムサウンドトラック/古川本舗)

「楽しい」ということばが、僕にはいささかむつかしい。
「楽しい」は、
仲間内で大いに盛り上がることだけを指しているように思うからだ。

もちろん「楽しい」はとてもおおらかなことばなので、
だれもいない書庫でこっそり名著を読みふけることも、
乾燥機から出したばかりのあたたかいリネンにくるまることも、
「楽しい」はすべて受け入れてくれる。
ふところが深いことばだ。

けれど、ひとりこっそり「楽しむ」こ

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