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ユーモアと優しさ 消え失せた密画
「ふたりのロッテ」を読んでいた時、その映像的な文章に驚いたのだけど、あとがきを読むと実際映画の脚本として書かれていたことがわかりいたく納得してしまった。そして今回読んだ「消え失せた密画」も、映像化の相性が良さそうな作品である。もちろん派手なCGや映像のインパクトを競うような昨今の映画界では地味な作品になってしまいそうだけど、もし過去の巨匠が撮っていてくれたら……そんなことを夢想したくなる。私個人と
もっとみる日常への賛歌 エーミールと探偵たち
たまに岩波少年文庫を読みたくなることがある。本当は子どもの頃に読んでおけば良かったのだけど、残念ながらほとんど触れることのない子ども時代を送ってしまった。子ども時代に読んでいたらもっと豊かな幼年時代、そしてその後を送れていたのではないかという期待と、多くを読み落としていたかもしれないという疑念がある。いずれにしろ過去に読むことがなかったのが事実であり、その時点で私には手に取るだけの感性がなかったと
もっとみるイヤミスの古典 「ABC殺人事件」
「まったく、ポアロ」わたしは言った。「その言葉を聞いたら誰だって、あなたがリッツ・ホテルでディナーを注文しているところだと思うでしょうね」
「ところが犯罪は注文することができない?たしかに」
ー「ABC殺人事件(早川書房 堀内静子訳)」
名高い「ABC殺人事件」。中学生の頃に読んで衝撃を受けつつも、どこかスッキリしない後味の記憶があった。今回久々に読んでみて、その後味の正体がわかった。
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